富士通テレワーク勤務導入-管理職・社員双方の意識改革は進むか

ICTを活用した働き方改革の目的は「生産性の改善」

富士通がテレワーク勤務制度の正式導入を発表

2017年2月28日、富士通は「ICTを活用した富士通の『働き方改革』」と題するプレスリリースを発表。テレワーク勤務制度の活用で「多様で柔軟な働き方」や「長時間労働を前提としない働き方」を実現し、生産性の向上を目指すという考えを表明しました。

かつて「不夜城の富士通」と呼ばれたこともある同社ですので(といってもバブル時代のことですから20年以上前のこと)、こうした発表には時代の変化を強く感じずにはいられません。

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特に注目されるのは、「テレワーク」というキーワードです。以前、『電通問題から考える「働き方改革」のビジネスチャンス』でも述べましたが、昨年から政府は長時間労働を解消していくために、中央官庁でも積極的にICTを活用したテレワーク導入を進めています。

こうした中で、富士通のような大企業もテレワークの利用に本腰を入れるとなると、「働き方改革=テレワーク」という流れが一段と加速していくことが予想されます。また、もしかしたら2017年の流行語大賞も取るのではないか、そんな予感すらします。

そもそもテレワークとは?

テレワークは言い換えれば「在宅勤務」のことでもありますが、ここで今一度テレワークについて簡単におさらいしておきたいと思います。

テレワークは、パソコン、タブレットなど最新のコミュニケーションツールやデスクトップ仮想化技術などを活用した働き方です。会社とは離れた場所でも、高い情報セキュリティが確保され、誰がどの時間に端末を使って仕事をしているかが「見える化」され、ICT技術の活用によりタイムリーな労働時間管理が可能な仕組みとなっています。

ちなみに、富士通は日本を代表するICTカンパニーです。

テレワーク活用で働き方改革を実現するには、制度・意識改革も重要

ただ、いくつか気になる点もあります。まず、社員側からすると、オフィスから離れた場所で働かせてもらえるのは良いとして、それを逆手に取った長時間労働やサービス残業の発生という不安が挙げられます。また、導入する会社側としても、見えないところでサボるなどの不適切利用が行われないのかという懸念もあります。

これらの不安や懸念は、もっともなことであると思いますが、富士通のリリースを良く読むと、そうした課題への対処法に関する示唆も得ることができます。

具体的には、制度改革の項目には、「一律的な運用ではなく、環境や業務特性を踏まえて生産性を高める働き方を職場が主体となって検討・実施します」と述べられています。

また、意識改革の項目には、「働き方改革の狙いや意義、マネジメントのポイントの理解を深め、社員の意識を変える取り組みとして、全社員向けの説明会やe-Learning、管理職向けのマネジメント研修などを実施します」とあります。

つまり、ICTを導入するだけではなく、管理職も従業員も究極の目的は生産性の向上であることを理解し、参加者の意識を改革していくことが、テレワーク導入による働き方改革の実現と成功のポイントであるということになります。

今後の富士通の取り組みに注目したい

富士通は2017年4月から、今回発表した仮想デスクトップなどのICTを活用したテレワーク勤務制度を、全社員約3万5,000人を対象に正式導入する予定です。おそらく、これだけ大規模なテレワークの導入は日本ではあまり前例がないと思われます。

ここで、あえて性悪説での懸念を述べるとすると、これだけの人数に一気に導入してしまうと、テレワークを社員の権利と誤解したり、サボるなどの不適切利用を行う社員が増えてしまい、本来の目的である「自律的に働くことによる生産性の向上」が十分に実現されないのではないかという点です。

とはいえ、富士通によると今回の取り組みは約2年間にわたり社員1,200人に対してトライアルを行った後に、“満を持して”正式導入されるとのことですから、上述した懸念は杞憂に終わる可能性が高いと考えられます。

ちなみに、こうした取り組みが大きく成功すれば、富士通の業績が改善するだけではなく、富士通のテレワーク関連の製品・サービスの外販拡大をもたらすと考えられるため、日本全体の生産性改善にも期待が持てることになります。今後も富士通の働き方改革への取り組みに大いに注目していきたいと思います。

和泉 美治

ニュースレター

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和泉 美治

同志社大学文学部卒業後、エルコインターナショナル (現:京セラエルコ) に入社。英国バーミンガム大学にてMBA取得。
その後UBSフィリップスアンドドリュー証券 (現:UBS証券) に入社し、調査部にてエレクトロニクスセクターを担当。2002年より2013年までJ.P.モルガンにて産業用エレクトロニクス及び民生エレクトロニクスセクターを担当。
日本証券アナリスト協会検定会員。