投信1編集部によるこの記事の注目点

  • 2016年、世界では太陽光発電(PV)の導入量が前年比5割増である一方、国内は2割減となっています。
  • 2016年の導入量で最も多いのが中国で、次いで米国となり、新興国でも導入が加速しています。
  • 日本のパネルメーカーは苦戦をするも、HEMS、蓄電池、燃料電池、環境対応車などとの連携といった統合化で他社との差別化を図る動きが特徴的です。

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年々、市場規模を拡大する太陽光発電(PV)。脱化石エネルギー、CO2削減、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)といった再エネ導入支援策などがその背景にある。2016年も前年比2桁のプラス成長で推移し、国別では中国、米国そして日本が需要国トップ3だ。一方で、国内市場は成長に陰りが見え始めている。さらに、国内PVメーカーの世界市場におけるプレゼンス低下も著しい。本稿ではPV市場動向について述べる。

16年世界市場はプラス成長

PVの業界団体であるPVマーケット・アライアンス(PVMA)によると、16年におけるPV導入量は75GW。これは、15年の51GWに対して5割増、14年の40GWに対して9割増となる。最大市場である中国の導入量は34GWで、前年比126%増となった。国別シェアでは45%を占め、累積では77GWに達した。PVMAによると17年末までに100GWに達すると予測している。

中国に次いで導入量が多かったのが米国で、16年は13GW導入した。第3位は日本で16年は8.6GWを導入した。ただし、15年の10.8GWに対しては2割減となった。17年も鈍化するとしており、7.5~8.5GWにとどまると予測している。

欧州では英国、ドイツ、フランス、トルコなどが市場を牽引し、16年は合計6.5GWとなった。世界全体に対するシェアは10%。

新興市場では、インドが5GW導入するなど、15年の2GWから導入量を大幅に増やした。インド以外の新興市場も導入が加速しており、16年は7GWの導入を果たした。

一方、PVMAは17年の導入量が、悲観的なシナリオで65GW程度に減少すると予測している。導入量の伸び悩みで、PVモジュールの供給過剰による価格下落がさらに進む可能性もあるとしている。

国内はマイナス成長の見込み

では、国内市場はどうか。太陽光発電協会(JPEA)によると、15年度における国内太陽光発電出荷量は7136MW(7.1GW)。四半期別では、15年4~6月期(第1四半期)が1612MW、7~9月期が1777MW、10~12月期が1765MW、16年1~3月期が1982MWで、いずれの四半期でも前年同期比マイナス成長となった。これに対し、16年度は上期まで発表しており、4~6月期が1185MW、7~9月期が1665MW。通年度ではマイナス成長となる見込みだ。

15年度における買取電力量は311億kWh。容量別では10kW以上が246億kWh、10kW未満が65kWh。国内全体の電力量に占める比率は3%程度。

PV認定状況ではFITが施行された12年7月~16年9月までで8万612MW。容量別比率は10kW未満(住宅用)が6%(111万3072件)、10~49kWが33%(84万8825件)、50~499kWが6%(1万1991件)、500~999kWが6%(7011件)、1000~1999kWが16%(8377件)、2M以上が33%(1372件)。

これに対し導入状況は同3万718MW。容量別比率は10kW未満(住宅用)が14%(96万3178件)、10~49kWが33%(41万502件)、50~499kWが10%(1万2387件)、500~999kWが10%(4652件)、1000~1999kWが22%(4595件)、2MW以上が11%(274件)。

PVメーカーでは台湾のジンテック・エナジー、モーテック・インダストリーズ、ネオ・ソーラー・パワー、中国のジンコ・ソーラー、トリナ・ソーラー、インリー・グリーン・エナジー、JAソーラー、韓国のハンファセルズ、米国のファースト・ソーラー、カナダのカナディアン・ソーラーといった海外勢が強く、これらでトップ10を形成している。一方、日本メーカーではシャープ、京セラ、パナソニック、三菱電機などが参入しているが、圏外となっている。そして、海外勢は多くが生産能力を増強しており、その差は開く一方である。

