紙おむつに使われる高吸水性樹脂企業の株価格差-主役は変わるか

中期的には日本触媒が有利?

この記事の読みどころ

  • 紙オムツの主要資材である高吸水性樹脂(SAP)主要メーカー3社の2017年3月期Q3累計(4-12月期)決算が出そろいました。その中で、住友精化の内容が群を抜いています。足元の株価もファンダメンタルを反映しています。
  • 日本触媒は原料のアクリル酸からの一貫メーカーで、住友精化、三洋化成は原料のアクリル酸を外部購入しています。住友精化、三洋化成の足元の好業績は安い原料価格による恩恵が主因と考えられます。一貫メーカーは原油市況低迷時には不利であることは明白です。
  • このところ原油市況が回復し、石油化学製品の市況高の傾向が強まりつつあります。こうした状況下では、原料からの一貫メーカーの方が優位になる傾向が強まるでしょう。2017年後半は一貫メーカーと外部購入ポジションメーカーの立場が逆転する可能性が高いと考えます。
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主要3社の2017年3月期Q3累計決算が出そろう

中国観光客による“爆買い”で株価が急騰した紙オムツや高吸水性樹脂メーカーの株価は、その後の爆買い鎮静化で株価もおとなしくなったことは周知の通りです。紙オムツメーカーが、思わぬ需要増加に対応して能力を拡大したとたんに需要が冷え込むという、タイミングの悪さによる業績へのマイナス影響が顕在化したのが2016年の動きでした。

尿を吸収する高吸水性樹脂のメーカーである日本触媒(4114)、住友精化(4008)、三洋化成(4471)3社の2017年3月期Q3累計(4-12月期)決算が出そろいましたので、各社の高吸水性樹脂事業の収益を比較し、その後の株価の動向を見てみましょう。

3社のQ3累計(4-12月期)営業利益の前年同期比伸び率を見ると、日本触媒▲38.7%、住友精化+30.9%、三洋化成+19.3%とバラツキが目立ちます。もちろん、3社の売上高の中身は高吸水性樹脂だけではなく様々な事業が含まれますが、3社に共通するのは高吸水衛樹脂が占める割合が相対的に大きいということです。

不振だったのは日本触媒です。高吸水性樹脂を含むセグメントである機能性化学品の営業利益は、前年同期比で▲46.9%の減益となりました。この大幅な減益の要因は、高吸水性樹脂の不振だと思われます。

一方、高吸水性樹脂の事業を明確にセグメントとして公表している住友精化の実績は、+59.2%の営業増益となりました。なんと同製品の営業利益率は12.4%(前年同期9.1%)と利益率も改善しました。

三洋化成も悪くはありませんでした。同製品を含む生活・健康産業関連セグメントの営業利益は前年同期比▲5.0%の減益に留まっています。

以上から事業の好不調をランク付けすると、良い方から住友精化、三洋化成、日本触媒の順になるわけですが、決算書から分析すると住友精化のQ4(1-3月期)の予想は保守的な感触が強く、業績全体でも上振れの余地がありそうな感じです。

決算発表後の株価にもファンダメンタルが反映

この実績数字は株価にも明確に現れています。筆者がこの原稿を書いている前日(2月7日)の各社終値を昨年来の高値と比較してみると、日本触媒が▲11.7%、住友精化が▲4.1%、三洋化成が▲4.2%と、先ほどのQ3累計実績のランクに応じた動きをしていることが分かります。

世界的な供給過剰構造の中で、なぜ収益格差が出るのか

この製品で世界トップの座にある日本触媒の資料によると、2015年の世界の高吸水性樹脂需要は230万トンでした。需要は新興国の出生率向上、先進国における大人用オムツの市場拡大によって年率+5~7%の成長(物量)が続くと見ています。

これに対して、世界の供給能力は需要規模をおおよそ100万トン前後上回っていると推定されます(筆者推定値)。この需給ギャップが高吸水性樹脂の販売価格を大きく押し下げたのが2015年以降の特徴と見られます。

では、なぜ3社の収益動向に差がついたのでしょう。高吸水性樹脂はアクリル酸と苛性ソーダから製造されます。アクリル酸は石油→ナフサ→プロピレン→アクリル酸のプロセスを通じて製造されますので、基本的に原油市況にその価格が左右されます。

では原油市況はというと、2015年後半から2016年前半まで大きく低下しています。3社のうち住友精化と三洋化成の両社はアクリル酸を外部から購入するポジション、日本触媒はプロピレンを購入してアクリル酸を製造するポジションにあります。

つまり、住友精化と三洋化成は安いアクリル酸を外部から購入することで高吸水性樹脂の単価値下がりをカバーしてきたのです。日本触媒はというと、アクリル酸は安く生産投入できますが、アクリル酸の価格自体、供給過剰も手伝い大きく低迷したことが影響していると思われます。

今後の業績と株価はどう動く?

トランプ大統領の登場によって、中東情勢の不透明感が増しています。OPECの結束も強まりそうで、2017年は原油市況がじり高を強める見通しです。こうなると、アクリル酸からの一貫生産プロセスを持つ日本触媒に有利な状況になるかもしれません。一貫生産の方がコスト吸収の余地が大きいからです。

一方、従来から高吸水性樹脂の原料を外部から購入してきた住友精化と三洋化成は、高いアクリル酸を使うことを余儀なくされるかもしれません。高吸水性樹脂の需給ギャップは少なくとも2018年までは解消されるとは思われません。販売価格は引き続き弱い動きに終始するでしょう。

足元は住友精化の独走が続きそうですが、今夏以降の収益動向は、これまで割を喰ってきた日本触媒に有利な展開になるかもしれません。同社の株価は現状パッとしませんが、中期スタンスでは意外な展開になるような気がします。

 

石原 耕一

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石原 耕一

早稲田大学法学部卒。ペンシルバニア大学ウォートン校AMP修了。
大学卒業後、和光証券(現 みずほ証券)に入社。その後、リーマンブラザーズ証券、UBS証券、みずほ証券等でアナリストとして40年以上株式市場で調査活動に従事。特に化学セクターでは20年以上の調査経験を持つ。