三越千葉店、33年の歴史に幕

三越千葉店が2017年3月20日に閉店し、33年の歴史に幕が下ろされました。

三越千葉店はJR千葉駅、京成千葉駅から徒歩3分ほどの距離にある交通至便な場所にありました。売場面積は24,787㎡、従業員数229人という店舗でした(2016年4月)。

筆者はごく最近千葉市内の知り合いを訪問する際、この店舗で手土産を購入したことがあります。さまざまな意味で老舗感の漂う店舗でした。

三越といえば、三越伊勢丹ホールディングス(3099)の大西洋氏が2017年3月7日に代表取締役社長執行役員から退いたばかりです。大西氏は2016年9月7日にこの三越千葉店と三越多摩センター店の営業終了を発表したばかりでした。

かつては年商500億円を誇ったが・・・

伊勢丹出身の大西氏が三越店舗を中心にリストラを進めようとして社内の摩擦を生んだという見方を、ついしてしまいたくなりますが、冷静に見れば三越千葉店の閉店はあるべき決断だったと思います。

三越伊勢丹ホールディングスの2016年9月7日のプレスリリースを改めて見ると、三越千葉店の売上高は平成3年のピークに500億円に達していたとあります。では、近年の売上高の推移はどうでしょうか。同社のIR資料によれば、2012年3月期に184億円だった売上高は2016年3月期に127億円まで減少しています。わずか4年間で▲31%もの減少です。

ちなみに、この間JR千葉駅の乗降客数はほぼ横ばいです。また、千葉市の人口も漸増傾向にありますので三越千葉店の大幅減収は外部要因ではなく、個店要因ではないかと推察されます。

「地域一番店」そごう千葉店は健闘

JR千葉駅からは、三越千葉店とは別方向でほぼ等距離にそごう千葉店があります。

こちらの売上高の推移を見てみると、2012年2月期の786億円が2016年2月期に761億円となり、4年間の減収は▲3%にとどまっています。百貨店不況のなかで、地域一番店としてしっかり売上高を保っていると言えるでしょう。

二番手ではだめだった

もう1つ認識しておきたいのはこの2店の規模の差です。761億円と127億円の格差は集客、仕入れ条件、品揃え、コスト効率、再投資余力などの点で覆すのが難しい格差を生んでいたのではないでしょうか。

かつてスーパーコンピューターの開発で2位を目指すことが妥当かどうかという議論がありましたが、ビジネスの世界では1社(1店)だけが勝ち残る”winner takes all”が業界にかかわらず一般的な法則なのかもしれません。

得意客サロン設置が活路になるか

勝ち残ったそごう千葉店は残存者メリットを享受する立場にあります。しかし、JR千葉駅の駅ビルが新装され、これから順次開業されていきます。新たな競争相手が現れることになりますので、気を抜けないと思います。

一方、三越伊勢丹ホールディングスは2017年4月22日にお得意様向けサロンを新たに設置する予定です。このほか、制服専門の店舗とギフトカウンターも設ける予定です。

筆者はこのサロンがうまく機能するかに注目したいと思います。得意客に密着し提案営業するのが百貨店らしさを発揮する1つの有力な方法ではないかと思うからです。仮に生産性が損なわれず、新規客を開拓できるようであれば、おもしろい展開になるでしょう。

地域一番店ではない店舗はサロン型に転換していくことができるのか、千葉の試みに注目したいと思います。

LIMO編集部