FOMCの利上げ発表を前に、世界の株式市場にはやや膠着感が見られます。その理由として大きいのは、米国の「利上げ後」に不透明感が残るためではないでしょうか。

「休むも相場」という投資格言があるように、先行きがはっきりしない時には無理に動く必要はありません。むしろ、以下の記事などを読みながら、じっくりと利上げ後の欧州政治リスク、中国経済リスク、世界の企業業績見通しの3つについて考えることをおすすめいたします。

市場の関心は既に「利上げ後」に向かっている

米国の注目経済イベントとして、今週は雇用統計、来週は米連邦公開市場委員会(FOMC)が予定されています。既に3月3日に行われた米連邦準備制度理事会(FRB)で、イエレン議長がシカゴで行った講演がかなり踏み込んだ内容であったため、3月の利上げはほぼ確定的というのが現時点での市場コンセンサスとなっています。

ただし、気になるのは利上げがコンセンサスであるにもかかわらず円安があまり進まず、日経平均もやや軟調に推移していることです。

もちろん、利上げへの警戒感から米国株式市場が一服してきたためという解釈も可能です。一方で、以下の記事で指摘されているように、欧州の政治リスク(オランダ、フランスでの選挙)や、米国の財政政策の行方に不透明感が漂うためイエレン議長が利上げを急いでいるという可能性も考えられ、そのことが日経平均の膠着感に影響していることも考えられます。

いずれにせよ、3月14~15日に開催されるFOMCは重要ではあるものの、その先にも注視すべき重要イベントが控えていることには留意したいと思います。

出所:米3月利上げ:イエレン議長講演で明確でなかったことは何か?(投信1)

潜在成長率を上回るGDP目標を掲げる中国経済には危うさが残る

このところ、あまり相場のかく乱要因とはなっていない中国についても改めておさらいをしておきましょう。

3月5日から開催された全国人民代表大会(全人代)では、2017年の国内総生産(GDP)の成長率目標が「6.5%前後」とされました。2014年の目標値が7.5%前後であったのに対し、2015年が7%前後、2016年が6.5~7%であったため、目標値が今年で3年連続引き下げられたことになります。

この目標値自体は概ね市場コンセンサス通りであったと見られますが、以下の記事で指摘されているように、潜在成長率が6%に留まるなかで、人為的に高められた成長は経済構造に歪みをもたらしていること、具体的には大都市の不動産バブルや金融リスクの高まりなどの副作用には引き続き注意が必要であると考えられます。

出所:【中国経済見通し】成長目標6.5%に潜むワナ-全人代5日開幕(投信1)

「企業業績」に着目すれば強気相場は終わっていないようだ

上述の2つの記事から、3月に入りやや膠着感が見られる背景が理解できます。では、この調整局面は「買い時」と捉えるべきか、あるいは「当面はお休み」と判断すべきかが悩ましいところです。そうしたなかで、以下の記事は次の一手を考えるうえでのヒントを与えてくれます。

まず、この記事ではMSCIワールドインデックス(MSCI World Index)ベースのアナリスト予想平均のEPS(1株当り利益)が、2015年と16年の低迷期を経て、2017年は大幅増益に転じると述べられています。また、水準的には金融危機直前の2007年を上回り、その後、2018年、2019年も増益が続く見込みとされています。

こうした強気予想の背景には、エネルギー、素材市況の回復、資本財(設備投資関連)の需要拡大、半導体を中心としたIT関連業界の好調、長短金利差の拡大を受けた金融業界の収益持ち直し期待など複数のポジティブ要因があり、今後の米国の経済対策次第ではさらなる上振れも期待されることになります。

今日、明日という短期間での株価の予測は困難ですが、中期的には株価と業績には高い連動性があるという経験則に基づけば、この記事で示唆されている業績見通しは、これからの相場を考えるうえで非常に重要な指摘です。

長期的な資産形成を目指す個人投資家にとっては、相場を休むことも大切ですが、休み過ぎないことも大切なのです。

出所:世界株高は続くか?割安市場の選別法は?(楽天証券)

LIMO編集部