個人投資家がヘッジファンド投資のリスクを見分けるには?

ヘッジファンドにまつわる「昔話」には要注意

ヘッジファンドというと富裕層のものというイメージがあったかもしれません。しかし、最近は個人投資家の中にも「オルタナティブ投資」の対象としてヘッジファンドを活用する動きも出ています。

では、ヘッジファンド投資の際に注意すべきこととは何でしょうか? 今回はそのうちの5つのポイントをご紹介します。

その1 ファンドの流動性

ファンドの流動性とは、投資家が買付または解約できる頻度をいいます。ヘッジファンド投資では四半期ごとに買付・解約ができるのが一般的とされていましたが、現在は普通の投資信託のように毎日買付・解約が可能であるものや(いわゆる「リキッド・オルタナティブ」)、週ごとまたは月ごとの流動性が一般的となっています。

続きを読む

つまり、「ヘッジファンドの流動性は極端に低い」というのは昔話なのです。

一方、流動性の低い投資対象の運用を得意とするヘッジファンドもあり(たとえば未公開企業の株式や債券を運用対象とするもの)、通常そのようなヘッジファンドの解約流動性は低いものとなります。

ただ、解約流動性の高いヘッジファンドが優れていて、解約流動性の低いヘッジファンドが問題であるということではありません。問題となるのは、運用戦略とマッチしない流動性を無理に提供しているヘッジファンドこそパフォーマンスを犠牲にしている可能性がある、ということです。

前述の「リキッド・オルタナティブ」は人気を集めていますが、流動性が高ければ全て良しとするのは賢明な判断ではなく、運用戦略に適した流動性が提供されているかどうかを見極めることが肝要です。

その2 流動性の制限条件

投資家に対し、流動性に制限条件を設定することは、ヘッジファンドでは一般的です。

たとえば、ファンド全体の20%を超えるような解約請求が同じ取引日に集中した場合、その解約金額を手当てするためにファンドのポジションを一部処分します。しかしながら、一気に処分しようとすると⾃分たちが理想とする価格から乖離した水準での約定となる場合があり、注意が必要です(無理に安い値段で処分することになれば顧客資産はその分毀損します)。

そのような大規模な解約請求が来た際、投資家の経済合理性を守るために、「ゲート(Gate)」という解約申し込み制限をする場合があるのです。

通常の市場環境においてこの条件が使用されることはほとんどありませんが、リーマンショックのような極度の市場ストレスが発生したケースでは、多くのヘッジファンドが実際にこの条件を発動しました。

その3 運用内容の透明性

リーマンショック以降、情報開示が不⼗分なヘッジファンドに対して投資家は厳しい目を向けるようになりました。ヘッジファンドが実際にどんな資産に投資しているのか、利益と損失が何からどの程度発生しているのか、現時点での投資が本来説明されている運用戦略と合致しているのか、これらについて投資家が定期的に評価できるための情報提供が必要です。

たとえば、リーマンショック時、流動性の劣るプライベートエクイティ投資のポジションを含んだヘッジファンドでは、そのようなポジションを現金化することができず、投資家から解約請求を制限する事態に陥りました。もし、投資内容の透明性がきちんと担保されていれば、投資家はその時点で運用者に対して指摘したり、問題が顕在化する前に解約することが可能でした。

一方、透明性の取扱いに関しては難しい問題もあります。ヘッジファンドの収益源は運用者の腕(スキル)のみです。運用者が頭を痛めて捻り出した投資アイデアや投資対象の選定については、外部に積極的に伝えたくない思いが強いはずです。真似されて自分たちの収益機会が小さくなる可能性があるからです。

しかし、さらに高いレベルの情報提供を求める投資家の声が強くなりました。情報開⽰については、ヘッジファンドと投資家の双方が心地良いバランスを見いだすことが重要です。この点は双方向の議論を継続することが肝要と思われます。

その4 運用成績の⼀貫性

スポーツ選手のように、ヘッジファンド運用者もスランプに陥るケースがあります。パフォーマンスが劣化した運用者の中には「スタイル・ドリフト」という⾏動に移る場合があり、この場合は注意が必要です。

本来ヘッジファンド運用者は⾃分の得意な運用手法に集中すべきですが、それがうまくいかないと経験値の低い(あるいは全くない)戦略を突然始めたりすることがあります。

たとえば、株式運用を専門としていたのに突然債券も投資対象に組み入れ始めるようなことがあったとすると(右打ち打者がスランプを理由に突然左打ちに変わってしまうようなこと)、これは全く好ましい傾向ではなく、投資家としてはすぐに解約を検討するべきかもしれません。

その5 キーマンリスクの存在

ヘッジファンドにおける運用成績の優劣は、運用者本⼈の腕で決まります。つまり、その運用者⾃⾝の調子が崩れたり、運用者が他の会社に移ってしまうなどした場合は、そのヘッジファンドの実態が全く異なる存在となってしまう場合があります。

このようなリスクは「キーマンリスク」と呼ばれています。ヘッジファンドに投資する際は、ヘッジファンドを運営する会社だけではなく、運用者個⼈の現状がどうなっているのかをきちんと知ることが重要です。

運用者の退社が明らかになった場合には、運用の継続性が維持されているのかを⾒極めて、場合によっては投資を引き揚げるなどの判断が必要です。

ピクテ投信投資顧問株式会社 小田嶋 康博

PR

小田嶋 康博

金融系ベンチャー企業を経て、イギリス系大手ヘッジファンドであるマン・グループにて、東京、チューリッヒ、ロンドンで勤務後、ピクテに入社。
ピクテでは、従来型のディストリビューションモデルと異なる戦略立案及び営業活動を担当。 特に富裕層向けビジネスモデルの構築、並びにネットチャネル経由のビジネスモデル構築及び促進に向け販売会社とのコラボレーション施策の開発に従事。
慶應義塾大学入学後渡米し、ニューヨーク州立大学経営学士取得。