車載に注力し成長を目指す半導体メーカー、ルネサスエレクトロニクスを大解剖

ルネサスの業績、株価、採用、リストラ、復活の歴史と今後を考える

ルネサスエレクトロニクス(以下、ルネサス)は、2010年4月にNECエレクトロニクスを存続会社としてルネサステクノロジが合併してスタートしたマイコンを主力製品とする半導体メーカーです。

ルネサスの社名の由来は、「Renaissance Semiconductor for Advanced Solutions」とされ、ルネッサンス(=日本の半導体産業の復興)という意味と、あらゆるシステムに組み込まれることで先進的なソリューションを提供する半導体メーカーという意味が込められています。発足当初から数年は業績悪化に苦しみましたが、事業再編が奏功し現在の業績は好調です。過去を振り返り、現在とこれからのルネサスについて一緒に考えていきましょう。

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目次

1. ルネサスエレクトロニクスは日本の大手半導体メーカー
 1.1 ルネサスはマイコンを主力とする半導体メーカー
 1.2 ルネサスの注力分野は自動車と産業
 1.3 ルネサスの半導体はクルマの多くの場所で使われ、高いシェアを持つ
 1.4 ルネサスは産業用でも高いシェアを確保
 1.5 ルネサスのビジネスモデルは「ファブライト型」

2. ルネサスは東日本大震災からの復興を遂げる
 2.1 ルネサスは震災により業績が大きく悪化、産業革新機構から出資を受ける
 2.2 ルネサスは2013年10月に「変革プラン」を発表
 2.3 ルネサスは「変革プラン」を見事に達成
 2.4 ルネサスの現在のトップは元日本電産副社長の呉文精
 2.5 呉氏がルネサスの社長兼CEO就任後「中期戦略」を発表

3. ルネサスの株価は3年4か月で2.2倍に。ここから注目したい3つのポイント
 3.1 ルネサスの中期成長戦略では新規商談の動向に注目
 3.2 ルネサスは米インターシルの買収でアナログ半導体技術を取り込む
 3.3 大株主の産業革新機構はいつまでルネサス株を保有するのか

4. 元日本電産副社長の呉社長兼CEOは独立路線でルネサスの成長を目指す

5. ルネサスが求める人材は世界で勝ち抜く能力と行動特性を備えた人材
 5.1 求められる人材像
 5.2 ルネサスで求められる職種は多彩
 5.3 ルネサスの従業員関連データ

6. ルネサスを知るために読んでおきたい一冊

まとめ

1. ルネサスエレクトロニクスは日本の大手半導体メーカー

ルネサスはNEC、日立、三菱電機の半導体部門を源流としています。3社とも1950年代の日本の半導体黎明期から半導体事業に参入し、1980年代にはそれぞれが世界トップクラスの半導体メーカーとして活躍していました。

しかし、その後1990年代に入ると韓国や台湾メーカーの台頭に伴い競争力を失い、2000年代になると親会社からのスピンアウトにより再建が模索されました。それが、現在のルネサスの前身であるNECエレクトロニクス(NECの非メモリー半導体部門が分社)とルネサステクノロジ(日立、三菱電機の非メモリー半導体部門が分社)です。

ちなみに、現在のルネサスエレクトロニクスの社名は、両者の名前を半分ずつ取ったものです。

1.1 ルネサスはマイコンを主力とする半導体メーカー

では、ルネサスはどのような半導体を作っている会社なのでしょうか。

半導体は、大きくメモリーと非メモリーに分けられます。前者はDRAMやNANDフラッシュに代表される、情報を保存する目的に使われる半導体です。後者は、ロジック、マイコン、システムLSIなどの半導体で、計算や制御を行うための半導体です。このうち、現在のルネサスが最も注力しているのがマイコンです。

マイコンは、自動車の電子制御装置から家電まであらゆる電気製品に搭載される半導体で、それらの製品を制御するために使われます。人間に例えれば、頭脳に相当する役割を果たすものと言えます。また、マイコンにプログラムを与えることによって、様々な制御方法や演算を実現できるようになります。

