新築マンションを購入するときは、まだ建築前のマンションを購入するときと、既に建築されたマンションを購入するときの2種類があります。この2通りの購入方法は、それぞれ購入の流れや期間、また注意点が異なります。今回は、建築前のマンションと建築済みのマンションの2つをピックアップして、購入時の流れや注意点について解説していきます。

建築前新築マンションの購入

まず、マンションがまだ建築される前の「マンション購入」についてです。どちらかというと、マンションは建築前に売却される方が多いです。その理由は不動産会社のキャッシュフローにあります。不動産会社がマンションを建築するときは、土地を購入し建物を建ててから売却をします。

その際に、土地の購入費や建物の建築費などの一部は、マンションの建物完成前に支払っておかなければいけません。このような支払い費用に、マンションの引渡費用を充てることが出来れば、不動産会社はキャッシュフロー的に楽になるのです。つまり、マンションの建築前に販売を始めておけば、引渡時には資金回収ができるので、その資金を支払に充てることが出来るのです。そのため、不動産会社からすると建築前にマンションの販売を始めたいということです。

建築前の新築マンション購入の流れ

新築マンションを購入する時の流れは以下のようになります。マンションを購入する人の多くは住宅ローンを組みますので、住宅ローンを組む前提で解説しています。

  1. モデルルームへ見学にいく
  2. モデルルームや現地を見学して部屋を決める
  3. 部屋を決めたら住宅ローンの仮審査を行う
  4. 仮審査に承諾したら申込を行う
  5. 申込から概ね1週間以内に売買契約を締結
  6. 銀行への本申込&金銭消費貸借契約
  7. 建物完成後、内覧会をして建物をチェックする
  8. 内覧会後に補修作業して問題なければ引渡

モデルルームへ来訪

大抵の新築マンションはホームページを開設しています。もしくは、チラシなどが投函されますので、直接モデルルームに連絡をして来訪予約を入れます。人気物件は来訪予約が入りにくいので、早めに予約を入れておきましょう。

モデルルームと現地の見学

モデルルームでは1~2部屋ほど、実際の間取りを再現した部屋を用意しています。その部屋で室内の雰囲気をつかみ、実際に現地へ行きます。現地のマンションはまだ完成していないので、マンション内に入る事は基本できません。そのため、現地に行くのは外観と周辺環境のチェックが主な目的です。

住宅ローンの仮審査

住宅ローンの仮審査は「個人情報(運転免許証など)」や「年収確認(源泉徴収票など)」などが必要になります。そのため、モデルルームへ行く前に書類を用意しておけば、来訪した初日に仮審査をすることも可能です。スムーズに購入したい人は、常に必要書類を持っておきましょう。

申込

仮審査の結果は、早ければ1営業日、遅くても5営業日以内には出ます。その仮審査に承諾すれば、晴れて申込をする権利を得ることができるのです。そもそも申込とは、契約前に購入の意志表示を行うことです。契約前の最終意思確認をして申込をすることによって、その部屋を抑えることができます。つまり、不動産会社からすると、申込を受けた時点でその部屋に他の人は案内しません。そのため、資金確定と一緒に「購入意思の確認」も重点的に行います。

売買契約

申込から概ね1週間以内に売買契約を締結します。申込から売買契約までに購入者がやっておくことは、手付金(詳細は後述します)の振り込みです。また、不動産会社側は売買契約書の作成をしておきます。売買契約当日は、宅建士から重要事項説明があります。重要事項説明は、20ページ~30ページ程度と非常にボリュームがあります。その名の通りマンションに関連する「重要なこと」が記載されていますので、事前に一度目を通しておくのがベストです。売買契約書以外にも、マンション管理に関する書類であったり住宅ローン関係の書類だったりと、署名・捺印する書類は多くあります。そのため、売買契約には2~3時間かかると思っておきましょう。

銀行への本申込&金銭消費貸借契約

売買契約が終了すれば、内覧会・引渡までに住宅ローン関係の手続きをする必要があります。具体的な手続きは「本申込」と「金銭消費貸借契約」です。本申込とは、仮審査よりも本格的な審査をすることです。本申込の際は、「住民票」や「課税証明書」など役所で取得する書類が必要です。

これらの書類は取得まで時間がかかるため、前もって金融機関に必要書類をヒアリングしておきましょう。ヒアリングをして必要書類を集めておけば本審査はスムーズに進みます。本審査が終了すれば金融機関との住宅ローン本契約である「金銭消費貸借契約」を締結します。金銭消費貸借契約は2時間ほどかかる場合があるので、スケジューリングは事前に行っておくと良いです。

