ビール大手のアサヒビールを傘下に持つアサヒグループホールディングス(2502)の株価が上昇中です。3月下旬には4,200円台にまで上昇し、2015年8月に付けた高値4,395円の更新を狙える株価に位置しています。

少子高齢化で市場の伸びが期待できない日本では成長に限界のある中、昨年12月に約9,000億円で東欧のビール事業買収を決定した同社の今後の展開について考えます。

株価は2017年に入り堅調に推移

スーパードライを擁し、日本のビール業界大手として存在感を発揮しているアサヒビールは現在、アサヒグループホールディングス(以下、アサヒGHD)として持ち株会社が上場する形となっています。

そのアサヒGHDの株価は2017年に入り堅調に推移し、1月に3,716円でスタートした株価は3月下旬時点で4,200円台にまで上昇しました。2月にはいったん上昇が小休止となりましたが、1月と3月は大きく株価が伸びています。

高値更新のポイント

アサヒGHDの株価チャートを見ると、2015年8月に高値4,395円を付けていることが分かります。4,200円台まで上昇した現在のアサヒGHDの株価は、2015年8月に付けたこの高値を更新できるかどうか、非常に重要なポイントに差しかかっています。

このまま上昇が継続して高値更新となるのか、それともWトップというチャート形状になり下落してしまうのか、注目すべき地点に株価は位置していると言えるでしょう。

アサヒグループホールディングスの過去2年間の株価推移

東欧のビール事業買収決定、海外での成長を計画

株価上昇のためには企業の成長が必要不可欠ですが、既に少子高齢化で人口減少が見込まれる日本ではビール事業の大きな成長は望めません。そんな中でアサヒGHDは、2016年12月に東欧のビール事業を約9,000億円で買収すると発表しました。

これは、ビールの世界最大手であるアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABI、バドワイザーが有名)の東欧5カ国(チェコ、ポーランド、ハンガリー、スロバキア、ルーマニア)の事業を買収するものです。

参考:「中東欧 5 カ国のビール事業取得(子会社化)に関するお知らせ

東欧市場を狙った買収の背景とは

日本のビール会社の海外進出というと、キリンビールのブラジル進出など一般的には新興国への展開というイメージがあります。ビールは所得の伸びとともに消費量が伸びる傾向にあるため、国民所得の向上が期待できる新興国に進出しビール需要拡大の恩恵にあやかるという事業戦略は理にかなったものと言えます。

一方、12月にアサヒGHDが買収を決定したのは東欧5カ国のビール事業であり、国民所得の大幅な上昇=ビール消費の大幅な伸びが期待できる市場ではありません。

これまでの日本のビール会社の海外戦略とは異なり、同社は既に事業として確立されている東欧のビール事業を買収することで、ビール消費量が多い国々で確実に収益が上がる事業を手にすることとなります。

買収資金は銀行からの借り入れで充当

東欧のビール事業買収資金約9,000億円について、アサヒGHDは銀行から約3,000億円の借入を発表しています。実際の買収時期は2017年6月末までの予定であり、今後買収実行の際にさらに借入金が増加する可能性もあります。

年間の当期純利益が700~800億円クラスのアサヒGHDにとって、約9,000億円の事業買収は非常に大きな決断となります。当然、成算あっての決断でしょうが、金額が金額なだけに同社にとって東欧のビール事業買収は一種の賭けの要素もあると目されます。

参考:「資金の借入に関するお知らせ

まとめ:海外事業の成功でさらなる株価上昇なるか

世界のビール市場ではプレイヤーがほぼ出揃っている状態であり、そのなかでアサヒビールの事業規模はというと業界のトップ10に入っていません。このような市場環境で、日本のビール各社は新興国に進出し、国民所得向上によるビール消費量拡大の恩恵を得る方針でしたが、アサヒビールは一転、既存のビール市場を高値であっても確保するという戦略で海外展開を進めようとしています。

アサヒGHDの今後の成長は、国内ビール会社としては異例とも言える海外方針が成功するかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。現在のところ株式市場は同社の戦略を評価して、高値更新一歩手前にまで株価は上昇しています。

果たしてアサヒGHDは今後、海外事業を成功させて株価も高値更新となり、さらなる株価上昇を期待できるのでしょうか。今後の海外事業の状況および株価の行方に注目したいと思います。

LIMO編集部