いよいよ受験シーズンですが、「傾向と対策」の理解が求められているのは受験生だけではなく、長期的に資産形成を目指す個人投資家も同じです。今回は、そのことについて以下の3つの記事から考えてみました。

トランプ新大統領の“キャラ”に慣れていくことが大切

2017年1月11日(日本時間12日未明)、米国のトランプ次期大統領は当選後初の記者会見を行いました。主要なメッセージは「最も多くの雇用を作り出す大統領になる」でしたが、具体的な経済政策が表明されなかったことや、改めて保護主義の姿勢を強調したことなどから円高が進み、12日の日経平均株価は大幅反落になりました。

ただし、以下の記事で指摘されているように、「トランプ氏当選から世界景気の回復色が強まり、世界株高が始まっていること」、つまりトランプ相場の実態は、実は「世界景気の回復を買う相場」であることは忘れるべきではありません。

記者会見でのトランプ氏とメディアとの激しい口論を見て、これで大丈夫なのか?と感じた日本人も多いかもしれません。しかし、メディアが常に正しく中立であるとは限らず、そこには私たちが知り得ない確執が存在する可能性もないとは言えません。そのため、この場面だけでトランプ氏を判断するのは危険なのかもしれません。

いずれにせよ、新大統領はオバマ大統領と比べて非常に感情的な起伏が激しい人のようですが、米国大統領が世界経済の全てを決める存在というわけではありません。あまり一喜一憂せす、早くこうした尖った“キャラ=傾向”に慣れ、底流にある「景気の動向」の変化を見逃さないという“対策”が重要ではないかと考えます。

出所:トランプ会見は期待外れ 期待が失望に変わるリスクも(楽天証券)

製造業の雇用回復を目論む米新政権

さて、その景気ですが、最近発表されたアメリカの雇用統計を見る限り順調な回復が続いているようです。2017年1月6日に米労働省が発表した2016年12月雇用統計は、非農業部門雇用者数は15.6万人増と、市場予想(17.5万人増)をやや下回ったものの、平均時給が大幅に改善しており内容としてはまずまずでした。

ただし、この雇用統計を製造業だけに限って長期のトレンドで見ると、まだ課題が残っていることがわかります。

この記事に述べられているように、「2001年12月に中国の世界貿易機関(WTO)加盟が発効したこと」や「2008年前後の金融危機」などで製造業雇用者数は2000年頃から急減しており、サービス業など非製造業を含んだ非農業部門雇用者数とは対照的な傾向が見られます。

これだけ長期にわたり製造業の雇用が減少を続けてきたトレンドを改めて見直すと、そこで働いていた米国労働者の不満が蓄積していたことや、雇用を中国から取り戻す、と訴えたトランプ氏のメッセージが彼等に“刺さった”ことに納得がいきます。

このため、製造業を取り戻す、というトランプ新大統領の主張は、選挙キャンペーン用の一時的なスローガンではなく、容易には覆されない政策であり、こうした傾向が今後も続く可能性が高いことを押さえておく必要がありそうです。

出所:米国製造業雇用者数減少のルーツ(ピクテ投信投資顧問)

2017年も「不確実性」が高まる傾向に

「リスク」とは数学的、確率的に可能性を推測できる事象であり、「不確実性」は、可能性を推測できない突発的な事象を言いますが、最近は特にこの「不確実性」という言葉をよく耳にします。

この記事では、「米国や世界の経済政策を巡る不確実性の度合いを示す指標」として、「米スタンフォード大学などの教授が開発した『経済政策不確実性指数(Economic Policy Uncertainty Index)』」が紹介されています。

世界のこの指数は、2015年はチャイナショック、2016年は英国EU離脱や米大統領選挙により大きく上昇しましたが、2017年も米国の新政権誕生、欧州での選挙、アジア極東での地政学的バランスの変化などにより、大きく上昇する可能性があります。

上述のように、統計的に対処できないのが「不確実性」です。このため、2017年は「不確実性」が高まるという傾向を理解して、今後の相場に臨みたいと思います。

出所:新年相場が向き合う世界の政策不確実性(楽天証券)

 

LIMO編集部