ECB、金融引き締めの兆候? 日本は蚊帳の外にならないか

ただし金融引き締めの本格化は長いプロセスに

J. Lekavicius / Shutterstock.com

この記事の読みどころ

欧州中央銀行(ECB)によるユーロ圏の今後の金融政策を占う注目ポイントを考えます。今回はECBの主な金融緩和手段として、債券購入(QE)と金利政策について述べます。

米国は緩やかなペースながら金融正常化に向かうべく利上げを開始しています。仮にユーロ圏も金融引き締めに向かうとなると、現状の緩和政策を維持している日本は蚊帳の外となるのか気になるところです。遠いユーロ圏の話ではありますが、日本も無関心ではいられません。

続きを読む

ユーロ圏経済指標:インフレ率の回復は道半ばだが、失業率は改善が続く

欧州連合(EU)統計局が2017年3月31日発表した3月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)速報値は、前年同月比1.5%上昇と市場予想(1.8%)および2月(2.0%)を下回りました。

一方、EU統計局が2017年4月3日に発表した2月のユーロ圏失業率は、2009年以来の低水準となる9.5%にまで低下しました。失業率の低下から景気の回復が示唆されます。

どこに注目すべきか:ユーロ圏経済指標、コアインフレ率、ECB予想

欧州中央銀行(ECB)によるユーロ圏の今後の金融政策を占う注目ポイントを考えます。ここではECBの主な金融緩和手段(他にもTLTROなど低利の融資もありますが)として、債券購入(QE)と金利政策(マイナス金利)についてのみ述べます。

ECBが金融政策を引き締める場合、順番は、債券購入減額(テーパリング)に着手、利上げはその後という流れを想定していると思われます。そのため、金融引き締めが本格化するには今後、長い道のりが必要と思われます。

まず、ユーロ圏の経済環境を振り返ると、ユーロ圏の雇用市場は失業率の低下傾向が続くなど回復傾向が示唆されます。また、3月の製造業購買担当者景気指数(PMI)も56.2と高水準となっています。依然、金融政策の下支えが必要とはいえ、ユーロ圏の景気の回復傾向は強まっていると見られます。

一方、インフレ率は総合CPIが2%を下回り(3月1.5%)、その上、変動の大きい食料やエネルギーを除いたコアCPIは3月が前年同月比で0.7%と軟調です。また、6月や9月など四半期毎に公表されるECBスタッフによる経済予測でも、ユーロ圏のインフレ率は今のところ落ち着いています。

ユーロ圏の景況判断を難しくしているのは、景気回復だけに注目すればECBによる金融引き締めも想定されますが、インフレ率の動向を考え合わせると、即座に行動を起こす可能性は低いと見られることです。

では、今すぐに金融引き締めがないとして、開始されるのはいつ頃を想定すればよいでしょうか? また、金融引き締めには量的金融緩和の債券購入の停止と利上げの2つがあり、どのように引き締めのプロセスを開始するかも難しい問題です。

そこで、金融引き締めのプロセスとして、米国の引き締めの動きを参考にします。米国は試行錯誤のうえ、最初に債券購入額の減額(テーパリング)を行い、最終的には新規の債券購入を停止、その後利上げを開始しました。

このような流れで金融引締めをしなくてはいけないというルールがあるわけではありません。ECBがプロセスを考えればよいのですが、市場は、なじみのないプロセスだと過剰に反応する傾向があります。

したがって、市場への影響を考えるとECBも同様のパターンを選択すると思われます。なお、欧州では2017年、特に前半に重要な選挙や英国とのEU離脱交渉を控えており、少なくとも2017年前半は金融政策の変更は見送られる可能性があると見られます。

米国の教訓から、テーパリングのアナウンスの後、実際に債券購入額を減額するまで、市場を落ち着かせるのに時間(たとえば半年)をおく必要があると見られます。

以上を考え合わせ、仮にユーロ圏の回復傾向が続くならば、2018年にはインフレ率も上昇している可能性があります。その場合、テーパリングや利上げの実施の必要性が高まることも想定されます。したがって、テーパリングのアナウンスは、早ければ2017年9月のECBの金融政策会合で公表される可能性もあると見ています。

ピクテ投信投資顧問株式会社 梅澤 利文

PR

梅澤 利文
  • 梅澤 利文
  • ピクテ投信投資顧問株式会社
  • シニア・ファンド・アナリスト

東京理科大学工学部卒業後、国内証券会社のシステム運用部門を経て、外資系運用会社(BNPパリバ投信投資顧問(当時)等)で債券、仕組債、オルタナティブ運用を担当。
2010年ピクテ投信投資顧問入社。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。