「節分天井・彼岸底」をTOPIXとS&Pで検証

今年最初の決算シーズンも峠を越える今の季節で気になるのは、「節分天井・彼岸底」という投資格言です。この格言は、節分の2月3日前後に相場はピークを付け、春の彼岸(春分の日)の3月21日前後に向けて下落していく、ということを表しています。

今年は昨年の今頃とは対照的に、トランプ相場の継続で年明け以来の相場は比較的明るいものとなっています。そんな時にこうした格言を耳にすると、嫌でも気になってしまいますね。

そこで、今回はこの格言が正しいかどうかを1990年から2016年まで27年間のTOPIXとアメリカのS&P500種指数を使って検証してみました。

格言通りとなった確率は日本が44%、アメリカが33%

結論から先に申し上げると、日米ともにこの格言が当てはまる確率はそれほど高くないというのが今回の検証の結果でした。

2月4日(前後)の株価に対して3月21日(前後)の株価指数が下落した場合が、この格言が当てはまったことになりますが、そうなったのは27年間中で日本は12回、アメリカは9回です(下の表の黄色い部分)。つまり、当たる確率は日本でも44%と半分以下、アメリカですと33%に過ぎなかったことになります。

また、この約1か月間の27年間の平均騰落率は日本が+1%、アメリカが+2%となっており、春の彼岸に向けて株価は下落するのではなく、むしろ穏やかに上昇する傾向にあったということになります。

出所:SPEEDAをもとに筆者作成

投資格言の”後講釈”とは?

基本的に、投資格言は厳密な理論や数値データに基づいて作られたのではなく、過去の先人の経験則から生まれています。

このように、理論的には説明しにくいものの、そうなることが多い現象のことを投資の世界では「アノマリー」とも呼びます。おそらく、過去においては「節分天井・彼岸底」が、もっと高い確率で当てはまる時期が多くあったのでしょう。

また、現在においてもこうしたアノマリーが生きていると思ってしまう理由は、アノマリーを説明するもっともらしい後講釈が残っているためでもあります。

「節分天井・彼岸底」の場合、よく使われる背景説明は以下のようなものです。

  • 年初は新規資金が流入しやすいので相場は上昇しやすい(上昇)
  • 2月は決算シーズンであるため新年度の業績への改善期待が生まれやすい(上昇)
  • 決算が終わると材料出尽くしになりやすい(ピーク)
  • 3月になると機関投資家が利益確定売りを行う傾向がある(下落)

ちなみに、アメリカに比べて日本のほうが当たる確率が少しだけ高い理由は、日本には3月決算の企業が多いためではないかとも推察されます。

こうした後講釈も、当たった場合の説明としては説得力のあるものとなりますが、今回の検証結果をご覧になってお分かりのように、必ず毎年そうなるとは限らないことには注意が必要です。当然ですが、相場は上述のような需給要因だけでは決まらないのです。

先人の知恵に学ぶことは投資の世界でも大切ですが、投資格言の中には時間とともに変容し現在はあまり役に立たないものも含まれていることには心したい思います。

 

LIMO編集部