上場廃止となる日本コロムビア

2017年3月28日、音楽やライブ映像などのコンテンツ配信事業を手がけるフェイス(4295)は、同社の連結子会社である日本コロムビア(6791)の全株式を株式交換により取得して完全子会社化すると発表しました。

株式交換は両社の定時株主総会で承認を受けて7月27日に行われる予定であり、これに伴い現在東証1部に上場している日本コロンビア株は上場廃止となります(最終売買日は7月26日)。

日本コロムビアの創業は1910年、東証への上場は1949年からと長い歴史を誇りますが、68年間にわたる上場企業としての幕を閉じることになりました。今後は非上場企業として、フェイスと一体となって新たな道を歩むことになります。

そもそも日本コロムビアとはどのような会社か

ところで皆さんは、日本コロムビアという会社にどのような思い出をお持ちでしょうか。

ミドル・シニア層の方であれば「DENON」ブランドのオーディオ機器や美空ひばりや石川さゆりなどのレコードを思い起こされる方も多いのではないかと思います。また、以前本社があった東京・赤坂の「コロンビア通り」を思い出す方もいらっしゃるでしょう(現在の日本コロムビアの本社は東京・虎の門)。

一方、100年を超す歴史があり、レコードやオーディオ機器といった身近な製品を扱ってきたものの、ソニーやパナソニックに比べると小ぶりな会社であるため、名前だけしか知らないという方がおられるかもしれません。そこで、同社の歴史を以下に簡単にまとめました。

1910年(明治43年):レコード・蓄音機の製造を目的に創業
1939年(昭和14年):国産テレビ受像機を完成、高島屋で公開
1949年(昭和24年):東京、大阪、名古屋各証券取引所に上場
1969年(昭和44年):日立製作所と業務提携
1989年(平成元年):美空ひばり大全集「今日の我れに明日は勝つ」がヒット
2001年(平成13年):AV・メディア関連機器部門を株式会社デノンとして分社、譲渡
2002年(平成14年):社名をコロムビアミュージックエンタテインメントに変更
2010年(平成22年):創立100周年、フェイスグループの一員となり社名を日本コロムビアに戻す。
2014年(平成26年):フェイスの連結子会社となる

ちなみに、業績のピークは1990年3月期で売上高は1,226億円、営業利益は44億円でした。

当時はCDもオーディオ機器も売れている時代でしたが、その後業界環境は激変し、2000年代にはオーディオ機器からの撤退を余儀なくされました。そして日立グループからも離脱し、コンテンツ中心の会社として生き残りを図ってきました。

なお、2017年3月期の会社予想は売上高138億円、営業利益が17億円と、ピーク時よりかなり小規模な売上高となっていますが、営業利益は前期に続き2年連続で黒字見通しとなっています。

フェイス傘下での活躍を期待したい

ご承知のように音楽業界は激変期にあります。CDなどのパッケージソフトが減少するなかで定額配信市場は伸びています。また、フェス・ライブ市場も伸びており、それに伴い周辺グッズ販売の市場も潤っています。しかし、一方ではアーティストへの収益分配などを巡る問題も抱えています。

こうした複雑な市場環境の変化に対して、すでに両社は様々な取り組みを開始していますが、日本コロムビアが非上場企業になることで、事業の統合や人事交流などについても柔軟な対処が可能になると見られるため、その動きは一段と加速していくと見られます。

つまり、日本コロムビアは上場廃止とはなりますが、フェイスグループのなかで、よりいっそう活躍が期待されることになると思います。コンテンツ配信の新興企業と豊富なコンテンツを持つ老舗音楽会社の今後の展開に注目していきたいと思います。

青色:日本コロムビア(6791) 赤色:フェイス(4295)の過去10年間の株価推移

 

和泉 美治