取締役会も取り締まられる対象に? コーポレートガバナンス改革

生保協の提言に見る企業と機関投資家の課題

「株式価値向上への取り組み」に関するアンケート結果が公表

「コーポレートガバナンスコード(企業統治指針)」が日本の上場企業に適用開始されてから、もうすぐ2年が経過しようとしています。これからは、形式的な整備から実質性の向上が問われる局面となっており、言うならば「仏作って魂入れず」となっていないかの検証が求められています。

また、コーポレートガバナンスの改善は、企業価値の持続的な向上には不可欠な要素です。よって、その進展度合いは、個人投資家にとっても他人事ではなく、重要な関心事であると言えるでしょう。

続きを読む

そうした観点で注目されるのが、2017年3月21日に一般社団法人生命保険協会(以下、生保協)が発表した株式価値の向上に向けた企業および機関投資家向けアンケートの結果とこれに基づいた提言です。

なお、生保協では、このアンケートを1974年から43年間継続して行っています。今回のアンケートは昨年10月4日から11月3日に行われ、上場企業572社(回答率53%)と機関投資家93社(同56%)から回答を得た結果がまとめられています。

今回のアンケートでは、コーポレートガバナンス、持続的成長に向けた経営戦略、対話の3つの観点から企業と機関投資家に対し詳細な質問が行われており、この結果に基づいて、生保協は企業と機関投資家それぞれに対する提言を行っています。

「取締役会評価」が新たな注目ポイントに

今回のアンケートで最も注目されたのは、「取締役会評価」が取り上げられていたことです。

取締役評価とは、文字通り取締役会の実効性を評価する、つまり取締役会のメンバーが求められる職務を果たしているかを評価することです。

こうした考え方は、欧米の上場企業ではすでに広く導入が進んでいます。しかし、日本では2015年から適用が開始されたコーポレートガバナンスコードで取り入れられたばかりであり、「取締役会を評価するなんて恐れ多い」という雰囲気の会社もまだ多く存在します。

実際、今回のアンケート結果でも導入している企業は55%にとどまり、45%の企業が未導入という結果でした。

ただし、導入した企業の約8割が、取締役会評価を行うことで「課題発見につながり、有効であった」と答えています。また、コーポレートガバナンスに関して今後取り組みを強化する事項として「取締役会の実効性に対する評価」と答える企業も多く見られたことから、これからの進展には期待が持てそうです。

要望の実現を期待したい

今回のアンケート結果をもとに、生保協では企業と機関投資家に対して以下の要望事項をまとめています。

まず、企業向けの要望事項は以下の通りです。

  1. 取締役会評価の充実とその結果の開示
  2. 社外取締役の拡充 
  3. 数値目標と事業戦略を伴う経営計画の公表
  4. 資本コストを踏まえたROEの目標設定と水準向上
  5. 経営ビジョンに則した事業ポートフォリオの見直し
  6. 成長投資への手元資金の活用
  7. 中長期の平準的な水準として、配当性向30%以上
  8. 経営陣による対話内容の共有と対話への積極的な参加
  9. 対話要員の拡充
  10. 投資家からの反対理由の分析も踏まえた議案内容の説明充実
  11. 議決権行使のための検討時間確保のための環境改善

また、機関投資家向けの要望事項は以下の通りです。

  1. 中長期的視点での対話推進
  2. 対話要員の拡充
  3. 企業の状況を踏まえた議決権行使と賛否判断理由の説明

企業への要望の多さから見て、まだまだ課題が多いことが実感されます。また、企業にも機関投資家にも、建設的な「対話」を行える人材が不足しているという現状に対しては、早急な改善が求められるところです。

いずれにせよ、ここには日本企業の株式価値の向上のために重要なポイントが指摘されていると考えられます。今後の決算や株主総会などにおいて、こうした要望や提言が取り入れられていくかを注視していきたいと思います。

和泉 美治

ニュースレター

PR

和泉 美治

同志社大学文学部卒業後、エルコインターナショナル (現:京セラエルコ) に入社。英国バーミンガム大学にてMBA取得。
その後UBSフィリップスアンドドリュー証券 (現:UBS証券) に入社し、調査部にてエレクトロニクスセクターを担当。2002年より2013年までJ.P.モルガンにて産業用エレクトロニクス及び民生エレクトロニクスセクターを担当。
日本証券アナリスト協会検定会員。