1.2 ルネサスの注力分野は自動車、産業

次に、ルネサスがどのような分野に注力しているかについて解説したいと思います。上述したように、マイコンは多種多様な電気製品に搭載されていますが、その中で、現在ルネサスが最も注力しているのが世界シェア約4割弱を確保する自動車分野です。

用途別売上構成比は下図の通りですが、ここからおわかりの通り、注力分野の自動車向けの構成比は、2012年度(2013年3月期)の35%から、2015年度(2016年12月期)には50%へと大きく伸びています。また、自動車用と産業用の合計は、55%から70%に高まっています。

ルネサスは、2010年に発足してから数年間は、携帯電話やパソコン周辺機器向けなど情報通信分野にも注力していました。ただし、これらの市場は競争激化や市場縮小などの影響を大きく受けたため、ルネサスの業績悪化要因となりました。このため、そうした分野を非注力分野として縮小を進め、強みを持つ自動車用、産業用に注力してきた結果が現在の事業ポートフォリオとなっています。

出所:会社資料

1.3 ルネサスの半導体はクルマの多くの場所で使われ、高いシェアを持つ

では、自動車用ではどのような場所に使われているのでしょか。下図のように、ルネサスの半導体はエンジン制御(パワートレイン)、車載情報システム(コックピット)、電気自動車用のモータ制御(EV・HEV)など多岐にわたる分野で使われており、いずれも高いシェアを確保しています。

出所:会社資料

ちなみに、ルネサスによると2016年時点でクルマ1台あたりのルネサスのマイコンの平均搭載個数は11個となっており、年間の出荷個数は約9.4億個に達しているとのことです。

自動車分野では品質不良が人命にかかわる問題となるため、非常に高い品質管理が求められます。そうした市場でルネサスは、先端マイコンの品質不良率が0.1ppm以下(1,000万個のうち1個以下の不良品率)という非常に高い品質管理を実現しています。

これにより顧客の高い信頼を得ており、そのことが先述の世界シェア1位の背景となっています。

なお、2016年12月期Q3(10-12月期)時点での車載用売上高の約4分の3はエンジンコントロールなどの車載制御、残りの4分の1がカーナビなどの車載情報機器向けとなっています。

1.4 ルネサスは産業用でも高いシェアを確保

車載に次いでルネサスが注力しているのが産業です。また、「スマート家電」、「ヘルスケア」、「HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム」など、液晶テレビなどのデジタル家電を除く家電分野にも力を注いでいます。ちなみに、下図にあるようにFA関連、電力メータ、ホームアプライアンス(白物家電)等で高いシェアを確保しています。

出所:会社資料

1.5 ルネサスのビジネスモデルは「ファブライト型」

これまではルネサスの特色を製品から見てきましたが、もう1つ見落とすことができない特色は、そのビジネスモデルにあります。

具体的には、半導体の製造工程のうち設計から完成品までを全て自社で行う製品と、一部の工程を外部に委託する製品の両方を持っていることです。

全てを一貫して行う半導体メーカーをIDM(Integrated Device Manufacturer)、開発・設計だけに特化し製造を外部に委託する半導体メーカーをファブレスと呼びますが、ルネサスは、その中間あるいはハイブリッドである「ファブライト型」半導体メーカーです。

ちなみに、IDMの代表例はインテルや三星電子、ファブレスの場合はソフトバンクが買収したアーム社です。また、半導体の製造を請け負うファウンダリーとよばれる会社のトップ企業は台湾のTSMC社です。ルネサスは、このTSMCに製造の一部を委託しています。

2. ルネサスは東日本大震災からの復興を遂げる

ルネサスは、2010年4月の発足後、円高、東日本大震災、タイ大洪水、シェア低下などによって恒常的な赤字体質に陥りました。そのため、2013年9月に産業革新機構からの出資を受け入れるとともに、2014年3月期からは抜本的な構造改革である「変革プラン」に取り組んできました。その結果、業績は上向き、2015年3月期から2年連続して最終黒字を継続しています。

