中国からの旅行客が増え、その勢いのある買い物の様子を称して「爆買い」という言葉が生まれました。また、訪日外国人による消費の影響を「インバウンド効果」と呼んでいます。今回は外国人旅行者の訪日状況が現在はどうなっているのか、また誰が恩恵を受けたのかを考えてみます。

訪日外国人はいったい何人になったのか、どこの国からが多いのか

日本政府観光局(JNTO)によると、2016年(暦年)の訪日外客数は2,400万人を超えています。2003年の訪日外客数は520万人強だったので、2003年比では実に約4.6倍の規模となっています。

また、訪日外客の国別の内訳をみると、中国が約630万人、韓国が約500万人、台湾が約420万人、香港が約180万人となっています。このアジア主要4か国で訪日外客の約70%を占めており、その比率は年々上昇しています。

この結果はイメージ通りという方も多いかもしれません。海外から日本への観光客が増えているというのは、すなわちアジアから日本への訪問が増えたということです。

つまり、日本企業がインバウンド効果から最大限に恩恵を受けようとするのであれば、欧米からの観光客を対象とするよりも、「アジアを見よ」ということになります。

2020年の東京オリンピックでは日本が欧米人観光客であふれかえるというイメージを持ちがちですが、地理的な条件やオリンピック後のことも考えると、やはりアジアからの観光客を中心に日本の観光政策を考えるべきと言えそうです。

なぜインバウンドが注目されるのか

現在、日本の人口は約1億2600万人です。2016年の訪日外客数約2,400万人が、日本政府が目標とするように2020年に4,000万人、2030年に6,000万人へと増えていくとすればどうでしょうか。実現性はともかく、6,000万人は日本の人口の約半分ということになり、これは決して無視できない数字です。

訪日外国人の消費はGDP統計上では「輸出」に該当します。今後、日本の製造業の競争力が弱まりモノの輸出で外貨を稼ぐことができない環境となっても、日本を海外に魅力的に見せることで外貨を得ることが可能となります。すなわち、訪日外国人を確保することは、日本経済にとって非常に重要なことなのです。

訪日外国人による日本国内での消費規模は2015年に約3.5兆円です。それを2020年には8兆円、2030年には約15兆円にまで拡大させようというのが日本政府の狙いでもあります。

一方、現在の日本の名目GDPは約530兆円です。安倍首相が目標としている名目GDP600兆円という数字が現実的かどうかはさておき、日本が名目GDPをさらに拡大させていくためにはインバウンド消費の伸びが必須と言えるでしょう。

これが、インバウンドが注目される理由です。

参考:国土交通省「明日の日本を支える観光ビジョン」

訪日外客数6,000万人は現実的か

ここで少し日本政府の目標値について考えてみましょう。

まず、6,000万人という数字がどの程度の位置づけなのかを理解するために、世界各国の外国人訪問客を見てみます。日本政府観光局によると、2015年の外国人訪問客数が最も多かった国はフランスで約8,450万人です。第2位が米国で約7,750万人、第3位がスペインの約6,820万人、第4位が中国の約5,690万人となっています。

GDP規模で考えれば、日本政府の目標である6,000万人というのはありえなくはない数字です。しかも、京都を始め歴史ある観光地や温泉などの観光資源も豊富なので、世界から訪問客を集めるられるポテンシャルは十分にあると言えるでしょう。

その一方で、観光客を収容するホテルや旅館、観光客を運ぶ移動手段の充実が必要になると思われます。都心でも収容能力の不足が叫ばれる中、地方では宿泊施設だけではなく、移動手段も盤石とは言えないでしょう。これが、AirbnbやUberといった海外のサービス事業者の展開が注目される理由でもあります。

参考:日本政府観光局「世界各国、地域への外国人訪問者数ランキング」

外国人旅行客は何を消費しているのか

さて、話をインバウンド効果に戻しましょう。

日本を訪れる外国人観光客は70%以上がアジア主要4か国からだという統計を冒頭で紹介しました。ということは、アジアからの旅行者が日本で何を購入したいかを考えればよいことになります。

外国人、特にアジアからの観光客が日本で買い物をするメリットでよく言われるのは、「本物で安心できる」、「日本企業の製品やサービスは品質が高い」などではないでしょうか。

その中で、商品としては炊飯器や魔法瓶などに代表される家電製品、化粧品、医薬品などが該当するでしょうし、アパレルや生活用品では無印良品のようなクールでシンプルなライフスタイルを提案するものが対象になると思われます。

また、サービスとしては東京ディズニーランドなどのエンタテインメント、日本食を代表する回転ずしや牛丼なども挙げることができるでしょう。

インバウンドで誰が恩恵を受けるのか

では、上記のアイデアに沿ってどのような企業が恩恵を受けるのかを考えてみましょう。

家電小売り店はどこも免税対象を拡大しているでしょうが、たとえばビックカメラ(3048)などは都心に店舗が多いことから注目すべき企業の一つです。電気炊飯器や魔法瓶を製造販売する象印マホービン(7965)も注目です。

また、化粧品ではコーセー(4922)、医薬品では目薬の参天製薬(4536)、熱さまシートで人気の小林製薬(4967)などがあり、ビックカメラ同様に都心に店舗の多いドラッグストアとしてマツモトキヨシホールディングス(3088)も考えられます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。日本が世界で有数の観光大国になるためには以下の3つの取り組みが必要です。

  • アジアの人に喜んでもらえる観光地づくり
  • 宿泊施設や交通インフラの整備(特に地方)
  • 規制緩和による観光インフラの拡張対応

日本の観光立国のポテンシャルの大きさは確かなものだと感じられます。ただ、まだまだそのためには準備が必要のようです。

 

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青山 諭志