2016年に大きく注目を浴びたソーシャルレンディング市場。その中で「みんなのクレジット」は急成長している話題の会社でした。しかし2016年12月、証券取引等監視委員会がみんなのクレジットに検査に入り、3月24日に同委員会は金融庁に対し同社への行政処分を行うよう勧告をしました(注1)。

注1:「株式会社みんなのクレジットに対する検査結果に基づく勧告について

ソーシャルレンディング業界での行政処分

市場が立ち上がりつつあるソーシャルレンディング市場ですが、過去のソーシャルレンディング運営会社に対する行政処分を振り返ってみましょう。

たとえば、2015年7月に業界大手の日本クラウド証券(サービス名はクラウドバンク)が3カ月の業務停止命令および業務改善命令を受けています(注2)

日本クラウド証券の場合は、顧客資産の管理がしっかり行えていないという点で業務停止および業務改善命令を受けましたが、その後に管理体制を整備するなどの対策を行い、現在もソーシャルレンディング大手の一角として活動を続けています。

注2:「日本クラウド証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

証券取引等監視委員会に指摘されているポイント

みんなのクレジットに関して証券取引等監視委員会が問題視しているのは、貸付先が実際には分散されていない(親会社とグループ会社への貸付に集中)、組成したファンドの資金をファンドの償還資金や白石伸生代表個人の借入金返済に充てているという点です。

投資家の出資金が毀損するかどうかが焦点

日本クラウド証券に対し行政処分が行われた際は、その後同社は社内体制の整備を行い、行政処分も解かれ、ソーシャルレンディング市場に復帰しています。また、ファンド出資者の資金が毀損することもなく、現在も業界の大手として活動を行っています。

では、みんなのクレジットの場合はどうでしょうか。

証券取引等管理委員会の資料によれば、みんなのクレジットの主な貸付先である親会社は、「貸借対照表(B/S)上では短期借入金が流動資産を大きく上回っている状態」と書かれています。

現状の流動資産のみでは短期借入金(=ソーシャルレンディングファンドからの借入金)の返済が滞る可能性が高く、証券取引等監視委員会も「ファンドからの甲グループ(=親会社)への貸付けは返済が滞る可能性が高い状況と認められる」と言及しています。

みんなのクレジットは「ファンドは正常に運営されている」と発表

証券取引等管理委員会の金融庁への勧告を受けて、みんなのクレジットは「証券取引等管理委員会の勧告について」という文書を発表しています(注3)

その中で現在運用中のローンファンドは予定通り正常に運営されていること、および親会社の財務状況については、2017年3月時点においての不動産事業の売上げは順調のため、ファンドの返済は直近の不動産の販売推移から十分可能と判断しているとしています。

同社の説明が正しいなら、投資家のファンド出資金は予定通り返済され、投資家の資金は毀損しないことになります。よって投資家のファンド出資金が毀損するか否かは、今後の事態の推移を見守る必要があります。

注3:「証券取引等管理委員会の勧告について

まとめ

2016年に立ち上がりを見せたソーシャルレンディング市場は、これまで年利で5~10%といった好パフォーマンスを投資家に提供するケースが多く、一部では「ソーシャルレンディングは魅力的な投資先」という、声も聞かれるようになっていました。

リスクのない投資は存在しません。しかし、みんなのクレジットの一件では、投資対象に関する通常リスク(例:融資先からの資金回収率が想定を下回る等の通常のリスク)に加えて、事業者の資産管理に関するリスクが顕在化したものであり、投資家を悩ませるものです。

顧客資産の管理に真剣に取り組んだうえで、高い利回りを提供してきた事業者もある中で、この一件がソーシャルレンディング全体にネガティブなイメージをもたらすのは残念なことです。

個人投資家は見た目の利回りの高さだけではなく、慎重に事業者を選び、ソーシャルレンディング投資を行う必要があると言えるでしょう。

LIMO編集部