内覧会

売買契約を結んだ後には、建物完成後の「内覧会」があります。内覧会は実際に自分の部屋を見て、傷や汚れや不具合などがあれば指摘する会になります。人によっては100か所を超える数の指摘をする人もいますが、入居して1週間もすれば傷は無数につきます。そのため、そこまで神経質にチェックする必要はありません。

不動産会社にもよりますが、内覧会の後1~2週間後に「確認会」を行います。確認会は内覧会時の指摘がきちんと直っているかどうかの確認をします。確認会でも補修し切れていなければ、「再確認会」を行うか、引渡までに時間がなければ「引渡時に確認」となります。

引渡

内覧会が終わり、引渡日が来たらマンションの引渡を行います。引渡日までに残代金の入金が必要です。たとえば、マンションの販売価格が3,000万円で諸費用が100万円かかるとします。その時に2,700万円は住宅ローンを組み、残りの400万円は自己資金から捻出するとします。

このような資金計画のときには、引渡までに不動産会社から400万円の振り込み依頼書が届くのです。そして、所定の金額を引渡日までに支払うという流れになります。引渡自体は、鍵を受け取り必要書類の署名・捺印をするだけなので、所要時間は20分程度です。

キャンセルについて

新築マンションを購入する流れのなかで「キャンセル」になるタイミングは、「申込」と「契約」のタイミングです。購入者側からすると、申込時にはリスクはありませんが、契約時にはリスクがあるので注意が必要です。

申込キャンセルリスク

部屋先ほどいったように購入者側は、申込キャンセルのリスクはありません。しかし、購入者側からすると「部屋を抑えなければいけない」というリスクがあります。部屋を抑えるということは、その部屋をほかの人が希望しても案内できないということです。そのため、申込キャンセルをされてしまうと、またイチから購入検討者を探さなくていけないというデメリットがあります。不動産会社側にはこのようなリスクがあるため、購入者側もしっかり意思確定をした後に申込をしましょう。

契約キャンセルリスク

契約キャンセルリスクは「手付金」が関わってきます。そもそも手付金とは、買主が売主に預け入れるお金になります。たとえば、3,000万円のマンション(諸費用100万円)を購入するとして、手付金を300万円支払うとします。その手付金は、そのまま諸費用や自己資金に充当され、余剰があったときは買主に返還されます。

宅地建物取引業者が新築不動産を分譲しているときは、手付金の上限は20%になります。その手付金が買主・売主ともに、契約キャンセルをすると「違約金」になるのです。つまり、買主は手付金を没収され、売主は手付金を返還し、かつ手付金と同額を買主に違約金として支払います。仮に、3,000万円の新築マンション購入時に上限の20%である600万円を手付金で支払っていたとします。その時に、買主都合でキャンセルをすると、600万円は違約金として没収されてしまうということです。

購入方法

新築マンションは中古マンションとは違い、複数の部屋を分譲するため、購入方法も中古マンションとは異なります。購入方法としては「先着順」と「登録」があり、それぞれ購入時のルールが異なるので注意しましょう。

先着順

先着順とは、その名の通り「早い者勝ち」という住戸です。そのため、基本的には「資金確定」と「意志確定」ができれば、モデルルーム来訪初日に申込をできる場合もあります。この申込ルールは不動産会社によって異なるので確認しておきましょう。

注意しなければいけないのは、検討していた住戸が突然なくなる可能性があるということです。特に人気の部屋は早い者勝ちなので、住宅ローンの審査中にほかの人が申込を入れることも少なくありません。そのため、検討をしている部屋が先着順であれば、住宅ローン審査は早めにしておくことをお勧めします。

登録

登録とは先着順とは違い、一定の登録期間を定めて購入する方法です。登録期間中に複数の登録があった場合には、登録期間終了後に抽選を行います。たとえば、5/1~5/14の2週間を登録期間とし、5/15を抽選日に設定していたとします。そのときには、5/1~5/14の登録期間中に資金確定と意志確定が出来た方のみ登録ができます。ただ、先着順と同様、ルールは不動産会社によるのでしっかり確認しておきましょう。そして、登録者が複数いる場合には5/15に抽選をして当確した人が、申込の権利を得るという流れです。

注意点

建物完成前の新築マンションを購入するときの注意点は以下3点です。

  1. モデルルームは「良い部屋」を用意している
  2. 図面だけでは室内がイメージしにくい
  3. 住宅ローン審査の非承認には注意

モデルルーム

不動産会社がモデルルームとして用意している部屋は、そのマンションの中でも見栄えの良い部屋になります。たとえば、部屋が整形であったり、収納が多かったりと目を惹く部屋であることが多いです。また、モデルルームにしている部屋は、様々なオプションを設置しています。たとえば、壁紙をエコカラットに変えていたり、フローリングをタイルに変えていたりします。そのため、実際の部屋よりも豪華に見えるので、実際の仕様・設備とのギャップは意識して見学しましょう。

