日本を代表する鉄鋼会社の神戸製鋼所(以下、神戸製鋼)。実は神戸製鋼は鉄鋼会社ながら、事業多角化が非常に進んでいる会社としても知られています。

ここ数年は建機事業が大きく拡大し、同社の業績拡大を牽引してきましたが、2016年3月期は一転コベルコ建機事業が赤字に。本業の鉄鋼事業が世界的な鉄余りで環境が厳しい中、神戸製鋼は電力事業への大型投資を発表しました。電力事業を始めて既に10年以上の実績を有し、2016年3月期は174億円もの経常利益を上げるに至っています。

神戸製鋼は電力事業の拡大を契機に業績が回復して株価も底打ちとなるのでしょうか。今回は臨機応変に新たなビジネスモデルを模索する神戸製鋼について考えてみます。

事業多角化の代表選手たる神戸製鋼

神戸製鋼(5406)といえば日本を代表する鉄鋼会社ですが、事業の多角化に非常に積極的な会社としても知られています。その事業は大きく分けると、鉄鋼、機械、エンジニアリング、建設機械、電力と5つの事業から構成されています。

売上規模自体は本業の鉄鋼事業が他を圧倒していますが、利益面ではここ数年、建設機械事業の利益貢献が大きく、神戸製鋼は鉄鋼と建設機械が事業の2つの柱と言われていました。

中国市場の失速で建機事業が赤字転落

しかしながら、神戸製鋼の建機事業が得意としていた中国市場で景気が後退。建機事業の状況が厳しくなり、2016年3月期にはコベルコ建機事業が赤字転落。これまで同社の経営を支えてきた建機事業が、一転、会社のブレーキ的存在となってしまいました。

鉄鋼事業も世界的な鉄余り状態が続き経営環境が厳しい中、同社は主力の2事業で苦戦を強いられる結果となっています。

その中で神戸製鋼は電力事業への大型投資の発表を行いました。

2002年から電力事業を開始している神戸製鋼

神戸製鋼の電力事業は2002年からスタートしています。鉄鋼事業で培った石炭調達ルートを活かした大型石炭火力発電所(神戸市に所在、2機で140万キロワット)は都市型発電所で電力ロスも少なく、既に神戸市内の電力供給になくてはならない存在となっています。

そして今回、これまでの電力事業のノウハウを活かし、さらなる電力事業拡大計画を発表しています。

栃木と神戸に新たに発電所を建設

新たに神戸製鋼が発表したのは、真岡(栃木県)1および2号機と神戸3および4号機の合計4機の発電所の建設計画です。

まずは真岡1、2号機に総額1,000億円を投じ、2019年後半に1号機を、そして2020年後半に2号機の運転を開始する計画となっています。さらに神戸3、4号機は2021年度以降の運転開始を計画しています。

既存の神戸1、2号機と合わせると、合計6機の発電所で発電規模約395万キロワットとなり、神戸製鋼は沖縄電力を超える発電容量を誇る企業となります。ちなみに沖縄電力(9511)の発電容量は約215万キロワットです(編集部注)。

【編集部注】>>沖縄電力の発電設備詳細へのリンク

既に収穫の時期を迎えている電力事業

電力事業を開始した当初は、鉄鋼会社がなぜ電力事業?と言われた神戸製鋼の電力事業ですが、2016年3月期に経常利益174億円を計上する等、既に収穫の時期を迎えています。

これまで培った電力事業のノウハウを用いてさらに投資を行い総発電量を増やすことで、神戸製鋼は新たなる成長を目指そうとしています。

神戸製鋼の株価は既に底入れか

神戸製鋼の株価は2015年まで下落トレンドが継続した後、2016年はレンジ相場が継続し、11月のトランプ相場を契機にレンジ相場の中での上昇を開始しています。

神戸製鋼の過去2年間の株価推移

現状のレンジ相場は下記の株価で高値と安値を形成しています。

  • 高値 1,300円(2016年12月12日)
  • 安値 780円(2016年2月12日)

2月27日の終値は1,071円となっており、高値1,300円まであと一歩の状態。1,300円付近は2016年4月も同水準を付けた後に株価が下落しており、神戸製鋼の株価にとって1,300円付近は大きな壁となっています。

神戸製鋼の過去1年間の株価推移

しかしながら、少なくともいったん底打ちをしており、今後の1,300円越えに期待を抱かせる状態とはなっています。そして1,300円を明確に上回ると、神戸製鋼の株価は長く続いた低迷から一歩抜け出すこととなります。

まとめ:電力事業の収益力強化と株価上昇への期待

新たに発表された電力事業の強化がなされれば、神戸製鋼は総発電量で沖縄電力を抜く発電事業者の立場に躍り出ます。鉄鋼会社の神戸製鋼が電力会社の色彩を強める姿は一見不思議にも見えますが、これまでの多角化経営の延長で電力事業は行われていますし、既に実績を有する事業でもあります。

神戸製鋼の株価は、昨年秋のトランプ相場に乗る形で一足先に最安値を脱した感もあります。鉄鋼事業および建機事業が苦戦する中、電力事業で収益力の底上げを図り、久しくなかった株価の上昇トレンド入りの姿を見ることができるかどうか、神戸製鋼の株価の今後に注目したいと思います。

LIMO編集部