アップルが好決算を発表

2017年1月31日、米アップルは2017年9月期第1四半期(10-12月期)決算を発表しました。決算発表を受けて取引時間外のアップル株は一時約3%上昇しており、株式市場が同社の決算を好感したことが伺えます。

では、決算がどのような内容であったかを見てみましょう。

アップルのプレスリリースのタイトルは、「Apple Reports Record First Quarter Results」(アップルは記録的な第1四半期業績を発表)とされ、その下には「iPhone, Services, Mac and Apple Watch Set All-Time Records」とあります。訳すまでもないですが、iPhoneやサービスなどの売上が史上最高だったということです。

特に注目されるのが、アップルの売上高の約3分の2を占めるiPhone出荷台数が前年同期比+5%増となり、中でも単価が高い大画面モデルが伸びていたことです。また、サービスの売上高が同+18%増となっていたことも、iPhoneの成熟化を中長期的に補う動きとして好感できると思います。

やや気になるのは、アップルが現在最も力を入れているグレーターチャイナ圏(中国本土、香港、台湾)の売上高が同▲12%となっていることです。ただし、会社側は為替の影響が大きく、中国本土に関しては横ばいとなっていると発言していることや、マイナス幅は2016年4-6月期をボトムに縮小傾向にあるため、過度な懸念は不要ではないか考えられます。

なお、アップルが示した翌四半期(1-3月期)の売上高予想は515億~535億ドル(前年同期比+2%~+6%増)でした。この予想は市場コンセンサスを下回りますが、アップルは比較的保守的な予想を提示することが常態化しているため、この点はあまりネガティブ視されない可能性が高いと考えられます。

決算発表翌日に売られた村田製作所

一方、同じく1月31日に決算を発表した村田製作所(6981)の2月1日の株価は安く始まり、前場では一時は前日比865円安(▲6%)まで売り込まれました。

村田製作所は、セラミックコンデンサーや圧電部品などを主力とする京都の電子部品メーカーですが、アップル向けのサプライヤーとして有名です。アップルが買われたにもかかわらず、なぜ村田製作所は売られたのでしょうか。

同社の決算説明会資料によると、主力の通信用の売上高は前四半期比で微減となっていました。また、この理由について、ハイエンドスマホ向けでの同社製品搭載モデルの生産減少や、得意先の採用数の減少などの影響を受けている、というコメントがありました。

”大人の事情”により、決算説明会資料にはアップルという具体名は記載されていませんが、ここでの「ハイエンドスマホ」はアップルのことです。つまり、アップル向けであまり好調ではなかったということが述べられているのです。

よって、このことがアップルが好決算を発表した翌日に村田製作所が売られたことの一因であると推測されます。

今後の注目点

とはいえ、アップルに限らず、スマホ市場は急成長局面を既に過ぎています。アップルが、アップルウォッチなどiPhone以外の新たなハードウエアの開発やサービスの拡大に注力しているのもこのためです。また、今回アップルの決算が評価された理由が、iPhoneの好調だけではなく、サービスの高い増収率にもあったことは忘れるべきではありません。

そう考えると、村田製作所についての今後の注目点は、アップル向けでの挽回だけではなく、通信用以外への用途の拡大がより重要になるのではないかと考えられます。

アップルも村田製作所も脱スマホ戦略が中期的には一段と重要になる、そのようなことを考えせさられた決算でした。

 

和泉 美治