ヤマトHD、荷物総量規制検討で株価上昇。継続上昇のカギは何か?

現場の疲弊に市場は”ノー”

ヤマト運輸(正式にはヤマトHDが上場会社)の物流現場が、ネット通販市場拡大で疲弊しているとの報道が昨年より聞かれるようになりました。その中で、ヤマト運輸が今年の春闘で荷物の総量規制導入を検討と報じられると大きな話題となり、意外にも株価は上昇。

「総量規制=売上の減少」を春闘のテーマとする極めて異例の事態ですが、株式市場は売上は伸びても利益に繋がらず、さらには現場が疲弊するだけのヤマト運輸の現状に”ノー”を突きつけた形となりました。

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総量規制他の現場改善策が功を奏しヤマトHD株価は上昇していくのか、それとも絶対的な売上が下がることで利益水準まで減少して株価の上昇は一時のものにとどまるのか。今後のヤマト運輸の展開を考えます。

業績の下方修正そして荷物の総量規制導入検討をするヤマト運輸

ヤマトHD(9064)は1月30日に業績予想の下方修正を発表。ネット通販市場拡大を背景に、アマゾンの配送も手がける同社の業績拡大期待が大きかった株式市場では驚きを持って受け止められ、翌日株価は大きく値下がりしました。

下方修正は、売上=荷物の取扱量が増えても現場が追い付かず委託業者に発送を依頼しコストが増加するという皮肉な状況が背景です。

そのような状況下、ヤマト運輸が荷物の総量規制導入を検討へと報じられることに。内容としては春闘(春季労使交渉)で、経営側と労働側(現場)が荷物の総量規制を検討するというもの。売上を減らす内容を春闘の場で議論するというのは極めて異例な事態と言えます。

株式市場は好感した総量規制報道

相次ぐヤマト運輸の総量規制報道に対し、意外にも株式市場は前向きな評価を与えます。各報道の後、ヤマトHDの株価はそれまでの下方修正後の状況が一転し、窓を開けて上昇を開始しました。

株式市場は売上は伸びても利益が伴わず、現場が疲弊している現状の改善を期待した形となりました。

ヤマトHDの直近の業績推移

それでは、ヤマトHDの直近の業績推移を確認します。

2013年3月期 売上高1,282,373百万円、経常利益67,991百万円
2014年3月期 売上高1,374,610百万円、経常利益64,664百万円
2015年3月期 売上高1,396,708百万円、経常利益70,889百万円
2016年3月期 売上高1,416,413百万円、経常利益69,426百万円
2017年3月期予想 売上高1,460,000百万円、経常利益58,500百万円

ヤマトHDは2013年3月期以降を見ても順調に売上高を伸ばしています。しかしながら、経常利益は2015年3月期をピークに2016年3月期は若干ながらも減益。2017年3月期も減益予想となっています。1月30日には2017年3月期予想を下方修正(経常利益65,000百万円→58,500百万円)しています。売上増加に利益が追い付いていない状況が明らかです。

ヤマトHDの直近の株価推移

直近のヤマトHDの株価は2016年7月の高値と、2016年11月に付けた安値を意識する、レンジ相場を形成しています。

・高値 2,661.5円(2016年7月12日)
・安値 2,171.5円(2016年11月4日)

ヤマトHDの過去1年間の株価推移

1月の業績下方修正を受け安値に向けて動き出していたヤマトHDの株価ですが、2月に総量規制の検討が報じられると一転、出来高を伴いながら上昇を開始しています。

3月6日終値は2,441円となっており、レンジ相場の上限に近いところまで株価は上昇しています。

難しい舵取りを余儀なくされるヤマト運輸

総量規制の報道により株価は上昇するという、現場の疲弊を見抜いていた感のある株式市場ですが、今後ヤマトHDの株価がレンジ相場を上方ブレイクし、さらなる上昇を果たすためには課題が存在しています。

総量規制導入で目先の現場の疲労度は回復しても、ピークに合わせて人員の配置を行っており、売上が減少すればそのまま利益の減少に繋がるリスクがあります。

ヤマト運輸の現場の疲弊は大きな問題ですが、総量規制導入後にどのような展望を描くのか、株式市場はその部分に注目しているのではないでしょうか。

まとめ

「売上を減少させる方策=荷物の総量規制」の導入検討でそれまでの株価下落から一転、株価上昇に転じたヤマトHD株価。総量規制の導入による物流現場の疲労回復の後、ヤマト運輸はどのような事業展開を行っていくこととなるのでしょうか。

ヤマトHDのさらなる株価上昇の鍵は、拡大するネット通販市場と人手不足で疲弊した物流現場の2者がどのように折り合い、そして利益を計上していくのかという点が握っているのではないかと考えられます。

投信1編集部

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投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。