1月27日から2月2日まで続いた春節(中国の旧正月)も終わり、2週間ほどたちました。一時の中国観光客による爆買いは沈静化したようですが、多くの中国人観光客が日本を訪れ体験型観光などの盛り上がりに一役買ってくれたようです。

そこで、春節後のアジア・中国圏での化学品の市況を読み解き、今後の景況感を予想してみました。

春節後の化学品市況は堅調に推移

筆者は、『大型化学株、鉄鋼株、非鉄株、総合商社に追い風?』と題した投信1の1月27日付記事の中で、「春節が終わってしばらくしても市況が堅調に推移すれば…(中略)… 2017年の少なくともアジア・中国圏の景況感は強いと判断しても良いのではないかと考えます」と記述しました。

現状、春節が終わって2週間が経過しましたが、化学品市況は予想以上に堅調に推移しています。

筆者にとって馴染みのある化学品市況を例に見てみましょう。たとえば苛性ソーダですが、これは産業のあらゆる分野で原材料として使われる汎用性の高い無機化学薬品です。2016年秋頃までアジア市況での取引価格は300ドル/トン前後でしたが、足元の価格は410~430ドル/同と堅調な推移を見せています。

中国の過剰設備の代表製品である鉄鋼、セメントと並んで苛性ソーダも過剰設備が指摘されてきましたが、中国メーカーの減産を背景に市況が回復、日本の国内メーカーが相次いで出荷価格の値上げを表明しています。

苛性ソーダ以外の石油化学製品、たとえば豊洲市場で問題になったベンゼン、合成ゴム原料のブタジエン、ナイロン原料のカプロラクタム、プラスチック原料のスチレンモノマー、ポリエステル原料のパラキシレンといった化学製品の市況も、原油・ナフサ市況高やアジア・中国圏での旺盛な需要によって市況の基調は強いと判断されます。

特に、昨年12月からの市況は急騰と言っても過言ではないほど強い動きを示しました。恐らく春節の間の中国人の旺盛な消費によって生産者・流通業者の在庫が減少、現在、在庫投資のために素材の調達に動いているのではないでしょうか。

日本のエチレンプラントの稼働率が100%を超えた

一方、1月17日の日本経済新聞で、我が国のエチレンプラントの今年1月の稼働率が100.1%と、生産が設備能力を若干ですが超えたという記事が目を引きました。エチレンプラントの稼働率が100%を超えるのは、2008年2月以来、実に8年11か月振りだそうです。

2011年から2013年までエチレンプラントの稼働率は90%を下回っていました。しかし、2014年以降、住友化学千葉工場、三菱化学鹿島事業所、旭化成水島製造所のエチレンプラントが相次いで生産停止したことが上記の高稼働の背景にあります。

また、2016年1月から2017年1月までの月次の稼働率(図表1)は94~98%で推移しており、そもそも非需要期の1月に超フル稼働になること自体、需要が強いことを示していると思われます。2月も引き続き、エチレンプラントは恐らくフル稼働と予想されます。

出所:石油化学工業協会資料より筆者作成

2月上旬までに発表された大手総合化学会社の2017年3月期第3四半期累計(4-12月期)決算も順調で、通期業績予想の上方修正が相次いだことは記憶に新しいところです。2017年3月期はもちろんですが、翌2018年3月期の第1~第2四半期(4-9月期)あたりまで好業績が続くのではないでしょうか。

化学品以外では非鉄金属の市況も上昇しています。銅、アルミニウム、亜鉛などの市況が昨年末頃から上昇を見せ、足元も強い動きを見せています。関連企業の業績も底入れの兆しが見えています。

市況高は株価に織り込まれたのか、売りのタイミングはいつなのか

春節が終わっても化学品市況が堅調だということは、アジアや中国圏、そして日本の景況感は強いということを示唆するものと考えます。というのは、化学製品は衣・食・住に欠かせない素材であり、同時に個人消費の影響を受けやすい素材であるからです。

では、この強さは株価にどの程度織り込まれたのでしょうか。化学分野では2018年以降、米国の安価なシェールオイルを原料にした競争力の高い製品がアジア市場に流れてくると予想されます。また、中国では豊富な石炭から作られるガスを原料に石油化学品を製造する計画が着々と進行中です。

したがって、昨年秋以降、堅調な株価トレンドを続けてきた化学株などの素材関連株は、コスト競争力という観点で失速する可能性があります。

株価の先見性はおよそ6か月先を織り込むと言われています。次の2018年3月期第2四半期累計(4-9月期)決算が発表される今年11月上旬頃から6か月逆算した5月前後に各社の2018年3月期業績予想が明るければ、見逃せない売り場になるかもしれません。

 

石原 耕一