どんなに優れた技術を持つベンチャー企業だとしても、製品化や販売網の構築に時間がかかり、すぐにキャッシュにつながらないということがあります。このような場合、従来の創業融資制度では、すぐに返済が始まるため、審査を通すのが難しいという事情がありました。

そんなベンチャー企業の救世主ともいえる融資制度があります。日本政策金融公庫の「資本性ローン」です。数字だけではなく、技術面などを審査で重視し、返済もかなり後にできるという融資制度です。

優れた技術を持つベンチャー企業を積極的に後押ししたいという国の意思が反映し、平成29年度予算案で400億円も計上しています。今回は、この資本性ローンについて解説いたします。

1. 資本性ローンの特長

通常の融資は「借入金」ですので、貸借対照表では負債の部に該当します。今後の爆発的な成長を目指し、次々と資金調達を行いたい意思のある企業の場合、自己資本比率を意識しなければならず、借入金の増加は気になるところです。

一方で、自己資本としての調達をしようとすると、株式を発行し、譲り受けた株主に議決権を渡すことになり、会社の意思決定に影響を与えることになります。

資本性ローンは、この両者の問題を一挙に解決できる融資制度です。会計上は負債でありながら、融資審査では自己資本とみなされる融資となっています。このため、自己資本比率を高めることができます。さらに他者に議決権を与えることなく資金調達が行うことが可能です。

2. 融資限度額が大きい

通常の創業融資制度では、1,000万円~3,000万円ほどが限度額という制度がほとんどですが、資本性ローンの場合、4,000万円が限度額と大きな枠が設定されています。資金ニーズが大きく、融資での資金調達をあきらめていた企業にもチャンスがあるといえます。

3. 元本の返済は最後

資本性ローンは元本の返済が契約期間末に一括返済となります。それまで返済はありません。融資期間中は、元本返済を気にしなくてもよいため、資金繰り面で余裕が生まれます。

4. 金利は業績連動

金利は業績に合わせて設定されます。利益が出るほど金利が増え、利益が少ないほど金利が減るというユニークな設定になっています。利益に準じて行う配当金と同じイメージです。なお、金利は毎月支払います。

5. 繰り上げ返済はできない

期限一括返済のため、繰り上げ返済はできません。なるべく早く返済したいと考えている方には適しません。

6. 新規性や成長性が必要

特殊な融資制度のため、普通の企業では審査を突破することは難しいです。特許を取得している、または取得できるくらいの先進的な技術であり、ビジネスモデルでなければなりません。また、将来の成長が見込める事業である必要があります。

7. 外部機関の評価も重要

ベンチャーキャピタルから投資や融資を受けていたり、ものづくり補助金の採択を受けていたりなど、外部機関がそのビジネスモデルを評価していると、融資審査上も評価が上がります。

まとめ

いかがでしたか? スタートアップ企業でもほとんど知られていないですが、知る人ぞ知る素晴らしい融資制度だといえます。技術系のベンチャーで起業する場合、選択肢の1つとして加えてみてください。

中野 裕哲