本当に間違っている!「ヘッジファンドの決算売り」という通説

成功報酬と利益確定をめぐる誤解とは

これまで、ヘッジファンドの決算に関して流通している情報の多くが間違っていることを幾度か指摘してきた効果が出たのか、「ヘッジファンド 決算」というキーワードで大手ポータルサイトで検索してみると、筆者の記事が、上位ではないものの検索結果の1ページ目に出るようになりました。

しかし、残念ながら事実ではない情報を載せたサイトが上位を占めている事実は変わりません。繰り返しますが、ヘッジファンドは決算期に縛られた運用はしていません。

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なぜ「ヘッジファンドの決算売り」という誤った認識になるのか?

「決算期を前に、利益確定のためにヘッジファンドはポジションを解消しているから、市場には売り圧力が高まっている」などという話は嘘です。特に、プロを自称されている方々は、読者に誤解を与えないためにもご自身が書かれた内容を今一度見直されることをお勧めします。

では、プロと思われている方々も含めて、どうして「ヘッジファンド 決算」に関する間違った認識をしてしまうのでしょうか。

ヘッジファンドは成功報酬を追い求めることが一番のインセンティブです。成功報酬を獲得するために、一生懸命運用をしていると言っても過言ではありません。一方、上述のように、決算にまつわる誤解には「決算期前に利益確定の売りを出す」という表現がほとんど付いて回ります。

おそらく、ここには「ヘッジファンドはファンドの利益を確定して成功報酬を確保しておきたいから、今のうちにポジションを解消する売りを出しているんだ」というような誤解が根底にあると思われます。つまり、「どのタイミングで成功報酬が決定されるのか」が理解できれば、決算に関する誤解は解消可能です。

ファンドの決算はなぜ必要なのか?

まず、事実を整理しましょう。ヘッジファンドは、通常の投資信託と同じような、いわゆるファンドです。ファンドというと、「○○ファンドとか悪いイメージしかない!」という方がいらっしゃるかもしれません。ただ、ファンドは、複数の投資家からの投資資金を束ねて、個々人の投資家ではアクセスできない投資手法を効率的に提供するための仕組みです。ただの仕組みなのです。

そのファンドという仕組みには決算期が存在します。「ほらやっぱり!」という方、焦らずもう少しお付き合いください。ファンドの決算はなぜ必要かというと、法務・税務・財務の面で、関係当局や投資家等に決算日までのファンド内容を精査した(監査機関が確認した)書面を提出する必要があるのです。そのために決算期が存在しています。

皆さんがお持ちの一般的な投資信託にも決算があります。投資信託はファンドであり、ヘッジファンドもファンドであり、ファンドには定期的な報告義務を区切るための決算期が設定されているのです。それだけです。

次に、成功報酬の決定と上記の決算期には関係がないことを確認してみましょう。成功報酬が確定するタイミングは基準価額が出てくるタイミングです。基準価額とは、その値段でファンド1単位が買える、または売れる値段です。投資信託に投資をしたことがある方であれば基準価額の意味はご存知かと思います。

ヘッジファンドで成功報酬を計算するとき、ポジションを全部解消する必要はありません。なぜなら、成功報酬は実現損益ではなく、評価損益に基づき計算されるからです。

間違った情報でヘッジファンドを敬遠していませんか?

まとめます。ヘッジファンドの決算期は、上記の通り事務的な理由で設定されているものです。また、成功報酬を確定するためにわざわざポジションを解消する必要はありません。なぜなら、評価損益ベースで成功報酬が計算されるからです。

よって、決算期に向かってヘッジファンドが売り注文(または買い注文)を集中させて市場の混乱要因となるという説明は事実ではないと簡単に理解できます。

なぜ繰り返しこのことをお伝えするかというと、日本ではヘッジファンドというのは市場に悪影響を与える迷惑な存在であり、手数料が高い割にはあまり役に立たない存在であるという誤った、または偏った認識ばかりが強く、結果として投資家が残念な選択をしてしまっているかもしれないと懸念しているからです。

日本の投資家の方々に、特定の運用戦略やファンドが良いという話をする以前のこととして、まずはヘッジファンドに関する客観的な事実をお伝えして、冷静な判断材料を提供することが筆者の責務と考えています。

日本国内の運用会社でも、大変優れたヘッジファンド戦略を提供しているところが出てきています。ヘッジファンドに関し、ただ忌み嫌うのではなく、間違った情報に踊らされるのではなく、冷静にご検討いただくきっかけをご提供できたら幸いです。

検討の結果、自分には合わないと思われるのであれば投資をすべきではないでしょう。もし、興味を持てたのなら小額からスタートして経験を重ねていくのもよろしいのではないでしょうか。

ピクテ投信投資顧問株式会社 小田嶋 康博

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小田嶋 康博

金融系ベンチャー企業を経て、イギリス系大手ヘッジファンドであるマン・グループにて、東京、チューリッヒ、ロンドンで勤務後、ピクテに入社。
ピクテでは、従来型のディストリビューションモデルと異なる戦略立案及び営業活動を担当。 特に富裕層向けビジネスモデルの構築、並びにネットチャネル経由のビジネスモデル構築及び促進に向け販売会社とのコラボレーション施策の開発に従事。
慶應義塾大学入学後渡米し、ニューヨーク州立大学経営学士取得。