日本メーカーが低迷している理由の1つにFIT調達価格の下落が挙げられる。制度が始まった12年度は40円/kWhに対し、16年度は24円/kWhにまで下落した(10kW以上のケース)。また、海外メーカーが国内市場に積極的に参入しており、そのプレゼンスは拡大傾向にある。JPEAによると、国内市場における海外メーカー比率は14年7~9月期で29%だったのに対し、16年7~9月期は43%にまで伸びている。

一方で、日本メーカーはHEMS、蓄電池、燃料電池、環境対応車などとの連係といった独自戦略で他社との差別化を図っている。例えば、京セラはHEMSや蓄電池をセットで提供することで最適なエネルギー利用を支援している。17年春にはAIを搭載したHEMSも導入する予定だ。生活パターン、天気予報データなどを活用することで最適制御できるという。同社はまた、従来の売電から自家消費に移行するなかで、長期安定稼働に適した品質・性能の高いPVモジュールを提供している。

家庭用蓄電池需要は増加傾向

なお今後、家庭用蓄電池市場は大幅に拡大することが見込まれている。その背景には家庭用PVの余剰買取期間の終了がある。余剰買取期間は10年間だが、19年度以降、毎年10万軒単位で発生すると見込まれる。

また、昨今の家庭用蓄電池の価格下落も追い風となっている。現在の中心価格帯は150万~250万円だが、100万円以下の製品も続々と発表されている。最近では再生可能エネルギー由来の電力を取り扱う新電力事業者のLooopが89万8000円(税別、施工費・通信費等別途)の「Looopでんち」を製品化した。低価格化の最大の要因は電池容量を4.0kWhに抑えたことにある。一般的には5.0kWh以上が多いが、同社がNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)助成による実証実験を実施した結果、2.5kWh程度しか活用されていないことが判明したという。

以下、主要国内PVメーカーの直近に発表された業績を示す。

シャープの16年度第3四半期(4~12月)におけるエネルギーソリューション部門(PV関連事業)実績は減収赤字となった。売上高は前年同期比35.2%減の734億円。アジアのEPCは堅調だったが、国内の住宅用・産業用の需要縮小で減収となった。一方で、営業損益は127億円の赤字。4~6月期にポリシリコンの追加評価引当金44億円を売上原価として計上したことで63億円の営業赤字となったが、7~9月期は14億円の黒字に回復した。一方で、10~12月期は79億円の赤字を計上した。

パナソニックの16年度第3四半期(10~12月)実績におけるPV事業は減収減益。国内市場の縮小で売上高が大きく減少した。PV事業を含むエコソリューションズ部門売上高は3928億円(前年同期比3%減)、セグメント利益は252億円(同水準)だった。国内住宅着工件数は回復基調だが、国内PV市場の縮小で住宅向けPVの販売が大きく減少し、営業利益についても減少した。

16年度通期の同部門売上高は1兆5800億円、セグメント利益は790億円を見込んでいる。PV事業では今後、国内市場の販売強化を図るとともに、米テスラと協業して海外展開を加速するなど、グローバル市場での競争力強化を目指す。

三菱電機の16年度第3四半期(10~12月)業績におけるPV事業は大幅な減収になった。住宅用は堅調だったが、産業用が大幅に落ち込んだ。PV事業の詳細は公表していないものの、10~12月期のPV事業の売上高は前年同期に対し3割程度減少したもよう。住宅用の販売は前年同期比で1割以上増加したが、産業用が6割以上減少するなど落ち込みが大きかった。

今後、国内市場では新築住宅に加えて、既築住宅への販売強化に取り組むとしているが、第4四半期も厳しい事業環境が続くと見ており、16年度のPV事業売上高は15年度比で3割程度減少する見通しだ。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 東哲也

投信1編集部からのコメント

グローバルのPV市場が拡大する一方で、日本ではFIT調達価格の下落により市場が低迷しています。そうした環境の中、国内では再生可能エネルギーをシステム全体で有効活用するモデルが進められています。今後さらにマイクログリッドの考え方が普及すれば、日本勢が有利に展開できる局面もあるかもしれないという期待が持てます。

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