中国では3月5日から今後1年の重要政策を話し合う全国人民代表大会(全人代)が始まります。全人代でのポイントを整理し、今後の中国経済のリスクを展望してみましょう。

2017年の成長目標は6.5%に設定か

全人代では大会初日に今年の成長目標を発表するのが恒例となっています。実質GDP成長率目標は2012年から2014年まで7.5%でしたが、2015年に7.0%へ引き下げられると、2016年は6.5~7.0%と初めてレンジでの設定となりました。

全人代での目標は実際のところは“ノルマ”であり、目標を下回ることは許されません。しかし、2015年は6.9%とノルマを達成できなかったことから、2016年は幅のある設定とし、柔軟性を持たせた模様です。

2016年の成長率は6.7%と目標をクリアしましたが、成長鈍化が規定路線となっていることを踏まえて、2017年の目標は6.5%に設定される見通しとなっています。

高過ぎる目標による過剰債務の膨張を懸念

2015年の6.9%、2016年の6.7%を踏まえて、2017年の目標を6.5%に置くことはしごく妥当に見えますが、実は非常に危うい数字の可能性があります。

中国政府には2020年までに2010年比でGDPを倍増させるという目標があり、達成するためには2016年からの5年間、平均6.5%の成長が必要となります。6.5%は既存の計画に基づいて逆算された数字と一致しており、実力が適正に評価されているのかどうかが疑問視されています。

国際通貨基金(IMF)は1月の世界経済見通しで、2017年の中国のGDP成長率を6.5%と予想し、昨年10月の6.3%から0.2%ポイント引き上げています。IMFは上方修正の理由として景気刺激策の継続を挙げており、既に過剰な債務がさらに膨張することに警告を発しています。

現在の中国の潜在成長率は6.0%台前半にあると見られており、今後は人口動態の変化にともなって持続的に低下することが見込まれています。IMFは2018年の成長率を6.0%と予想しています。

人為的に高められた成長は経済構造に歪みをもたらす可能性があります。中国は実力以上に高い成長率を達成してきた代償として膨大な過剰債務を抱え込んでしまったのかもしれません。

こうした経緯を踏まえると、2017年の目標を6.5%に置き、仮に達成した場合、過剰債務はさらに膨らむ恐れがありそうです。

不動産市場のジレンマ

全人代では新たな不動産規制が導入されるのかどうかも注目されます。

中国では景気浮揚策として、2014年から2016年にかけて金融緩和や住宅購入時の頭金比率引き下げなどを通じて住宅市場を支援してきました。しかし、住宅価格が高騰し、バブル懸念が強まったことから、昨年後半から頭金比率の引き上げなどを含む住宅販売の規制に乗り出しており、その影響で最近の住宅市場では過熱感が薄らいでいます。

とはいえ、住宅価格は総じて高止まりの状態にあり、一部ではまだ上昇が続いています。住宅価格の高騰に対する国民の不満が強まっていることから、今秋の党大会を見据えて、新たな不動産規制が導入されるのではないかと見られています。

ただし、住宅価格が低下すると金融機関の不良債権が増える可能性があることから、中国政府は住宅価格が上昇すると国民の不満が強まり、低下すると不良債権への懸念が強まるというジレンマを抱えている模様です。

人民元と理財商品の不都合な関係

2017年に入り人民元の下落が止まっていますが、背景には引き締め的な金融政策があります。たとえば、昨年10月に2.6%台だった中国10年債利回りが2月には3.5%付近まで上昇しており、米中金利差の拡大が人民元安の抑制に寄与している模様です。

しかし、金利の上昇は景気を減速させ、不動産市場を過度に弱め、企業のデフォルトリスクを高める恐れがあります。

こうした中でも、特に警戒されているのが“理財商品”のデフォルトです。理財商品とは投資信託のような商品で、高利回り商品として人気がありますが、その分リスクの高い資産を保有していることでも知られています。

理財商品を通じた融資は簿外融資として扱われることから金融機関のバランスシートには乗りません。この特性から、理財商品は不良債権の“隠れみの”と指摘されることもあります。また、理財商品は地方政府による不動産開発投資にも回っていることから、景気の減速や不動産の低迷が懸念されるとデフォルトへの警戒感が高まります。

中国政府は人民元安を阻止するために、市場金利の引き上げや資本規制で資本流出を阻止する構えを見せていますが、こうした措置は景気にマイナスであり、企業のデフォルトリスクを高めるとともに、金利に敏感な住宅市場に打撃を与える恐れもありますので、理財商品のデフォルト懸念を高めることになりかねません。

理財商品に対する不透明感が強まっており、中国政府は理財商品への規制強化に動いていますが、こうした動きは金融市場の安定に寄与する一方で、金融機関の収益を圧迫する恐れがあります。

成長目標と規制の動きに注意

中国の企業融資残高の対GDP比率が160%を超え、既に日本のバブル当時を大きく上回っていることもあり、過剰債務問題として警戒されています。高過ぎる成長目標が過剰債務を生み出している可能性があり、高い目標設定は警戒すべきかもしれません。

一方、住宅価格の高騰で不動産市場への規制の必要性が高まっています。また、資本の流出を阻止するために、資本規制の強化や引き締め的な金融スタンスを取らざるを得ない状況にもあります。規制強化や市場金利の上昇は、景気を減速させるとともに企業のデフォルトリスクも高めます。

以上から、全人代では成長目標の数字、不動産や理財商品への規制の動き、資本流出への対応といったところが注目されそうです。

LIMO編集部