通期上方修正でもトヨタ株大幅安、市場が心配したリスクとは?

円安転換でも収益改善が見られなかったQ3に問題発生

Bhakpong / Shutterstock, Inc.

決算発表翌日、トヨタ株が大幅下落

トヨタ自動車(7203)が第3四半期累計(4-12月期)決算を発表した2月6日の翌日、トヨタ株は大幅安となりました。

朝9時の取引開始直後から下落幅が拡大し、一時は前日比▲181円安(▲2.8%下落)の6,312円まで売られる場面がありました。その後は若干戻したものの、終値も▲147円安(▲2.3%)の6,346円で引けています。

市場全体と比べても極端に大きな下落、下落率は今年最大に

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この日の東京市場は、朝方から111円/ドル半ばの円高水準になったこと等から安く推移し、日経平均株価の終値も前日比▲0.4%安、TOPXも▲0.3%安で引けました。確かに市場全体も弱い動きとなりましたが、その市場全体の動きと比べても、トヨタ株の下落の大きさが分かります。

なお、トヨタ株の1日における下落率▲2.3%は、2017年に入ってから最大であり、昨年11月9日に一瞬起こったトランプショックによる▲6.5%以来の下落率となりました。ちなみに、この日は東京市場全体も急落しており、日経平均株価は▲5.4%安、TOPIXは▲4.7%安でした。

株価下落を引き起こしたトヨタの決算発表内容

2月7日に起きたトヨタ株の大幅下落の要因が、前日に発表されたQ3累計決算にあることは明白と考えられます。そこで、発表された決算内容を、本業の儲けを示す営業利益を中心に振り返ってみましょう。

今回のトヨタの決算に関して、事前に大きな注目点が2つあったと考えられます。1つは、11月以降の円安転換でどの程度の収益改善が見られるかです。もう1つは、2017年3月通期の業績予想をどの程度上方修正するのかということでした。

Q3(10-12月期)の営業利益は対前年同期比▲39%減

終わったQ3(10-12月期)、つまり、直近3か月間の営業利益は対前年同期比▲39%減でした。今回、トヨタは2017年3月通期の会社予想を上方修正しています。営業利益は従来予想の1兆7,000億円から、今回は1兆8,500億円へ+1,500億円上積みとなりました。

上方修正は、Q4(1-3月期)の為替レートの前提をそれまでの100円/ドルから110円/ドルへ円安に修正したことが主要因です。

円安転換にもかかわらず収益改善がほとんど見られなかった

まず、終わったQ3(10-12月期)も引き続き大幅減益となっており、収益改善がほとんど見られていないことが失望を呼んだと言えましょう。

今回の決算発表では、11月の米国大統領選後から始まったトランプラリーにおける円安進行を背景に、輸出関連企業はQ3で収益改善が見られるという期待があったと推測されます。もちろん、トヨタもその筆頭格に挙がっていたでしょう。

ところが、Q1実績▲16%減、Q2実績▲42%減と推移してきた営業利益は、Q3も▲39%減だったのです。多くの人が“あれっ?”と思ったに違いありません。

中古車価格の下落で米国の販売金融事業が大幅悪化

トヨタのQ3実績が芳しくなかった主要因は、米国における販売金融事業の収益悪化です。

最大の主戦場である米国市場では、日本では普及が進まないリース販売が主流です。しかし、トヨタが強みを持つセダン系の乗用車市場において中古車価格が大幅に下落したため、それに対応すべく引当金を計上する必要が出てきました。

中古車価格が下落すると、リース期間が終了して戻ってきたクルマの価値も下落するので売却損や評価損が発生します。それに対処する形で、今後発生する可能性が高い損失への引当金を計上するのです。

今回、トヨタは▲1,000億円近い引当金を新たに積み増したようであり、それが大きな収益圧迫要因となったと考えられます。

トヨタが計上した引当金は十分なのか?

ここで大きな問題となるのが、今回の決算で計上した引当金で十分なのか?ということです。

トヨタの説明だと、このQ4(1-3月期)にも引当金を計上することを織り込んでいるようでした。しかしながら、この先に、さらにリース車両の価格下落に伴う引当金を計上するリスクが完全に払拭された印象はありませんでした。

多くの投資家が、今後また多額の費用が計上される懸念を、敏感に感じたかもしれません。

確かに、通期予想は上方修正されました。しかし、こうした費用増加のため、上方修正の金額が小さかったという印象は否めません。このことも、株価下落につながった可能性があります。

先々に不安を残した決算、次回での懸念払拭に期待

一般に、トヨタのようにグローバルに事業を拡大する中では、予期しなかったリスクが多々発生します。実際、過去に何度もそういう場面がありました。

ただ、そこで重要なことは、その懸念材料を先送りせずに早めに出し尽くし、先々にリスク要因を残さないことです。その意味では、今回のトヨタの場合、先々に少なからず不安を残したことになります。

今回のように、上方修正しても株価が大幅下落するのは、そう頻繁にあることではありません。しかし、逆に言うと、それだけ多くの投資家がトヨタに大きな期待をしているという裏付けでもあります。

5月に予定されている次の本決算発表時には、こうした懸念が払拭されることを期待したいと思います。

 

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