そこに至るまでの経緯を、改めて以下で振り返りたいと思います。

2.1 ルネサスは震災により業績が大きく悪化、産業革新機構から出資を受ける

2010年5月、ルネサスは統合後初の決算説明会を開催し、1)統合初年度より営業黒字を目指す、2)必要な構造改革を統合の初期段階に集中して取り組み、2年目には当期黒字化を目指す、3)中期的な営業利益率は2桁を目指す、という方針を示しました。

しかしながら、NECエレクトロニクス、ルネサステクノロジの両社ともに高コスト体質の状態のままで統合が行われたことや、2011年3月に発生した東日本大震災により那珂工場が大きな被害を被ったこと、さらに、2011年の秋から冬にかけて発生したタイでの大洪水で需要が大きく減少したことなどにより、収益改善策には大きな狂いが生じました。

統合初年度の2011年3月期の最終損失は▲1,150億円、2012年3月期も▲620億円の赤字が残り、財務体質も大きく悪化しました。

こうして抜本的な事業再編を実行する必要に迫られたため、2012年12月に産業革新機構やユーザー企業8社(トヨタ自動車、日産自動車、ケーヒン、デンソー、キヤノン、ニコン、パナソニック、安川電機)から合計1,500億円の資金調達を決断し、2013年9月に第三者割当増資を実行しています。

また、この決定に伴い、2013年2月には発足当初からの社長であった日立出身の赤尾泰氏が経営責任を取り退任し、後任として同じく日立出身の鶴丸哲哉氏(現ルネサス会長)が社長に就任しました。

2.2 ルネサスは2013年10月に「変革プラン」を発表

その後2013年6月には、オムロンで社長及び会長を務めた作田久男氏が代表取締役会長兼CEOに就任して新体制が発足し、同年10月に「変革プラン」が発表されました。

作田氏は、長年にわたる電子制御部品メーカーでの豊富な知見や、外部からの登用による“しがらみ”のなさという強みを活かし、ルネサスの問題点を的確に指摘し、それを変革プランに落とし込み、経営改革のリーダーシップを発揮しました。

変革プランでは、ルネサスが取り組むべき課題として以下の3点が指摘されました。

1) マーケットイン志向の追求
2) 徹底した収益志向での自律運営、意思決定や全ての活動の迅速化
3) さらに強固な財務体質の構築

また、ルネサスの目指す姿として、これら3つの課題を乗り越え成長し社会に貢献する企業となること、徹底的に収益にこだわり2017年3月期には営業利益率2桁を目指すことの2点が掲げられました。

こうした明確な目標設定により、リストラ続きで疲弊していた社員の士気低下を抑えながら収益改善策は粛々と実行され、結果としてルネサスは、2015年3月期、2016年3月期、2017年12月期(9か月)の3期連続で2桁の営業利益率を達成するまで回復しました。

2.3 ルネサスは「変革プラン」を見事に達成

2016年5月には、変革プランの実行フェーズ30か月(2013年10月~2016年3月)を経て、「変革プラン振り返り」が発表されています。その内容は、これからのルネサスを考えるために非常に重要であるため、以下に概要を示したいと思います。

まず、変革プランでは事業領域の選択と集中が目標として掲げられました。その実現がこのスライドから読み取ることができます。ここから明らかなように、事業ポートフォリオは自動車及び産業への集中が進みました(両分野合計は2013年3月期の55%から2016年3月期は70%へ上昇)。また、非注力分野の売上高は大きく低下しています。

出所:会社資料

次に注目したいのが生産構造改革の進展です。統合前の2社は日本各地に多くの製造拠点を持っていましたが、これを集約・譲渡したことにより効率性の大幅な改善に結びついているのです。

出所:会社資料

さらに、人員も大きく減少し(2013年3月末33,840人→2016年3月末19,160人)、1人当たり売上高が大きく上昇していることがわかります(同2,050万円→3,450万円)。

