投資家にとって投資信託は他のリスクを取る運用商品、すなわち株、債券、為替、外貨預金、FX証拠金、ファンドラップ等と比較してどういった効用を求めることができるのでしょうか。前編の1~4に続き整理します。

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投資信託の効用・7つのポイント

前編では、投資信託の効用として、(1)銘柄分散、(2)資産分散、(3)時間分散、(4)マーケットアクセスと見てきました。後編では5~7をお伝えします。

この記事の読者層は運用商品にご関心があるという前提でモデルケースを金融資産1,000万円、元本を保証されないリスク商品に3-4割投資可能とします。現実的に考えても1,000万円の預金保有者が、個人での運用を主業としない限り、全額を株や投信に振り向けることは考え難いでしょう。

投信の効用 5. プロの選球眼

個人投資家の方は、まず投資対象資産や市場に対して十分な知識がない場合が多いと思います。株式であれば個別銘柄、特に小型株式や新興国の株式となると銘柄名も知らないし、ビジネスモデルもわかりづらいことがあります。

一方、投資信託の運用会社は世界的なネットワークを持ち、対象国にスタッフを置いたり、いろいろな情報源から銘柄を発掘します。投資家にその時間があれば銘柄選別をすることも可能かもしれませんが、情報の厚みやスピード、分析力等は日中専念しているプロに任せた方が安心ですよね。

株や債券には相場観や一家言を持つという方でも、いつ資産の乗り換えをすればよいかについてはプロの判断を利用したいというケースもあるでしょう。おそらく投資家が投信に求める効用のうち、同じ費用を払うなら一番求めるのはこの部分ではないでしょうか?

投信の効用 6. キャッシュフロー組み換え効果

投信に運用成果を求めるのは当然ですが、実は定額分配等でキャッシュフローを求める方が多いからこそ日本では毎月分配型が隆盛となったと思われます。サラリーマンの方は、リタイアしても月給生活に慣れているので定額のキャッシュが入るのを好まれると思います。

個別債券を買ったりしてもある程度その目的は達成できますし、定期預金の満期を月毎に設定する等も同様ですが、債券等は年2回や1回の利払いですと何本もの銘柄を利払い月をずらして保有するなど煩雑です。

投信は為替の影響や利払い月の影響等もありますが、投信という器を通じて毎月定額の分配を支払うことで元の投資対象証券より利便性を高める設計ができます。

分配を出すとその分基準価額は落ちますが、投信の分配金を「孫への小遣い」原資にしたり、分配金の分、目減りしても元本は「遺産」と割り切る投資家の方は、運用商品としてよりも、このキャッシュフロー組み換え効果を効用と見ていることになります。

投信の効用 7. 税効果

例えば人民元ファンドのように、人民元の為替上昇を主眼とした公募投信があります。為替益は外貨預金等の形で上がると雑所得となり、所得の高い人は累進課税で最高50%の税率で課税されます。しかし、公募投信に投資して基準価額の上昇がほとんど為替差益だとしても、投信の場合は20.315%の課税ですみます。

人民元預金だと個人投資家は結構な為替マージンが預入時、解約時の往復でかかりますが、投信はほぼインターバンク市場レートと圧倒的に薄いマージンで為替が執行されますのでその分も同じ為替リスクを取るなら効率的と言えます。

まとめ

読者の方が資金を十分にお持ちで、個人で分散が可能であったり、さらに市場・銘柄分析、売買タイミングに自信のある方であれば、各種コストを販売会社や運用会社に払わずに個別銘柄に投資なさることで廉価に投資効率が上がります。

しかし、店頭でセールスマンに勧められて買うだけでなく、自分に不足しているものが何かをよく吟味してみられることをお勧めします。

すなわち、前後編を通じてお伝えした7点の効用のうち、自分が何を価値として何を価値としないか、それを知ることにより、無駄な効用にはお金を払わず、自分に合った効用を投信の形で手に入れればよいと思います。

例えば資金が十分にあり、先進国株の知識は十分にある方なら個別銘柄を買って分散し、新興国のみ投信で買うといったケースもあるでしょう。また、おそらく効用6や効用7などは、運用成果や市場と関係ない効用なのであまり声高に言われない点ですが、投資家目線で見ると重要な効用だと思います。

 

林 俊宏