混迷深まる東芝だが、あえてポジティブな変化を探してみた

債務超過回避、メモリー半導体事業売却、海外原子力撤退をどう評価する?

testing / Shutterstock, Inc.

2か月で1兆円強の時価総額が消えた

決算延期という異例の事態が明らかになった翌日、2017年2月15日の東芝(6502)の株価は前日比▲9%安と大幅安で引けました。2016年12月末に米原子力事業の巨額減損リスクを突如公表した時から比べると、株価は半分以下に下落、時価総額も約1兆円強が失われています。

その後、連日のように債務超過懸念や上場廃止リスクなどの最悪シナリオが報じられてきましたが、これに追い打ちをかけるように、2月14日には米原子力事業における「内部統制上の不備」による決算延期という事態にまで陥りました。

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このように、今さら筆者が指摘するまでもなく東芝は危機的な状況にあると言えます。とはいえ、株式投資においては、メディア等が総悲観論となった時こそ冷静に、現状を正しく理解する心がけを保つことも大切です。

ちなみに、東芝の株価は2016年の今頃も似たような危機的状況にありました。しかし、医療機器事業の売却に成功したことやNANDフラッシュメモリーの好調で、年末まで株価は上昇していました。

もちろん、現時点では筆者に“昨年の再来”の確信があるわけではありません。一方で、市場全体がやや感情的になり過ぎている可能性を勘案し、今回はあえて14日の発表で見落とされているかもしれないポジティブな兆候に目を向けてみたいと思います。

気になった3つのポジティブニュース

14日に行われた会見では、綱川智代表取締役社長が約20分説明を行った後、1時間ほどの質疑応答が行われました。その中で、これまで報道されてきた内容とはやや異なる、意外とポジティブにも捉えられる3つのニュースがありました。

第1は、2017年3月期末は資本対策前(資産売却益等)でも債務超過を回避するというメッセージでした。

会社側資料によると、半導体事業等の売却による資本対策を考慮しない前提での2017年3月期末の株主資本は▲1,500億円(従来予想3,200億円)、純資産は1,100億円(従来予想なし)とされていました。株主資本に注目すると債務超過となりますが、純資産ベースではそれが回避されるという内容です。

一般的に金融機関が融資を継続するかどうかの判断には、株主資本よりも純資産を注視するとされています。一方、東京証券取引所は、年度末の株主資本が債務超過であると東証1部から2部への指定替えを求めるとされています。

そのため、この数値を見る限り、東芝は東証2部への指定替えの可能性は高いものの、金融機関がこの予想を受け入れるのであれば、融資が継続されるが可能性が高いと捉えることができると筆者は推測します。

第2は、分社化するメモリー半導体会社の持分の売却比率について、競争法の審査が不要である20%未満とするというこれまでの考えから、時期は明言されていないものの100%売却もありうるという方向性が示されたことです。

各種報道によると、メモリー半導体事業の事業価値は1.5兆円~2兆円とされています。これを全て売却する可能性が示唆されたことは、将来の東芝全体の成長性低下の懸念はあるものの、当面の存続可能性という点に着目すればポジティブなニュースということになります。

ちなみに、100%売却する場合、実現するのは今年度以降になる可能性が高いと考えられます。ただ、上述のように東芝は純資産ベースでは3月末の債務超過は回避されるというメッセージを発していますので、売却を急ぐ必要はないということになります。

第3は、ウェスチングハウス社(以下、WEC)に対する買収は「正しかったとは言えない」という発言があり、東芝は今後、海外の原子力建設に関しては撤退・縮小し、国内外のメンテナンス、燃料、国内の廃炉に集中するという大きな方針転換が示されたことです。

もちろん、現在進行中の米国での新設案件の赤字がさらに拡大する懸念は残ります。しかし、このような大きな方針変更が示されたことはポジティブに捉えることができます。

ちなみに、東芝は今回WECに対する親会社保証7,935億円に関して、初めて詳細な内容説明を行っています。

これによれば、「米国AP1000プロジェクトにおいてWECの顧客への支払い義務(プロジェクトを完工できなかった場合の損害賠償請求を含む)を履行できなかった場合、当社はWECの親会社として客先にこれを支払うことが要求されている」となっています。

このことは、捉え方によってはWECが現在進行中の米国AP1000プロジェクトの新設案件を全て中止したとしても、これに関する損失は最大で「親会社保障である7,935億円」に抑えられるとも考えられます。

実際にそのようなことが行われるかは現時点では定かではありませんが、注視しておくべきポイントであると思われます。

まとめ

東芝の現状を考慮すれば、悲観的にならざるを得ないことは確かです。ただ、繰り返しになりますが、株式投資においては時に冷静さを保つことが重要です。

そのため、あくまでも「頭の体操」としてですが、ポジティブな変化に目を向けることも大切ではないかと考えます。もちろん、東芝に対して融資を継続している金融機関のスタンスに今後変化が起こらないかを最大限注視することをお忘れなく。

東芝の過去2年間の株価推移

 

和泉 美治

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和泉 美治

同志社大学文学部卒業後、エルコインターナショナル (現:京セラエルコ) に入社。英国バーミンガム大学にてMBA取得。
その後UBSフィリップスアンドドリュー証券 (現:UBS証券) に入社し、調査部にてエレクトロニクスセクターを担当。2002年より2013年までJ.P.モルガンにて産業用エレクトロニクス及び民生エレクトロニクスセクターを担当。
日本証券アナリスト協会検定会員。