出所:会社資料

これらの結果、固定費が大きく減少し、損益分岐点売上高(赤字にならないための最低限の売上高)も低下しています。

出所:会社資料

2.4 ルネサスの現在のトップは元日本電産副社長の呉文精氏

少し話は前後しますが、「変革プラン」を主導した作田氏は2015年6月に退任し、その後任として日本オラクルの会長を務めた遠藤隆雄氏が迎えられましたが、わずか6か月で退任しています。

なお、この一連の人事の背景の詳細は闇の中ですが、各種報道によると作田氏の退任はトヨタ自動車との意見の相違、遠藤氏の退任は産業革新機構との間で今後のルネサスの成長戦略、具体的には海外半導体メーカーとの提携やM&Aに関する方針の違いがあったためとされています。

そして2016年6月には、呉文精氏がルネサスの代表取締役社長兼CEOに就任しています。呉氏は、大学卒業後、日本興業銀行(現在のみずほ銀行)に就職後、GEキャピタル・ジャパン、カルソニックカンセイを経て、2015年9月までは日本電産で代表取締役副社長を務めていました。

2.5 呉氏がルネサスの社長兼CEO就任後「中期戦略」を発表

呉氏は2016年9月に新たな成長戦略である「中期成長戦略」を発表し、その詳細な内容を同年11月に発表しています。中期戦略は、基本的にはこれまでの「変革プラン」の考え方を踏襲していますが、中期的な経営数値目標は一段と意欲的なものとなっています。

中期戦略でのルネサスが目指す財務指標は、1)注力分野の半導体売上の成長率は市場成長率の2倍を目指す、2)売上高総利益率は50%、3)売上高R&D比率は16~18%、4)売上高SG&A比率は12~14%、5)売上高営業利益率は20%以上(対売上高比率はすべてNon-GAPPベース)とされました。

これまでの経営目標の営業利益率が“2桁”であったことを考慮すると、さらに高い目標を掲げていることが理解できると思います。

また、注力分野の車載に関しては、自動運転技術など、より先進的な分野に積極的に取り組む方針が示されています。

さらに、今後の成長戦略を一層加速させるため、2016年9月に買収を発表している米インターシル社との統合の深化にも注力する考えが示されています。

3. ルネサスの株価は3年4か月で2.2倍に。ここから注目したい3つのポイント

さて、ここからはルネサスの株価の推移を見つつ、株式市場はルネサスのどこに注目しているのかを考えてみたいと思います。

ルネサスは、2013年9月末に政府系ファンドである産業革新機構やユーザー企業8社に対して第三者割当増資を行っています。増資直後の2013年10月1日の株価の終値は468円でしたが、そこから現在(2017年2月10日時点)の株価は約2.2倍に上昇しています。

また、直近の時価総額は約1.7兆円、主な株価指標はPERが22倍(2017年12月期IFIS予想ベース)、PBRが3.7倍(2016年12月期実績ベース)となっています。

いずれも市場平均を上回っていますが、これは将来の成長期待の高さを反映していると考えられます。では、どういった点に注目すべきかを、さらに踏み込んで考えてみましょう。

3.1 ルネサスの中期成長戦略では新規商談の動向に注目

先述した通り、ルネサスは営業利益率20%以上を目指していますが、そのカギを大きく握るのは、注力市場でナンバーワンとなることができる製品をより多く生み出せるかにあります。

ルネサスの注力市場は車載と産業分野ですが、現在ルネサスは、車載ではADAS(自動運転技術)、エコカー(HEV/EV)、産業ではスマートファクトリー(産業用イーサーネットPLCやNC装置向けデバイス等)、スマートホーム(スマート家電、ヘルスケア、ホーム・エネルギー・マネジメントシステム等)、スマートインフラ(スマートメーター、エネルギーマネジメントシステム等)などに向けて積極的に製品投入を行っています。