図面だけではイメージしにくい

建物完成前の新築マンションは、図面だけで室内を判断するので実際の室内をイメージしにくいです。とくに「天井高」と「梁」には注意しましょう。先ほどいったように、モデルルームの部屋は見栄えの良い部屋を選んでいます。そのため、下がり天井や梁などが小さい部屋を選んでいることが多いです。

しかし、マンションは構造上の問題で、どうしても下がり天井や梁が出ることが多いです。下がり天用や梁があると圧迫感があり、部屋自体が狭く感じるというデメリットがあります。そのため、自分の検討している部屋の梁や下がり天井の「高さ」は事前に確認しておきましょう。

図面には梁や下がり天井の「位置」は記載していますが、「高さ」は建築途中で変わる事もあり記載していないことが多いです。ただ、モデルルームの営業担当者は正確な図面を持っているので、計画段階の高さは知っています。必ずヒアリングをしましょう。

住宅ローンの注意点

先ほどいったように、住宅ローンは仮審査をしてから本審査をします。仮審査と本審査では審査内容自体は同じですので、仮審査に通っていれば通常は本審査も通ります。しかし、仮審査から本審査までは期間が空くので、その期間でプロフィールが変わってしまえば本審査で否決になる可能性もあります。たとえば、他の借入を起こしたり、転職してしまったりしたときです。このような「プロフィールの変化」により本審査が否決になると、当然住宅ローンが組めないので売買契約は解除されてしまいます。

また、このようなケースは購入者の「責めに帰すべき事項」になりますので、買主の自己都合によりキャンセルとなってしまうのです。つまり、買主の「違約」となり、手付金は違約金として没収されます。そのため、住宅ローンの仮審査から本審査までの期間には、プロフィールが変わらないように十分注意しましょう。

建築済みマンションの購入・流れ

つづいて、建築済みマンションを購入するときの流れや注意点について解説します。マンションは建築済みなので、基本的には実際に完成した後の部屋をみて購入するかどうかを判断します。

購入の流れ、キャンセル、購入方法について

建築済みの新築マンションを購入する流れやキャンセルの定義、そして購入方法などは建築前の新築マンション購入と大きく変わりません。変わるとしたら、以下のように購入の流れが少々変わるくらいです。

  1. モデルルームか現地へ直接来訪
  2. 実際の部屋を見学して検討する部屋を決める
  3. 部屋を決めたら住宅ローンの仮審査を行う
  4. 仮審査に承諾したら申込を行う
  5. 契約前に動作確認を行う
  6. 申込から概ね1週間以内に売買契約を締結
  7. 銀行への本申込&金銭消費貸借契約
  8. 内覧会後に補修作業して問題なければ引渡

建築前の新築マンション購入と異なる点は、内覧会がない代わりに「動作確認」を行うということです。動作確認は、その部屋が居住するのに問題ない部屋かどうかを確認する作業です。たとえば、窓や玄関ドアの開閉に問題がないか、大きな傷や損傷がないかを一つ一つ確認していきます。

注意点

建築済みの新築マンション購入は、実際に実物を見る安心感があります。しかし、一方で以下のように、実物だからこそ注意しなければいけない部分もあるのです。

  1. 基本は現況有姿
  2. 広告物に注意
  3. 共用部分のチェック
  4. 管理費や修繕積立金について
  5. 駐輪場や駐車場のルール
  6. 養生部分も確認

基本は現況有姿

建築済みのマンションを売買するときは、基本的には現況有姿となります。現況有姿とは、「実際に見ているモノが商品であり、図面集やパンフレットなどは関係ない」という意味です。また、軽微な傷や汚れに関しても、そのまま「現況」で引渡を行います。

極端な話、引渡後に「クロゼットの床に小さな穴があった」や「クロスが少し破れていた」などが発覚しても、現況有姿である以上、不動産会社は基本的に補修など行いません。さすがに機能的な障害がある場合は補修しますが、原則補修対応はしないと思っておきましょう。そのため、先ほどいった「動作確認」の際に、室内は細かくチェックしておくことが重要です。仮に、傷や汚れがあっても対応するかは不動産会社次第ですが、引渡の前であれば対応してくれる可能性があります。

