「日本のトイレ」が支えるLIXIL好決算-知っておきたい3つのこと

アメリカ、欧州・中東、中国で水回り事業が好調な理由を探る

好決算の背景は海外トイレ事業

トイレなど水回り製品等の大手、LIXILグループ(5938)が2月6日の取引時間中に2017年3月期第3四半期累計決算を発表し、発表当日の同社の株価は一時6%高まで買われました。

業績好調の主因は、「シャワートイレ」などのトイレ事業が海外で好調なためです。同社は、TOTO(5332)と並んで国内市場で高いシェアを持つトイレメーカーですが、足元では買収した海外子会社とのシナジー効果の顕在化により、トイレ事業がグループの業績に大きく寄与するようになっているのです。

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なお、余談ですが「シャワートイレ」と「ウォシュレット」は、いずれも温水洗浄便座のことで、「シャワートイレ」はINAX(現在はLIXILグループ)の、「ウォシュレット」はTOTOの商品名として商標登録されています。

なぜ海外で好調なのか

では、なぜ海外で同社のトイレ事業が好調なのでしょうか。それには以下の3つの理由があります。

第1は、アメリカ向けに製造を行うメキシコ工場での製造歩留りの改善です。

同社は、2013年にアメリカの老舗トイレメーカーであるアメリカンスタンダード社(以下、ASB)を買収していますが、買収される以前のASBは長くプライベートエクイティファンドの傘下にあり、生産性改善のための設備投資が十分に行われていませんでした。

そのASBに対して、同社は買収後に日本から技術者を派遣し、製造工程の改善を行ってきました。ここにきてその効果が顕在化してきているのです。

トイレといえども、そこには工業製品を量産するための高い技術や知見が求められる、奥深い製品です。便器には、汚れが付きにくい、傷がつきにくいなどの性能が求められますし、その良し悪しは便器の形状や成形、乾燥、焼成といった陶器の加工方法によって決まります。また、採算性を高めるためには良品率を高めるためのノウハウも求められます。

そのため、INAX時代から蓄積された日本の高い技術力を海外へ移植することができたことが現在の好決算の一因であると見ることができます。

第2は、2014年に買収したグローエとの協業の進展です。グローエは、欧州を中心に世界130か国以上に事業を展開する水回り製品の高級ブランドメーカーですが、買収以前にはトイレを扱っていませんでした。

そのグローエと協業を深め、彼等が持つマーケティング力やデザイン力を活用することで、これまで日本企業が販売できなかったイスラム圏にトイレの販路を築くことができたことなども好業績につながっています。

第3は、中国でのシャワートイレの好調です。日本への観光客急増の影響もあり、中国でもシャワートイレに対する関心が高まっています。それに加え、品質が劣る中国製からの買い替え需要がここにきて急速に高まっていることが業績好調に寄与しています。

まとめ

いかがでしたか。トイレにも世界を見渡すと大きなビジネスチャンスがあることがご理解いただけたのではないでしょうか。

ちなみに、日本で最初に「温水洗浄便座」が販売されたのは1964年です。最初は輸入販売からでしたが、1967年に伊奈製陶(現在のLIXILグループ)が、続いて1969年に東洋陶器(現在のTOTO)が国産を開始しています。それから約半世紀を経て、日本での温水洗浄便座の普及率は約8割に達しています。

一方、海外での温水洗浄便座の普及はまだこれからです。製品の認知度の低さや、現地規制への対応の難しさなどが普及を遅らせてきましたが、今回のLIXILグループの決算を見ると、そうした障壁を乗り越え、これから普及が本格化する兆しが感じられます。

今後も同社のトイレ事業の成長ポテンシャルには大いに注目していきたいと思います。

 

和泉 美治

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和泉 美治

同志社大学文学部卒業後、エルコインターナショナル (現:京セラエルコ) に入社。英国バーミンガム大学にてMBA取得。
その後UBSフィリップスアンドドリュー証券 (現:UBS証券) に入社し、調査部にてエレクトロニクスセクターを担当。2002年より2013年までJ.P.モルガンにて産業用エレクトロニクス及び民生エレクトロニクスセクターを担当。
日本証券アナリスト協会検定会員。