【米利上げ】ズレ補正にも見える今回のFOMC。ハト派寄りに感じるのはなぜ?

ドットチャート、経済予想、バランスシート政策から読み解く

この記事の読みどころ

米国の政策金利を決定する米連邦公開市場委員会(FOMC)が2017年3月14~15日に開催されました。

今回のFOMCでは年内の利上げ回数の想定に変化があるかが注目されました。2月後半頃からイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長など主要なFOMCメンバーが急速に利上げを示唆するコメントを繰り返したため、それまで2017年の利上げ回数を2回もしくは3回と見ていた市場関係者は、ひょっとしたら年4回の利上げまで想定すべきではとの観測も聞かれたからです。

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しかし、ハト派(金融緩和を選好する傾向)寄りと見られるFOMCの発表内容から判断する限り、年4回の可能性は低いと思われます。では、FOMCの発表内容のどの点がハト派寄りだったのかを述べます。

FOMC:市場予想通り0.25%利上げ、経済見通しは変わらず。年内あと2回利上げか

FOMCは2017年3月14、15 両日に定例会合を開き、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標を市場予想通り0.25ポイント引き上げ、0.75~1%のレンジに設定しました。

FOMC参加者の予測中央値を見ると2017年の利上げ回数は3回(年内あと2回)を想定しており、前回と変わらない内容となりました。FOMCの結果公表の後、市場では国債利回りの低下(価格は上昇)や、為替市場では円高・ドル安が進行するなどの動きが見られました。

どこに注目すべきか:ドットチャート、経済予想、バランスシート政策

今回のFOMCにおける政策金利引き上げは市場の想定通りで何ら驚きはありません。2月後半頃からのFOMCメンバーによる利上げ示唆発言で急速に高まった感のある3月利上げにより、市場ではFOMCの意向は年4回の利上げではないのかという声も聞かれましたが、今回の発表内容の中で次の点に注目すれば、年4回の可能性は今のところ低いと思われます。

というのは、まず、FOMC参加者の想定する利上げ回数が前回の予想時点(2016年12月)から変化に乏しい点です。

FOMCは3カ月ごとに(3月、6月、9月、12月)FOMC参加者の各年末のFF金利予想値の分布をドットチャートで公表しています。このドットチャートから、たとえば2017年は何回利上げが想定されているか見当がつきます。今回公表されたドットチャートで2017年に想定される利上げ回数を見ると、4回以上の利上げを予想する参加者は5人で、前回(2016年12月時点)と人数は同じとなっています。

年4回の利上げとなると、3月、6月、9月、12月の4回と考えるのが普通で、FOMCメンバーが急に3月利上げを支持したのは年4回の利上げを支持したからだという声も市場にありましたが、ドットチャートを見る限り、4回以上の利上げを支持するメンバーが増えた様子は見当たらないように思われます。

次に、FOMC参加者の景気認識などにも変化が見られない点です。

景気認識については声明文冒頭の景況判断が据え置かれています。ただ、労働市場については雇用増加が引き続き堅調と若干上方修正した表現となっています。それでも、FOMC参加者の経済予想は前回からほとんど変化が見られませんでした。

FOMCメンバーの経済予想を中央値で見て見ると、経済成長率見通しについては、2018年が今回2.1%で、前回(2016年12月)の予想から0.1%と小幅に引き上げられたに過ぎません。金融政策に影響の大きいインフレ率(ヘッドライン)に至っては前回と同じであったこともハト派寄りと見られます。

最後に、バランスシートの政策について慎重な見方が示されたこともハト派寄りと見ています。

米国も中央銀行にあたるFRBが金融緩和政策として国債などを購入し、バランスシートに計上しています。FRBは新規の債券購入は既に停止していますが、積み上がった債券について満期が到来した債券は再投資して残高を維持しています。

しかし、金融引締め局面では、どこかの段階で再投資を停止、その後は債券の売却の可能性も見込まれています。これがバランスシート(を縮小させる)政策で、市場では政策金利が1%を超えた段階で再投資停止が公表されるのではとの懸念もささやかれています。

とはいえ、イエレン議長は今回、利上げが十分進展するまで(それが何%かは依然不明ですが)再投資を続ける姿勢を示唆し、従来よりもバランスシート政策の変更に慎重な印象を与えました。

ただ、よくよく考えてみれば、期待が行ったり来たりしただけなのかもしれません。前回(2016年12月)のFOMCで年3回を予想するFOMC参加者が最も多かったにもかかわらず、市場の多くは2回程度を予想していました。

これに対し、2月後半から3月月初にイエレン議長などが利上げに言及したため、市場が急速に織り込んだ(織り込みすぎた?)ために利上げの期待を市場が勝手に高めてしまっただけなのかもしれません。その分、今回のFOMCがハト派寄りに感じた面も、少しはあるのかもしれません。

いずれにせよ、市場は年3回の利上げペースを来年以降についても認識する展開となっていると見られます。

ピクテ投信投資顧問株式会社 梅澤 利文

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梅澤 利文
  • 梅澤 利文
  • ピクテ投信投資顧問株式会社
  • シニア・ファンド・アナリスト

東京理科大学工学部卒業後、国内証券会社のシステム運用部門を経て、外資系運用会社(BNPパリバ投信投資顧問(当時)等)で債券、仕組債、オルタナティブ運用を担当。
2010年ピクテ投信投資顧問入社。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。