”あれ”を知れば、投資の世界のすべてがわかる!?

ディズニー映画で有名になった交響詩「魔法使いの弟子」をご存知だろうか。ゲーテの詩を下敷きにしたこの曲では、魔法使いの弟子が師匠の留守中、ほうきに魔法をかけて仕事をさせようとしたところ、ほうきが暴走して大騒ぎになるさまがユーモラスな旋律で表現されている。

ある程度は鍛錬を積まないと楽することもできない…ということを表現したわけではないだろうが、本書を読むと少しそんな気分になってしまうかもしれない。

本書で語られる“魔力を持った存在”、それは「金利」である。本書によれば、投資の世界では「金利が分かればすべてが分かる」と言われるそうだ。

「金利? 金利ってローンとか普通預金の利率のことでしょ」「投資だったらほら、あれだよね、『複利』が大切なんだよね」という方、その通りである。

ただ、この点を理解しているだけでよいのなら、世の中には投資のすべてが分かる人であふれ、儲かっている人ばかりになるはずだ。しかしながら、実際のところはどうだろう。投資の世界では大損をしている人も星の数ほどいるわけで、先の言葉が正しいのだとすれば、この世界に金利のことを分かっている人はほとんどいない、ということになる。

お金の力を目覚めさせる金利の魔力

著者の加谷氏は、本書は読者を「お金持ちの仲間入りさせるために書かれた本」であり、「最も本書を読んでほしいのは、手元の貯金を銀行に預けて、お金の力を眠らせてしまっている人たち」だとする。

ただ、まったくの投資初心者がいきなりこの本からスタートするのは少々難易度が高いだろう。投資初心者なら、まずは実際に投資をやってみて、体感してみるほうがよほど学びがあるはずだ。

むしろ本書は、これまでなんとなく、あるいは雰囲気や勘で株式投資や積立投信などをしていたけれど、このままでよいのだろうか、と少し悩んでいるような方におすすめしたい。

本書で語られるのは、富裕層=お金持ちの持つハウツーやゴールデンルールではなく、投資で成功をおさめた人たちやプロ(結果的にお金持ちになった人たち)がなぜ金利にこだわるのか、という極めて現実的で実務的な内容である。加谷氏は、為替や株の値動き、世界の景気の先行きまでも、金利を知れば先読みすることができると実例を挙げながら論じている。

もちろん、読み終えたからといってすぐに金利の魔力を自在に扱えるようになるかといえば、おそらくそう簡単ではない。この時点では単に魔法使いから魔力の存在を教えられただけの立場であり、ここから魔力を自在に操れるようになるかどうかは結局のところ鍛錬次第と言ってしまえばそれまでだ。

しかし、第一歩を踏み出したところから新たな世界が始まるのだとするならば、本書を読み終えたあなたはもうすでに魔法使いの弟子として魔法を使える立場にあるともいえる。きっと、金利の魔力を使って眠っているお金の力を目覚めさせたくなっているに違いない。

最強のお金運用術

著者:加谷珪一
出版社:SBクリエイティブ
単行本、224ページ

LIMO編集部