「有事の金買い」にならなかった1週間

先週(2017年4月3日-4月7日)の世界の株式市場は日米欧株が下落しましたが上海株など新興国市場の一部は上昇し、全体としてはまちまちに終わりました。主要市場の週間騰落率は、現地通貨ベースで上海総合が+2.0%、S&P500が▲0.3%、独DAXが▲0.7%、TOPIXが▲1.5%でした。

先週のポイントは、以下の3点です。

  1. 北朝鮮、シリア情勢の緊迫によって債券買い、ドル買い、原油価格上昇などのリスク回避の動きが出た
  2. しかし、株式市場への影響は限定的だった
  3. 米国の非農業部門雇用者数増加が弱めだったにもかかわらず市場への影響が限定的だった

ミサイルが飛び交い、ロシアやスウェーデンでテロがおき一時的にリスクオフになって不思議はない一週間でしたが「有事の金買い」にはなりませんでした。先週の市場の動きはこのリスクオフ要因と通常の経済要因をふまえて複眼的にみておくべきでしょう。

純経済的にみると、米FRBが2017年後半以降バランスシートの縮小に向かう可能性が高まりましたが、これは利上げを先送りするものではないという見方が幹部から示されました。欧州中央銀行は現状の緩和的金融政策を当面継続するとみられるため、結果としてドルが対ユーロで上昇し、欧州の長期金利が目立って低下したと理解できます。なお、米国の非農業部門雇用者数は1月、2月が下方修正され、3月は市場の予想を下回る低めの数値となりましたが、それほど材料視されずに週を終えたと言えそうです。

先週の米国株式市場ではテスラ(TSLA)の時価総額がGM(GM)、フォード(F)を超えたことが話題になりました。ちなみに先週テスラ株は+9%上昇しましたが、GMは▲5%、フォードは▲4%下落しています。地政学リスクやトランプラリーの賞味期限切れが気になる米株市場は先々週アップルなどに活路を見出しましたが、先週はテスラに照準が移りました。

アウトルック:米3月の雇用統計を消化する一週間へ

今週(2017年4月10日-4月14日)はリスクオフ要因が払拭されていくと思われます。そのときに米国の最近の雇用状況をどう消化するかがポイントになりそうです。

先ほど述べたように先週の相場は一部リスクオフ要因が混在していましたので、弱めになった米国の3月の雇用統計を金融市場は十分に消化しきれなかったのではないかと思います。

今週予定されるイエレンFRB議長の証言、米国の3月の卸売物価指数、消費者物価指数、小売売上高などと照らし合わせながら、米国の金利シナリオに変化が出るのかがポイントになるでしょう。週後半にはじまる米銀決算と株価の反応も気になるところです。ただし先週のデータをみると欧州、アジアの景気指標は悲観すべきものではありません。株式市場全体の熱量は相応に維持されると期待したいです。

椎名 則夫