三菱電機は宇宙を目指す-「防衛関連相場」で蚊帳の外なのは幸い?

平和利用のための人工衛星新工場建設を発表

Alexander Tolstykh / Shutterstock.com

人工衛星の新工場建設を発表

2017年4月7日、三菱電機は鎌倉製作所内に人工衛星増産のための新しい生産棟を建設すると発表しました。また、同日、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)から「技術試験衛星9号機」(注1)のプライムメーカーに選定されたことも発表しています。

同社では、独自のIoT技術を活用したサプライマネジメントシステムである「e-F@ctoryコンセプト」を新工場に導入して生産効率を向上させ、品質・工期・コストの競争力を強化する考えです。また、新工場の竣工は2019年7月、稼働開始は同年10月の予定で、稼動後は並行して製造できる人工衛星が従来の10機から18機に高められる予定です。

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これにより、年間売上高は2016年3月期実績の約1,100億円から2022年3月期には約1,500億円を目指すとしています。

注1:「技術試験衛星9号機」には、通信衛星の高速大容量化需要に対応、軽量化・オール電化を実現、衛星打ち上げ後の軌道到達時間が海外競合のオール電化衛星と比べて短いなどの特色があります。

宇宙ビジネスにおける市場シェア拡大に期待

新工場への投資額は約110億円の予定とされています。同社全体の設備投資金額は2016年3月期実績が2,125億円、2017年3月期計画が2,450億円ですので、相対的にはそれほど大きな金額ではないということになります。

とはいえ、この記事『【投資対象としての宇宙機器産業:国家戦略化で新たな胎動】』にあるように、宇宙ビジネスの市場規模は世界全体で20兆円程度と巨額な産業です。

また、商用通信衛星に限っても、今後は自動運転技術やIT農業、インフラ開発など非軍事分野での展開が可能であるため、需要は国内外で堅調に推移することが見込まれる環境です。さらに、これまでの同社の実績や技術力などから今後のシェア拡大が期待できることもあり、今回の投資決定は注目できるニュースではないかと考えられます。

ちなみに、これまでの三菱電機の通信衛星での実績は、静止気象衛星「ひまわり7・8・9号」、日本初の国産商用通信衛星「スーパーバードC2」、高精度の位置情報提供サービスを目指す準天頂衛星システム「みちびき」、トルコの国営衛星通信会社から受注した通信衛星「Turksat-4A/4B(トルコサット4A/4B)」などが挙げられます。

その技術力の高さは、上述したJAXAからの「技術試験衛星9号機」の受注からも読み取れると思います。

三菱電機は防衛関連事業も手掛けるが株価はほぼ無反応

話は少しそれますが、最近の株式市場では北朝鮮やシリアでの緊張の高まりから防衛関連銘柄が急騰しています。具体的には、石川製作所(6208)、日本アビオニクス(6946)、日本無線(6751)、重松製作所(7980)などの銘柄です。

一方、三菱電機も防衛関連事業を手掛けていますが(注2)、同社の株価は、ここ数日間ほとんど動意づいていません。その理由は明確ではありませんが、おそらく、防衛省向けの売上高が全体のなかではそれほど大きくはないことや、地政学的リスクの高まりによる円高のほうをむしろ株式市場は懸念していることが想定されます。

いずれにせよ、地政学的リスクを背景にした一部の関連銘柄の上昇のほうが「思惑買い」に過ぎず、一時的な株価の上昇に留まる可能性が高いことを考慮すると、今回、「防衛関連銘柄」として注目されなかったことはむしろ歓迎すべき動きとして捉えられます。

同社の「宇宙関連ビジネス」への取り組みは、現時点ではまだ株式市場では消化不良である可能性が残りますが、今後も引き続き注視していきたいと思います。

注2:防衛関連は、衛星ビジネスと同じ「情報通信システム」セグメントに含まれています。また、三菱電機の平成27年度(2015年度)の防衛装備庁からの受注額は1,083億円となっており、川崎重工(7012)、三菱重工(7011)、IHI(7013)に次いで第4位となっています。

三菱電機の過去10年間の株価推移

和泉 美治

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和泉 美治

同志社大学文学部卒業後、エルコインターナショナル (現:京セラエルコ) に入社。英国バーミンガム大学にてMBA取得。
その後UBSフィリップスアンドドリュー証券 (現:UBS証券) に入社し、調査部にてエレクトロニクスセクターを担当。2002年より2013年までJ.P.モルガンにて産業用エレクトロニクス及び民生エレクトロニクスセクターを担当。
日本証券アナリスト協会検定会員。