3月22日は『世界水の日』、水資源の重要性を見直す日

毎年3月22日は『世界水の日』(World Day for Water、一部では“World Water Day”とも言われる)と定められています。ご存知でしたか?

これは1992年リオデジャネイロ(ブラジル)で開催された「環境と開発に関する国際連合会議」(通称:地球サミット)のアジェンダ21で提案され、翌年(1993年)に国連総会で定められた日です。

この『世界水の日』の趣旨は、まさしくその名の通り、貴重な水資源の重要さを見直して、いっそう大切に取り扱おうというものです。実際、国連は加盟各国に対して、水(水資源)の持続可能な開発に関するイベントを開催するように働きかけているのです。

一方、日本では『世界水の日』とは別に、1977年から毎年8月1日を『水の日』と制定しています。主旨としては、節水を呼びかける日であり、水の大切さを考えるという意味では同じと見ていいでしょう。

人間が生きていくために水の摂取は必要不可欠

国連が『世界水の日』を制定していることからもわかるように、水資源の重要性は年々増しています。人間が生きていくために水の摂取は欠かせません。一般的には、体重60kgの成人で1日に約2.5~3リットルが必要とされています。

このうち、食事で摂取できるのが約半分と言われていますから、いわゆる“水を飲む”という観点で見ても、1日に最低1リットル程度が必要と試算されます。

衛生的な環境で水を摂取できる国は決して多くない

生きていく上で必要不可欠な飲料水を衛生的な環境で十分に確保できる国は、実は決して多くありません。アフリカやアジアなど新興国を中心に、非衛生的な水の摂取を余儀なくされている人口は、軽く10億人を超えると言われています。

そして、今まで十分に水資源を確保できていた先進国でも、干ばつ等による異常気象により、水不足問題は徐々に深刻になっているのが現実です。

将来「水」を奪い合う戦争が起きても不思議ではない

振り返ってみると、中世以降、世界で起きたほとんどの戦争は領土の奪い合いでした。しかし、それは突き詰めていくと、資源の奪い合いでもあったのです。

既に、石油の奪い合いで多くの戦争が起きたのはご存知の通りですが、今後もいつ天然資源を奪い合う戦争が起きても不思議ではありません。そして、その天然資源を代表する1つが「水」になる可能性は十分にあるのではないでしょうか。

山本七平氏が記した「日本人は水と安全はタダだと思っている」

しかし、こうした水資源の重要性を説いても、多くの方にはピンとこないと思われます。日本は、豊富な水資源を有するという点では世界有数の国だからです。

昔、戦後の保守評論家・作家として活躍した山本七平氏(筆名:イザヤ・ベンダサン)は、著書『日本人とユダヤ人』(1970年発刊)の中で、「日本人は水と安全はタダだと思っている」という有名な一文を記しました。この著書で山本氏は、タダと思い込んでいる水と安全にお金がかかる時代が来ることを明確に予測していました。

あれから45年超が過ぎましたが、山本氏の予測は見事に的中したと言えるのではないでしょうか。

「安全」に多額のお金がかかり始めている今、水も例外ではない

詳細は省略しますが、様々な分野で「安全」にお金がかかっているのはご存知の通りです。

これは、周辺諸国を含めた国際的緊張の高まりによる防衛費の増大のみならず、国内での犯罪増加に対応するために様々なセキュリティ対策が講じられていることからも明らかです。

そして、「水」にも多くのお金がかかり始めています。“えっ?水にお金をかけている?”と不思議に思う人も少なくないかもしれません。

たとえば、ミネラルウォーターがそうです。若年世代の方にご理解してもらうのは難しいかもしれませんが、今から30年前まで、ほとんどの人は、何の疑いもなく普通に水道水を飲んでいました。“飲料水を買う”という発想は、全くなかったと言っても過言ではないでしょう。

しかし、ミネラルウォーターの消費量は着実に増加しています。2015年の1人当たり消費量(年間)は26.7リットルとなり、1997年の約4.2倍に拡大しました。明らかに水にお金をかけているのです。

日本でも「水」がタダではないという認識は着実に広がっている

もちろん、ミネラルウォーターの消費量が増えたのは、美味しい水を飲みたいという嗜好の変化や、健康志向の高まりが中心であり、水資源の不足が大きな理由ではないと考えられます。また、自然豊かな地方都市では、今でも普通に水道水を飲んでいるところもあるでしょう。

それでも、水がタダではないという認識は、徐々に着実に広まっているのではないでしょうか。

前述した日本のミネラルウォーターの1人当たり消費量は、これだけ増加しても先進諸国の中では最も少ない状況です。イギリスとカナダを除き、多くの先進諸国は100リットルを超えています(注:日本以外の最新データは2013年)。

逆に言えば、日本は「水」がおいしい国とも言えるかもしれません。『世界水の日』に、改めて水資源の重要性を考えてみるのもいいのではないでしょうか。

LIMO編集部