新アプリ「ELK」の発表会を都内で開催

2017年3月10日、フィンテック系ベンチャーのウォルト株式会社は、個人間送金アプリ「ELK(エルク)」に関する発表会を東京・大手町にあるFINOLABで開催しました。

同社は「お金をよりシンプルに」というミッションを掲げ、21世紀らしい方法でお金を扱えるような社会を目指して活動しており、すでに日本で初めてビットコインをプリペイドカードと交換するなどのサービスを開始しています。

また、2017年3月3日に開催された国内最大級のフィンテックピッチコンテスト「FIBC2017」では事業内容などが評価され、ソニーフィナンシャルホールディングス賞を受賞しています。

ちなみに、創業者・CEOの山内奏人氏は2001年生まれの16歳という年齢ですが、国際的なプログラミングコンテストで最優秀賞を受賞するなどの実績を持つ非常に優秀なエンジニアであり、ベンチャー企業でビジネス面での経験もある人物です。

また、代表取締役・COOの矢部康太氏も21歳と若いですが、株式投資型クラウドファンディング立ち上げのサポート経験などから、フィンテックやビットコインに関して豊富な知見を持つ事業家です。

なお、同社の創業経緯などについて詳しく知りたい方は、こちらの記事『【価値の移動を円滑に行える「WALT」で、お金のハブを作り上げる】』をご参照ください。

ELKは「誰でも3秒で送金できる個人間送金アプリ」

では、今回発表された新アプリ「ELK」について簡単に紹介したいと思います。「無料で瞬時にかんたんに」をテーマに開発されている通り、使い方は極めてシンプルです。

個人ユーザーは、スマホ(現状ではiOS にのみ対応、Android は現在リリースに向けて開発中)にアプリをダウンロードし、本人確認・年齢確認なしに登録をするだけでお店での支払いや個人間の送金をスムーズに行うことが可能になります。

ELKアプリへの入金はクレジットカード(VISA/MasterCard)を使って行います。ただし、個人ユーザーはELKにチャージされたお金を現金化することはできず、個人間のやりとりや登録された店舗で使い切ることが前提とされています。

一方、ELKを導入する店舗もカード読み取り装置などのハードを新たに導入することなく、スマホだけで決済機能を持つことが可能となります。というのは、来店客には紙に印刷したQRコードをスマホで読み取ってもらうだけで済む仕組みだからです。加盟店手数料は1%かかりますが、カード会社の手数料に比べ約3分の1と割安です。

このように、簡単かつ迅速に使い始めることができるため、たとえばコミックマーケットや大学の学園祭での出店、フリーマーケットなど短期間でのイベントでは非常に使い勝手のよい決済サービスであると考えられます。また、今後、コワーキングスペースや個人経営の飲食店などを中心に加盟店を広げていく計画です。

なお、現状では残高有効期限は6か月以内とされていますが、今後は関東財務局から「第三者型前払式支払手段」としての認可を受けることで、有効期限を延ばしていく考えです。

ウォルト社COOの矢部康太氏

今後の注目点

実は、この個人間金融あるいはモバイルP2P決済は、アメリカではペイパル傘下の「Venmo」、中国ではアリババ傘下の「Alipay」、そして「WeChat Pay」などに代表されるように急速に普及が拡大しています。

これに対して日本では、同社アプリのほか、「Kyash」、「paymo」などフィンテックベンチャーによるサービスがようやくスタートをしたばかりで、まだ本格的な普及にまでは至っていません。

この背景には、ATMが幅広く普及している、日本人の現金好きなど、文化的・社会的な要因があるとされていますが、それだけではなく、単純に使い勝手のよいサービスがなかったという側面も無視できません。

中高年世代だと、長年、現金になじんできた習慣を変えることには腰が重くなりがちですが、10代、20代の若者には「いつまでも現金でやり取りしてていいの?」という素朴な疑問が湧くことも多いのかもしれません。

LINEなどの新サービスが若年層から広がったように、そうした世代から使いやすいと支持されるサービスを生み出すことができれば、モバイルP2P決済も意外に大きく化けることが期待されます。

まさに、 ベンチャー企業が本領を発揮する分野と考えられますので、ウォルトなどの取り組みを今後も注視していきたいと思います。

LIMO編集部