半導体、特に自動車分野の場合は、こうした取り組みの成果が実際の業績に表れるまでには数年を要しますが、新規商談の進捗状況や、新製品に向けた生産体制の準備などを精査することで、ある程度の中期的な業績の方向性は予測可能です。このため、そうした観点で今後の受注状況を精査していくことが必要です。

3.2 ルネサスは米インターシルの買収でアナログ半導体技術を取り込む

買収戦略にも注目したいと思います。ルネサスは2016年9月に、米ナスダック上場のアナログ半導体メーカーであるインターシル社を買収すると発表しています。買収金額は約32億ドル、買収完了は2017年2月中の予定です。

インターシル社は世界のアナログ半導体市場では5位に位置する中堅企業であり、産業用のウエイトが高い半導体メーカーです。

この買収により、今後ルネサスは、インターシル社の電圧制御ICなどのアナログ半導体と組み合わせた組み込みソリューションを提供できることになります。

たとえば、産業分野では圧力センサーなどから得られたアナログ信号をインターシルのミクスドシグナル半導体でデジタル信号に変換し、それをルネサスのマイコンで処理し、再びそのデジタル信号をアナログに変換しアクチュエーター(駆動装置)を動かす、などの使い方が想定されます。

今後は、お互いの販路を有効活用することによるクロスセルの促進、商品提案力の強化、重複した経費の削減などによりシナジー効果を早期に発揮できるかに注目していきたいと思います。

3.3 大株主の産業革新機構はいつまでルネサス株を保有するのか

現在のルネサスの株主構成比率は、産業革新機構が69.1%、次いで日立が8.1%、三菱電機が7.6%、トヨタ自動車が2.4%となっており、これらの特定株主が96.9%を占めています。そのため、株式の流動性(日々の株式の売買)の低さが、一般の投資家(機関投資家及び個人投資家)がルネサスに投資するときの気掛かり材料となっています。

流動性が低いと、少しの売買で株価が乱高下したり、あるいは、大株主がある日突然大量の売りを出すという懸念が払しょくできないためです。

とはいえ、大株主がルネサス株を保有し続けるかどうかはルネサスが決められることではありません。ルネサスとしては、いつ大株主が売却を決断しても対応できるように株式市場と質の高い対話を継続し、そうした動きに備える考えです。

なお、産業革新機構との間にあったロックアップ(株式の売却制限)は2015年9月末に解除されていますが、現時点では具体的な動きは見られません。

4. 元日本電産副社長の呉社長兼CEOは独立路線でルネサスの成長を目指す

上述したように、現在のルネサスの経営トップである呉氏は、金融とメーカーを渡り歩いた経営のプロです。ただし、直前の日本電産では、社長候補と目されながらも2015年9月に2年余りで突如退社しています。

退社理由の詳細は不明ですが、退任直後の日本電産の決算説明会において永守重信会長兼社長は、「けんか別れではない。新しい世界で成功してもらいたい」と述べる一方で、「実績がもっと上がっていたら、やめていくことはなかった」とも発言しているため、両氏の間にはなんらかの確執があり、呉氏としても「不本意な退社」であった可能性が伺えます。

呉氏は、退社後から約半年後にルネサスに移籍しますが、その間、日本電産はルネサスの買収に対して強い意欲を示していました。一方、呉氏は経営トップに就任後に、「インテル、クアルコム、エヌビディアなど、世界の半導体メーカーの勝ちパターンは、独立系で半導体専業であること。われわれは、どこかのメーカーの傘下に入る道はない」とコメントし、日本電産の傘下に入ることに対して否定的な見解を示しています。

おそらく、呉氏の招聘をバックアップした大株主である産業革新機構も同様な見解ではないかと推察されます。

いずれにせよ、こうした経緯を考慮すると、呉氏は日本電産とは袂を分かち、独立路線でルネサスの成長を目指す可能性が高いと考えられます。

5. ルネサスが求める人材は世界で勝ち抜く能力と行動特性を備えた人材

これまで述べてきたように、ルネサスには苦しい時代もありましたが、現在の業績は回復に向かっています。また、かつては多くの企業が乱立していた日本の半導体市場も数社に絞り込まれ、ルネサスは現在、マイコンやシステムLSI分野では国内で最大規模の事業規模を誇っています。

