お金を借りたい人と貸したい人をネットでつなぐ仕組み、ソーシャルレンディング。借り手は低金利での資金調達を実現でき、貸し手(投資家)は高利回りでの資産運用が期待できることから大きな注目を集め、ここ数年で市場規模が急拡大しているサービスです。

一方、興味を持ってサービス事業者のサイトを見たものの、どの案件も貸付先の具体的な企業名や相手先がわからないので不安だ、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。実はこれ、ソーシャルレンディングならではの仕組みがその理由にあるのです。

今回は、ソーシャルレンディングでよく使われる「匿名組合契約」について、その概要を確認していきたいと思います。

えっ、私が貸金業者? 貸金業法とソーシャルレンディングの関係

ソーシャルレンディングとは、お金を借りたい人と貸したい人とをインターネットでつなぐ仕組みです。インターネットを使って企画やアイデアに対する資金を募る「クラウドファンディング」の一種とされ「貸付型(あるいは融資型)のクラウドファンディング」とも呼ばれます。

とはいえ、ソーシャルレンディングでは借り手と貸し手は直接やりとりしません。投資家からお金を集めるのも、借り手への貸し付けも、実際に行うのは専門のサービス事業者です。

ではなぜ、借り手と貸し手は直接やりとりをしないのでしょうか?

これには法律上の理由があります。実は、継続的、反復的に直接お金を貸す(またはその意思を持っている)場合、個人であってもこの行為は「業」であるとみなされ、貸金業法上の貸金業登録が必要になるということなのです。

ソーシャルレンディングは一定期間あるいは繰り返し融資を行うものですから、貸金業登録をしていない場合は貸金業法違反になってしまうというわけです。

もちろん、個人で貸金業登録など、まず無理です。でも、それではソーシャルレンディング自体が不可能になってしまいますね。

そこで、投資家が貸金業法に抵触せずにソーシャルレンディングを行うため、多くのサービス事業者が取り入れているのが「匿名組合契約」です。

ソーシャルレンディングには必須の「匿名組合契約」のしくみ

匿名組合契約とは、投資家(匿名組合員)がサービス事業者(営業者)に出資し、サービス事業者の営業等の行為によって生まれた利益を分配する契約です。「匿名」とは、その言葉通り出資者の名前がわからないようにすることです。

サービス事業者は融資を行う際、ファンドを組成し、匿名組合をつくって投資家の募集を行います。投資家はサービス事業者と匿名組合契約を結び、匿名組合員として出資を行います。こうすることで、投資家は借り手と直接お金のやりとりをしない仕組みになっています。

出所:maneoホームページより

ちなみに、組合といっても匿名組合契約は投資家とサービス事業者との個別契約で、出資者間での利害関係は発生しません。また、投資家は出資額以上のリスクも負いません。

貸付先もわからないのはなぜ?

本来であれば、投資家が匿名であることを意味する匿名組合契約ですが、ソーシャルレンディングの場合、投資家は融資する相手先がどこかもわかりません。貸付先の匿名化については、監督行政からサービス事業者に対しての指導があるようです。監督行政としては、相手先が明らかな場合「投資家が直接融資を行っている、すなわち貸金業法に抵触する」という見解のようです。

ソーシャルレンディングのファンドで具体的な融資先が伏せられているのは、これが大きな理由なのですね。

まとめ

いかがでしたか? ソーシャルレンディング市場は高利回りを実現する資産運用の新たな手法として今後さらに拡大すると見込まれます。一方、まだ新しい投資手法なので、投資家自らがしっかりと調べ、内容を理解したうえでサービス事業者や案件を選んでいく必要があるのも事実です。気になる方はこの記事も参考に検討を進めてみてください。

参考:お金の借り手と貸し手がネットでつながる!? 新サービス「ソーシャルレンディング」ってどんなもの?

LIMO編集部