東芝問題で改めて考える「日本のコーポレートガバナンス」

20年前はどうだったか、そして今後の課題は?

長時間化する株主総会

製造業では最大となる1兆円の赤字見通しを発表した翌日、東芝は半導体メモリー事業の分社化を決議するために株主総会を開催しました。報道によると、総会は約3時間半という長時間におよび、株主からの厳しい発言が相次いだと伝えられています。

ただし、今回の東芝ほどではないものの、株主総会の平均所要時間は過去に比べると長くなる傾向にあります。具体的には、1997年には約30分であったものが、2015年には概ね1時間程度となっています。

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その理由は、企業不祥事が増えたからというわけではなく、2015年からコーポレートガバナンス・コードが適用となるなど、以前にも増して株主に対しての説明責任を果たすことが求められているためと考えられます。

余談ですが、以下の記事では株主総会の長時間対策として、大人用おむつを着用して株主総会に臨む社長もいるという話題が取り上げられています。今回の東芝の株主総会でもそうだったのか気になるところです。

出所:社長もつらいよ。株主総会で大人用おむつ着用も(投信1)

日程の分散化も進む株主総会

株主総会の変化は、開催時間の長時間化だけではありません。開催日程も以前と比べると劇的に分散化が進んでいます。

具体的には、以下の記事にあるように、約22年前の1995年6月の定時株主総会(3月期決算企業)の集中比率が96%であったのに対し、2016年では最も集中した6月29日でも32%に留まっています。

かつての異常な集中開催の最大の理由は、いわゆる“総会屋対策”によるものでした。また、当時は株主との対話や建設的な議論などは二の次という状況だったのです。

こうした過去との対比を改めて行うと、日本のコーポレートガバナンスに対する意識は実は着実に進展しているということがわかります。

出所:劇的な分散化が実現した株主総会のメリットとは(投信1)

そもそもコーポレートガバナンスとは何か

最後に、あらためてコーポレートガバナンスに関するおさらいをしておきましょう。

一般的には、コーポレートガバナンスは企業統治と訳され、企業活動を「律する」枠組みのことと定義されています。そして、コーポレートガバナンスの重要性の認識の高まりの背景には、企業の不祥事がありました。

問題が起きるたびに、諸規則(会社法、金融商品取引法、証券取引所規則など)が強化されてきましたが、それに加えて、「不祥事の原因は、根本的にはコーポレートガバナンスの欠如にあるのではないか」といった議論が行われてきたのです。

また、日本よりコーポレートガバナンスに対する問題意識が先行している欧米の投資家のプレゼンスが日本市場で高まったことなどもあり、2014年に政府は「日本再興戦略」にコーポレートガバナンスの強化を掲げています。

さらに、2015年6月には東証が企業の行動原則である「コーポレートガバナンス・コード」を公表し、適用が始まっています。

それから約2年が経過しましたが、投信1の記事『取締役会も取り締まられる対象に?』にもあるように、形式が整備されたこれからは、中身が問われる局面となっています。

なかなか終わりの見えない東芝問題を契機に、企業をいかに有効に「律し」、株主の権利や利益を守るかについての議論が深まることを期待したいと思います。

出所:社会人なら知っておきたい「コーポレート・ガバナンス」の基礎知識(投信1)

投信1編集部

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投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。