先端的な技術に興味があり、これから顧客と一緒になって新たなソリューションやイノベーションを起こしたいと考える意欲的な学生の皆さんや、これまでの半導体関連分野での経験を活かしたいとお考えの中途採用を目指す社会人の方は、ぜひチャレンジしてみてください。

5.1 ルネサスで求められる人材像

まず、求められる人材像ですが、ルネサスのホームページでは以下のように述べられています。

・これまでに経験ない環境や価値観をもつ人の中でも、その環境や価値観を受入ながらコミュニケーションを取ることができる。

・課題解決や目標達成のための方向性を見つけ、周囲をうまく巻き込みながら成果を上げることができる。

・目標を達成するために、高い意識で取組み最後までやりとげようとする意識、姿勢を持っている。

・全体を俯瞰して思考することができる。 全体最適で物事の全体像や関連性を考えようとする志向を持っている。

半導体チップは指先に乗せられるぐらい小さなものですが、その製造プロセスは非常に多岐にわたります。また、半導体は電子機器に組み込まれる中間財(部品)ですが、その電子機器のバリューチェーンにも、製造から販売までの間には、様々な業種の企業が存在しており複雑です。

そのため、自分の回りだけではなく、全体を俯瞰した思考ができることや、自分が所属する工程とは異なる相手ともコミュニケーションができるチームワーク力の高い人材が求められることになります。

また、現在ルネサスが注力している自動車や産業分野では、日々技術革新が進んでおり、求められる製品の技術難易度も高まっています。よって、そうした変化に対しても高い意識で取り組み挑戦していく人材が求められることになります。

5.2 ルネサスで求められる職種は多種多彩

ルネサスは半導体メーカーですのでエンジニア向けの職種は多種多彩です。具体例は以下の通りです。

ソリューションエンジニア:顧客の課題を具体化し、課題を解決するアイデアをソリューションとして提案する仕事です。

デバイスエンジニア:半導体の仕様検討から始まり、回路/レイアウト設計、評価/量産準備までの一貫した製品開発フローを担当します。

先端デバイス技術開発:ルネサスはファブレスではありませんので、半導体製造の先端技術の開発も継続しており、これに関連するエンジニアも求められています。

実装技術開発:最先端の実装技術を活用したチップ間のインタフェースなどの開発を行います。

量産技術エンジニア:半導体の前工程(ウエハプロセス)や、後工程(テスト工程)の生産性、品質向上に取り組みます。

品質保証エンジニア:ルネサスグループ全体での品質戦略を策定し、品質マネジメントシステムを構築します。

以上は理系人材の職種の一部ですが、文系についても、セールス、経営企画、経理財務、資材調達、人事、情報システムなどの職種があります。

5.3 ルネサスの従業員関連データ

2016年3月期末の連結従業員数は1万9,160人です。また、ルネサス単体の従業員数は2,933人で平均年間給与は910万円です。また、2016年3月期に採用した従業員のうち女性の比率は15%(新卒:20%、経験者12%)でした。

6. ルネサスを知るために読んでおきたい一冊

半導体メーカーというと、とても難解なイメージが強いと思いますが、この本は、ルネサスや日本の半導体産業の歴史がわかりやすく解説されているため、文系の方でもルネサスに対する理解を深めることができる一冊です。ぜひ、手に取って読んでみましょう。

図解 ルネサスエレクトロニクス―ひと目でわかる! (B&Tブックス)

まとめ

いかがでしたか。ルネサスは東日本大震災で大きな被害を受け、そこから見事に復活してきたことがおわかりいただけたのではないでしょうか。ルネサスが注力している自動車や産業関連の市場では、これから一段と技術革新が進むため、ルネサスの活躍の機会がさらに増えることになると思います。今後もルネサスの成長に注目していきたいと思います。

 

投信1編集部

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