黒田・日銀「当面は現状維持」に見る3つの懸念点

トランプ大統領の“円安誘導”攻撃にどう対処する?

この記事の読みどころ

日銀は金融政策決定会合で政策金利などを据え置き、長期国債買い入れ目標の変更は杞憂(きゆう)に終わりました。会見では現状政策の据え置きが当面続くというトーンでしたが、欧米と日本の金融政策の違いに注意は必要です。

日銀金融政策決定会合:市場予想通り現状維持、長期国債買入れ額も据え置き

日本銀行は金融政策決定会合(2017年1月30~31日)を開催し、2016年9月に導入した長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みによる金融調節方針について市場予想通り現状維持を決定しました。

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経済・物価見通しは、海外経済の改善や為替の円安などを背景に実質成長率を上方修正する一方、物価見通しについてはほぼ据え置きました。

どこに注目すべきか:長期国債購入、オペレーション、金利差

日銀は金融政策決定会合で政策金利などを据え置き、市場のごく一部で懸念された長期国債買い入れ目標の変更は杞憂(きゆう)に終わりました。黒田総裁のスピーチなどから現状政策が当面据え置かれることが想定されますが、欧米と日本の金融政策の違いに注意は必要です。

まず、据え置かれたた主な政策を確認すると、金融調節方針は、誘導目標である長期金利(10年物国債金利)を「0%程度」とし、短期金利(日銀当座預金の一部に適用する政策金利)を「マイナス0.1%」と据え置きました。

長期国債買い入れについては、保有残高の年間増加額の目処である「約80兆円」が維持されました。ごく一部の市場関係者は長期国債購入ペースの表現を和らげると予想する人もいましたが、変更はありませんでした。

そもそも日銀の長期国債購入ペースに市場が懸念を示した背景は、日銀の最近の金融調整で長期国債買い入れペースが若干減額した時期があったことが一因です。しかし、金融政策決定会合に先立つ1月27日のオペレーションで、市場の懸念を打ち消すかのように5年から10年セクターの国債購入額を増額していた時点で、市場へは回答済みだったのかもしれません。

では次に、日銀の今後の金融政策を占います。結論だけ述べれば、黒田総裁の会見のトーンからは、当面現状維持が想定される内容でした。現在の金利を低く抑える政策の結果、為替は一時に比べれば円安となっており、上昇が鈍いインフレ率の下支えも期待されるからです。

何やら結果として上手くいっている現在の金融政策に手を付けたくないトーンで、その意味では短期的には金融政策の現状維持も想定されます。

ただし中長期的には今の政策を維持できるか懸念もあります。

1つ目は、現在の政策の主旨が不透明なことです。

日銀の金融政策の重点は短期金利と長期金利の動きを管理する「イールドカーブ・コントロール」となっています。国債購入は主要政策から格下げされたはずなのに、国債購入を主要な政策手段としていた時と同じ80兆円を声明に残すのは違和感も残ります。数字をはずしたときの市場のショックを懸念してのことと思われますが、中途半端な印象です。

2つ目は、欧米と日本の金利動向の違いが拡大していることです。

たとえば、金融機関収益の目安となる長短金利差(例:10年国債利回りから2年国債利回りを差し引いた値)を見ると、欧米は1%を越えるのに比べ、日本は低水準です。金融機関の収益性が低下すれば、景気への冷や水とならないか注意は必要です。

3つ目は米国が日本の金融政策を為替政策、円安誘導とみなす懸念です。

日銀の金融政策は住宅市場の貸出増加に貢献しているなど、そもそもは国内需要の喚起のための政策です。しかし、為替市場では金利差を背景に結果として円安をサポートしているように見られる可能性もあります。実際、トランプ大統領は、円安・ドル高にも注文を付け始めました。

今後は米国との(直接的に話すわけでないにせよ)対話も重要となりそうです。いつまでも同じ状態が続くとは考えない方が無難と思われます。

ピクテ投信投資顧問株式会社 梅澤 利文

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梅澤 利文
  • 梅澤 利文
  • ピクテ投信投資顧問株式会社
  • シニア・ファンド・アナリスト

東京理科大学工学部卒業後、国内証券会社のシステム運用部門を経て、外資系運用会社(BNPパリバ投信投資顧問(当時)等)で債券、仕組債、オルタナティブ運用を担当。
2010年ピクテ投信投資顧問入社。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。