脱サラ投資家が見た、トランプ政権誕生に沸く米国不動産市場

現地ルポ:二極化する不動産市況と業界人の「本音」

今、私は北米各地の不動産物件・プロジェクト視察を終えて帰国の途についています。訪問先は東海岸から西海岸までの6地域、スーツケースを片手に9泊10日、慌ただしい出張の道中でした。

そこで、今回は米国の不動産市場の現場で感じた不動産投資のチャンスとトランプ政権への期待を中心にお伝えしたいと思います。

なぜ脱サラして海外不動産で起業したのか

そもそも、サラリーマンだった私が、なぜ米国の不動産物件の視察をしているのか、初めに簡単に自己紹介をしたいと思います。

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私はもともと東京で勤め人をやりながら、オーストラリアと日本で不動産投資を同時並行で進めていました。そして2011年2月、海外不動産投資同好会「アジア太平洋大家の会」を設立。

というのは、オーストラリア以外でも海外で収益不動産を買いたい、そのためには各国不動産マーケットや投資戦略を学ぶ必要があり、やるなら1人で勉強するよりグループでやった方が楽しいという思いがあったからです。

アジア太平洋大家の会には、創設者である私の予想をはるかに超えるニーズがありました。発足1か月後、奇しくも東日本大震災が起こり、その数か月後から会員数が爆発的に増加し、一気に500人、1,000人を突破したのです。

激甚な震災を体験した多くの日本人が、日本だけに資産を置くのは不安だから海外の資産に投資したいと思いを持ち、その大きな流れの一部が、この勉強会の会員数激増という結果につながったのでしょう。

2013年2月、残念ながら私は勤め先のリストラにあい、44歳の中年失業者になりました。しかし、その頃にはアジア太平洋大家の会には約1.500人もの会員、つまり海外不動産投資を志す仲間たちがいて、世界10か国以上の不動産投資セミナー開催実績を積んでいました。

私はサラリーマンを続ける気はなくなり、自分の大好きな仲間たちと不動産の世界で生きていこうと思い立って、東京で不動産仲介会社「鈴木資産管理」を設立。つまり脱サラ起業したわけです。

独立自営になって4年目。起業当初は金策でつらい時期も経験しましたが、幸い出会いにも恵まれ、今のところ問題なく生活はできています。現在では世界中の不動産デベロッパーから直接収益物件を仕入れて、日本に紹介する仕事をしており、その流れの中で今回、アメリカ・カナダ出張をしてきたという次第です。

米国不動産市場の現状

さて、米国の不動産市場は2008年のリーマンショックで、いわゆる「バブル崩壊」を経験した後、現在は立ち直る途上にあります。

ただ、米国は広大な国ですから不動産市況も州や都市によって全く違い、回復度合いもバラバラ。ニューヨークやカリフォルニアといった主要都市は2011年頃には早くも急回復を始め、現在では多くの地域で不動産価格がリーマンショック前の水準を超えてしまった状態です。

一方、テキサス、アリゾナなど南部の州では、まだまだ相対的に価格が安く、今まさに急回復の途上。投資エリアとして私はそういう場所を狙っており、特に今回、テキサス州ダラス、フロリダ州ケープコーラルの2地域では大きな不動産投資チャンスを肌で感じました。

フロリダ州ケープコーラルの物件(筆者撮影)

ペンシルベニア州ヘイズルトンの物件

不動産価格が上昇する中、住宅ローンがデベロッパーの頭痛のタネに

米国各地で不動産業界関係者と話していて感じるのは、トランプ政権に対する期待の高さです。

米国では2007~08年にリーマンショックで不動産バブルが崩壊した後、数年間は国中に「差し押さえ・競売」の嵐が吹き荒れ、不動産価格が6割以上暴落する地域が続出。業界は倒産・人員削減が相次ぐ厳しい冬の時代を迎えました。

しかし、バブル崩壊後の日本と違い、人口が増え活力のある米国のこと、2011~12年頃からカリフォルニア州、ニューヨーク、ハワイ・オアフ島など、不動産市況の強い地域から価格上昇が始まりました。

そして、前述のように、2013年以降はシカゴ、シアトル、マイアミ、ラスベガスなど、価格が上昇する地域が次々と増え、今やその波がテキサス州などの南部地方都市まで波及しつつあります。しかし、一方では「価格水準がリーマンショック前の水準まで回復した場所」と「そうでない場所」とに二極化しているのも事実です。

リーマンショック前は全米どこでも不動産価格は年々上がるものでしたが、現状はそうなっていません。その主な理由は住宅ローンの難しさです。

リーマンショック後、オバマ政権下で不動産融資に対する諸規制が導入され、米国人家庭はマイホームを買う際、より多くの自己資金を要求されるようになりました。

ただ、米国人は概して貯蓄が苦手、十分な給与収入がある中流家庭でさえ自己資金不足でローンが組めず、賃貸暮らしを余儀なくされる状況があります。

この状況は、我々外国人投資家にとっては投資妙味になりますが(本来、家を買える財力のある人が賃借人になってくれる等)、物件を地元民にたくさん売りたい不動産デベロッパーにとっては頭の痛い問題です。

トランプ政権への期待の高さはどこからくるのか

その状況をトランプ政権が打開してくれるかもしれないという期待感が、今、米国各地の不動産業界にはあるようです。特にトランプ氏が融資規制を緩和することで、人々が不動産を買いやすくなり、市況が全米で上向くことを期待しているわけです。

中でも、フロリダの現場で聞いた業界人の声が印象的でした。

「これまでは経済音痴の学者が大統領をやってたけど、トランプ氏はビジネスマンだから、ビジネスに良い環境づくりに努力してくれると思う」

実際、米国を歩いてみると、トランプ大統領に対する人々の意見が日本で聞くニュース報道とはずいぶん異なると感じます。なぜヒラリー氏が負けて、泡沫候補といわれたトランプ氏が大統領になったのか。上記の発言に代表される業界人の本音を聞くと、その理由が何となく分かるような気がしました。

鈴木 学

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鈴木 学
  • 鈴木 学
  • アジア太平洋大家の会
  • 会長

大学卒業後、ITエンジニアとして世界で活躍し、現在は不動産専業。
日本、オーストラリア、タイ、アメリカ、イギリス、ドイツの6カ国で不動産を所有・運用中。2011年に海外不動産に特化した投資家コミュニティ「アジア太平洋大家の会」を立ち上げ、現在は2,300名の会員を擁する大所帯に成長。
業界紙コラムの執筆や海外不動産セミナー講師の依頼も多い。