存在感が薄い日本のテック系イベント。シーテックの課題は?

安倍首相がスピーチした「CeBIT」は、なぜ“世界最大級”なのか

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安倍首相がドイツで開催されたCeBITでスピーチ

安倍首相が訪問中のドイツで、世界最大級のIT関連トレードショーであるCeBIT2017年(3月20日~24日開催)の前夜祭でスピーチを行ったことが報じられています。

今回の参加は、2016年5月のドイツ訪問の際にイベントへ招待されたことを受けてのものですが、IT産業へのコミットの強さと自由貿易の重要性を訴えるという2つのメッセージを効果的に発信する機会となっています。

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このような政治的な背景説明の後に、いきなり個人的な話で大変恐縮ですが、CeBITには筆者にとって忘れられない思い出があります。

訪れたのは1度だけ、それも今から15~6年前の2000年のテックバブルの頃のことです。開催初日に冬時間から夏時間に変更になったことを知らずに(ドイツ語もわからず、サマータイムというものにもあまりなじみがなかったため)、アポイントメントに大幅に遅刻してしまったのです。

この経験から、CeBITというと、そろそろ冬も終わり春が訪れるこの時期だという記憶に加え、海外出張時にはサマータイムへの変更日時を忘れないようにしなくてはいけないという教訓が脳裏を去来します。

CeBITと日本のシーテックを比較してみる

ところで、なぜCeBITは、“世界最大級”と称されるのでしょうか。また、CeBIT以外にはどのようなテクノロジー関連のイベントがあるのでしょうか。そのことを考えるために、テクノロジー関連の世界の3大イベントと、日本で行われるテックショーであるシーテックの特色を以下にまとめてみました。

CES:コンシューマー・エレクトロニクス・ショーの頭文字を取ったもので、毎年1月初旬にアメリカのラスベガスで開催される民生機器を中心としたイベントです。約50年にわたる歴史を誇り、次世代の革新技術が市場に導入される可能性を見極めるためのグローバルなトレードショーとして有名です。2016年の出展社数は約3,900社、来場者数は約18万人でした。

CeBIT:CeBITはドイツ語のビジネスオートメーション・情報技術・テレコミュニケーションを表し、毎年3月初旬から中旬にドイツのハノーバーで開催される情報通信関連を中心としたイベントです。開催は1999年からで、今年で18回目を迎えます。2016年の出展社数は約3,300社、来場者数は約20万人でした。

IFA:ドイツ語の「Internationale Funkausstellung」を由来としており(直訳すると国際ラジオ展となります)、毎年9月前半にドイツのベルリンで開催されます。第1回は1924年と90年以上の歴史を持つイベントであり、米国のCESと並び称される家電関連のトレードショーです。2016年の出展社数は約1,600社、来場者数は約24万人です。

CEATEC:シーテックは日本で毎年10月前半に開催される日本最大のエレクトロニクスショーです。2000年に家電・電子部品の展示会「エレクトロニクスショー」とIT関連の展示会「COM JAPAN」が統合され、現在に至っています。2016年の出展社数は約650社、来場者数は約15万人でした。

CEATEがCeBITなどから学ぶべきポイントとは

こうして4つのイベントを比較してみると、歴史ではIFAが圧倒的に長く、出店者数ではCESが最大、来場者数ではIFAが最多となり、海外の3つのイベントはいずれも”世界最大級”と言うにふさわしいトレードショーであることがわかります。

そこで気になるのが、シーテックがどの基準でも一番ではないこと、また、特に目立つのが出展社数の少なさです。こうしたことから、シーテックは日本国内では最大であるとしても、世界的にはまだまだの水準にあると考えられます。

また、こうした事実は、グローバル市場で存在感が薄れている日本の電機産業の立ち位置とも重なり、そこからはベンチャー企業が少ないという日本の産業構造の脆弱さも感じ取れます。

ちなみに、投信1の記事『帰ってきた日立。原点回帰した今年のシーテックは期待大』にあるように、シーテックの主催者は2016年からイベントのコンセプトを「CPS(注)/IoT関連の展示会」というコンセプトに再定義し、再活性化を目指しています。

注:CPSとはサイバーフィジカルシステム(Cyber Physical System)の略語です。制御対象から収集したビッグデータをAI(人工知能)などで処理することにより産業の活性化や社会問題の解決を図るもので、IoT(モノのインターネット)と密接に関連するテクノロジーです。

こうしたコンセプトの明確化に加え、海外のベンチャーキャピタル等の投資家を呼び込むなど、海外からの出展社数が増えるような施策が望まれるところです。

いつの日か、シーテックにも海外からの首脳が訪れオープニングスピーチを行うような“世界最大級”のイベントに成長することを期待したいと思います。

和泉 美治

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和泉 美治

同志社大学文学部卒業後、エルコインターナショナル (現:京セラエルコ) に入社。英国バーミンガム大学にてMBA取得。
その後UBSフィリップスアンドドリュー証券 (現:UBS証券) に入社し、調査部にてエレクトロニクスセクターを担当。2002年より2013年までJ.P.モルガンにて産業用エレクトロニクス及び民生エレクトロニクスセクターを担当。
日本証券アナリスト協会検定会員。