「あって当たり前」の商品やサービスが消える日は近い!?

人手不足の深刻化がもたらす世界

深刻度を増す人手不足

このところ、人手不足に関する話題が尽きません。ヤマトホールディングス(9064)の宅配便の話は大きな話題になりました。また、ファミリーレストランのロイヤルホストを運営するロイヤルホールディングス(8179)が24時間営業店をゼロにするなど、外食産業でも時間短縮の動きが見られます。今や、多くの分野で人手不足の影響が伝えられています。

4月3日に発表された日銀短観によると、雇用人員判断は、大企業で−15、中堅企業で−26、中小企業で−28と、いずれも大きく不足超過の状態になっています。この不足超過幅は、バブル経済末期の1992年以来の大きさとのことです。また、製造業は−16、非製造業は−31と、非製造業の人手不足感が際立っています。

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外食や小売などのBtoCの業界では、営業時間の短縮といった形で目に見えるのですが、人目につかない分野でも人手不足の影響が出始めています。

人手不足感が強まって下請会社が離反

東京都内にある私が住んでいるマンションでは、毎年3月に管理組合の総会があります。その総会の議案に、今回、「業者を変更する」というものがありました。

マンションの管理は、管理全般を取り仕切るマンション管理会社に委託されます。しかし、その管理会社1社で管理業務のすべてが行われるわけではなく、業務ごとに業者へ委託します。マンションでの平穏な日常生活は、何社もの業者によって支えられていると言えます。

今回の総会では、庭園保守を行う業者と、消防設備保守を行う業者の2社を他社に切り替えるという話があがり、可決されました。両社とも作業の質が低く、改善要請を再三出していたのに改善されなかった、というのが理由でした。もちろん、マンション側が相場よりはるかに安い価格で作業をさせたり、無茶な要求をしたりしているということはありません。

今回問題となったのは、庭園保守の業者は、お願いしていた日時に作業に来ない、または変な時間に突然やってきて適当に作業をして帰る、その上、作業が雑で庭園の木の一部が枯れた、といったようなことが続いたというものでした。消防設備保守の業者についても、似たような感じだったそうです。

どうしてそのようなことになってしまったのでしょうか。

管理会社の担当者によると、何かしらの事情によって庭園保守の業者が使っていた下請会社の多くが離反してしまい、業務遂行能力が大きく落ちていったのではないかということでした。話を聞く限りでは、いろいろと不満がたまってきた中で、人手不足感を背景に、実際に作業を行う下請会社の発言力の方が強まり、離れていってしまったということだったようです。

人手不足の影響が出ている企業の約1割が事業縮小に追い込まれている

身近な例をご紹介しましたが、人を雇えなくなるだけでなく、下請企業を集められなくなって事業が立ち行かなくなる事例は、今後増えていくと考えられます。

独立行政法人労働政策・研修機構が2016年12月に公表した、企業を対象とした「人材(人手)不足の現状等に関する調査」によると、回答のあった2,406社のうち、人手不足が生じている企業は52.1%になったそうです。

人手不足が生じている企業の経営に対する影響として、「需要の増加に対応できない(受注の見送り等)」が約45%、「技術・ノウハウの着実な伝承が困難になっている」が約41%、「事業運営上に支障を来している(遅れやミスの発生、クレームの増加等)」が約37%となっています。

また、約10%の企業は、「事業の縮小が迫られている(事業所の閉鎖、営業時間の短縮、商品やサービスの削減等)」と回答しています。

需要があっても受けられない、クレームが増加するほど顧客満足が低下している、挙句の果てには事業縮小に追い込まれている状況がうかがえます。

供給不足の世界にどう向き合うか

「人口減少」の話となると、とかく、「需要」の減少の話に目が向きがちですが、同時に「供給」の減少のことも忘れてはなりません。両者が同じようなペースで減少すればまだ良いのですが、業界または市場によって、「需要」と「供給」の減少のペースが異なることが想定されます。

もし、「供給」の減少スピードが「需要」の減少スピードより早いと、「需要>供給」となります。価格は上昇しそうなものですが、そもそも数量の増加局面ではないため、「供給できない」、または「供給できたとしても何か(たとえば、品質)を犠牲にせざるを得ない」となってしまう可能性が出てきます。

ものによっては、今まで当たり前のように享受してきた商品やサービスがなくなってしまうことすら考えられます。

もちろん、不足分は輸入すれば良いとか、移民受け入れで対応すれば良いといった考え方もできるでしょう。しかし、規制に阻まれるとか、実現できるまでに時間がかかるとか、多くの現実面での制約条件もあり、解決にはほど遠いことも十分に考えられます。

残念ながら、この問題に関しては明快な解決策はありません。ただし、今後、「この商品やサービスは誰の手によってどのように自分の手元に届いたのか」という視点を持つことが大切になってくると思われます。

商品やサービスを選択する際、今後も安定的に供給できるのか、今の品質水準が保たれるかどうかも念頭に置いておくことをお勧めいたします。

藤野 敬太

ニュースレター

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藤野 敬太

東京大学経済学部を卒業後、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(現日本アイ・ビー・エム)等を経て、2001年から2013年まで、日興アセットマネジメントにて、アナリストおよびファンドマネージャーとして日本株ファンドの運用に従事。
現在は、オフィス・ラコルドの代表として、ファミリー向け・ファミリービジネス向けのコンサルティングおよびアドバイザー業務を展開する。
CFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、シニア・プライベートバンカー(日本証券アナリスト協会認定)。日本ファミリービジネスアドバイザー協会執行役員・フェロー