広告物

建築済みマンションを購入するときは、広告物による汚れや破損に気を付けなければいけません。不動産会社としては、マンションが建築済みの場合、「マンション」自体が広告塔になります。そのため、マンションのバルコニー部分に垂れ幕を付けたり、外壁部分に広告シートを貼付したりします。外観部分はまだ良いですが、自分のバルコニーに垂れ幕がかかっているときは注意しましょう。垂れ幕はバルコニー手すりに括りつけることが多いので、バルコニーの外壁部分が汚れている可能性があります。

また、大きな垂れ幕になると重量も重くなるので、バルコニー手すりが破損している場合もあります。そのため、購入前の動作確認では、垂れ幕に隠れている部分も必ず確認しましょう。そして、不動産会社の営業担当者と、汚れや破損があった場合に補修する旨の話し合いをしておくことも重要です。不動産会社にもよりますが、補修する旨は「書面」で残しておいた方が良いです。先ほどいったように、建築済みマンションの購入は、基本「現況有姿」という前提があるからです。

共用部分のチェック

マンションが建築済みというメリットを活かし、共用部分も入念にチェックしましょう。特に、「駐車場」や「駐輪場」「ゴミ置き場」は重要で、マンションのほかの部屋に入居者がいるなら尚更重要になります。駐車場、駐輪場については「使い方」と「使いやすさ」を確認しておきましょう。駐車場の駐車の仕方や、駐輪場での駐輪の仕方は、入居者のモラルが出ます。自分のエリア以外にはみ出していたり、使い方が悪かったりすれば、マンション全体の使い方に影響します。それは、ゴミ置き場の使い方も同じことです。

また、駐輪場と駐車場は「使いやすいか」も確認しておきましょう。特に駐輪場であればラック式、駐車場であれば機械式駐車場であれば、使いやすさに差が出ます。駐輪場がラック式の場合、マンションによっては隣との距離が近すぎて出し入れしにくい場合があります。

また、機械式駐車場も機械メーカーによって、使いやすさに差があるのです。たとえば、鍵をずっと回し続けなければ作動しないメーカーや、速度が遅く車を出すまで数分時間がかかるメーカーがあります。せっかく建築済みのマンションを検討しているので、実際に動作確認できるメリットを最大限活かしましょう。

管理費や修繕積立金について

建築済みのマンションの場合には、管理費や修繕積立金の扱いがマンションによって異なります。たとえば、3月1日に総戸数50戸のマンションの引渡が行われたとします。その引渡日以降、そのマンションの長期修繕計画がスタートして、マンションの管理自体もスタートしているのです。

長期修繕計画は、総戸数50戸の所有者から「修繕積立金」を徴収することで成立する計画です。つまり、マンションが建築済みなのに部屋が空いていると、その空いている部屋分の修繕積立金が徴収できないということになります。また、管理費も同様に、空いている部屋分の管理費は支払われていないということになります。

この管理費と修繕積立金は不動産会社が立て替えて支払うことが多いですが、売買契約締結後にどうなるかは必ず確認しておきましょう。場合によっては、不動産会社が建て替えた分の費用が、諸費用として請求される場合もあるからです。仮に、諸費用として請求されれば、場合によっては十万円単位の高額な費用になります。

駐輪場や駐車場のルール

駐輪場や駐車場のルールもマンションによって異なるので、必ず確認しておきましょう。建物建築前の売却では、「駐車場や駐輪場は引渡前に一斉抽選を行う」となっている場合が多いです。しかし、マンションが建築済みになると、先着順になったり、時期を分けて抽選したりする場合があります。特に、駐車場や駐輪場が必須条件になっていて、その区画が先着順になっている場合は注意しましょう。注意するべき点は「いつの時点で決まるのか」という点と「区画決めはどうするのか」という点です。

つまり、自分が希望する前に全て借りられてしまうリスクはないかという点と、区画は選ぶことができるのかという点を確認するということです。申込時に決められるのであれば良いですが、契約時に決定となると、契約当日に「駐車場は埋まってしまいました」という事態になり兼ねません。

養生部分も確認

建築済みマンションを購入する場合には、不動産会社は傷が付かないようにマンションを養生しています。特に、エントランスの部分やエレベータ部分、外部廊下などは養生していることが多いです。その養生部分もしっかり確認しておきましょう。思っていたデザインと異なっていたり、パンフレットと変更していたりする部分があるかもしれません。実物ゆえの「現況有姿」という大前提があるので、良く形状やデザイン、色はチェックしておくべきです。

まとめ

このように、マンションが建築前か建築済みかで、購入時の流れや注意点が異なります。特に、「買いたかった部屋がなくなってしまった」や「引渡後に不具合がある」などの事態は避けましょう。それらをリスクヘッジする方法は、上述したようなそれぞれの注意点を知っておくことです。

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