あなたの資産である投信、”ブラックボックス”になっていませんか?

運用報告書を読んで投信保有の納得感を高める7つのポイント

「未来」のためのヒントは「過去」の情報の中にある

上場している企業のことを詳しく調べようとする時、まずは有価証券報告書を読み込みます。有価証券報告書には、財務諸表などの定量的なものから、事業の状況や企業がリスクと考えていることなどの定性的なものまで、多くの情報が詰まっています。

上場歴が長い企業について、過去のものをすべて読み込むのが理想でしょうが、時間の制約もあるので、株価のチャートを見て、株価が大きく動いている頃の有価証券報告書を読んでいきます。すると、その頃の事業がどんな状況だったか、経営者が何を考えていたかなど、多くのことが読み取れます。

続きを読む

「過去」の蓄積の上に「現在」があり、その先に「未来」があるという考え方に立てば、「過去」の情報にアクセスするということは、「未来」のためのヒントを探す作業とも言えます。

保有している投資信託のこと、知っていますか?

ところで、最近はNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)など、運用にまつわる税金が免除されるツールが整ってきました。そのため、こうしたツールを活用して投資信託を購入される方もいらっしゃるかと思います。

では、ここで質問です。「保有している投資信託のこと、どのくらい知っていますか」。

参考:個人型確定拠出年金(iDeCo)、金融機関選びで失敗しないために

保有している投信の「過去」を詳しく教えてくれる運用報告書

銀行や証券会社で買うことができる投資信託も、通常の企業と同様、1年に1回決算を行います。企業にとっての有価証券報告書のように、投資信託の場合も決算を経た後に運用報告書を発行しなくてはなりません。運用報告書は、投資信託の決算日から約2カ月半後に公表されます。

細かい話ですが、運用報告書には、要約版のような「交付版」と「全体版」の2種類があります。当然「全体版」の方が情報は充実しています。

投資信託は自分の資産の一部を託す対象です。その中身がどうなっているのかを知っておくために、この運用報告書(できたら全体版)を一度は読んでみることをお勧めします。

投信の運用報告書のここを見よう

運用報告書はとっつきにくい印象もあるので、見ておいた方が良い部分をご紹介いたします。なお、ここから先は、日本株で運用しているアクティブファンドの運用報告書(全体版)をイメージしていただければと思います。

1. 運用実績

年ごとと月ごとの基準価額と参考指数(多くの場合、TOPIX)の推移が表になっています。注目したいのは、株式組入比率の推移です。大体は高い水準となっていますが、たまに低くなる時があります。たいていの場合、現金保有を増やしていることを意味します。市場環境が大きく動いている時か、運用担当者が運用方針を変える時ですので、チェックしておきましょう。

2. 運用経過

基準価額の推移のグラフとともに、基準価額の主な変動要因についての説明がなされます。多くの場合、市場全体の動きがどうだったかのパートと、投信がどのような運用を行ったかを説明するパートに分けて説明されていることが多いです。

前者で何が起きていたかを復習しつつ、運用担当者が市場全体をどのように認識していたか、どのような運用行動をしていたかを感じ取っていくと良いかと思います。最初のうちは、「納得感があるかどうか」で読むのでも構いません。

3. ベンチマークとの差異

「2. 運用経過」の結果、運用の目標としているベンチマークに対し、上回ったか下回ったが記されています。つまり、その投信の成績です。

4. 今後の運用方針

運用報告書で唯一「未来」について書かれた部分です。細かいことは書かれていませんが、強気か慎重かという方向感と、運用担当者が着目している投資テーマが書かれています。

5. 株式売買金額の平均組入株式時価総額に対する割合

「期中の株式売買金額」を「期中の平均組入株式時価総額」で割った数字で、売買回転率を表しています。積極的に資産内容を入れ替えるとこの数字は高くなっていくのですが、高すぎると短期売買で利益を取りにいっている可能性もあります。2.00を1つの目安に、1.00を下回っていたり、3.00を超えていたりしたら、少し気にとめておくと良いかと思います。

6. 主要な売買銘柄

1年間の中で売買金額が大きかった銘柄が記載されています。

7. 組入資産明細表

前期末と当期末に組み込まれている銘柄がすべて列挙されています。どの銘柄を外し、どの銘柄を新たに組み入れたかを確認することができます。個別銘柄に投資をされる方にとっては、ヒント満載の一覧表です。

投信の「過去」を知って、保有するという「未来」の納得感を高めよう

新規に投信を購入する場合、目論見書(こちらも交付版と請求版があります)を読んで理解することが求められます。当然それも必要ですが、直近の状況しか分からないので、過去の運用の経緯を知るには、やはり運用報告書を読んだ方が良いです。

詳しい情報満載の運用報告書ですが、1年に1回限りで、かつ、決算日から2カ月半ほど経ってからやっと発行される文書ですので、タイムリー性にはどうしても欠けてしまいます。タイムリーに確認しておきたいという方は、毎月発行される運用レポートをチェックしておくと良いかと思います。

既に保有している投信だけでなく、これから投資しても良さそうな投信があったら、運用報告書をよく読んで、十分に納得した上で購入・保有したいものです。

 

PR

藤野   敬太

東京大学経済学部を卒業後、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(現日本アイ・ビー・エム)等を経て、2001年から2013年まで、日興アセットマネジメントにて、アナリストおよびファンドマネージャーとして日本株ファンドの運用に従事。
現在は、オフィス・ラコルドの代表として、ファミリー向け・ファミリービジネス向けのコンサルティングおよびアドバイザー業務を展開する。
CFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、シニア・プライベートバンカー(日本証券アナリスト協会認定)。