雲行きの怪しい米経済、自動車版サブプライム問題への懸念も

新車販売や雇用が減速。米1-3月期GDP成長率は1%以下に?

7日に発表された米雇用統計では雇用者数の増加が予想を大きく下回り、やや衝撃的な結果となりました。その陰に隠れてしまいましたが、3日に公表された米新車販売も予想を大きく下回っています。

今回は先週発表された3月の米新車販売と雇用統計の結果を中心に、米経済のポイントを整理してみました。

米新車販売は3カ月連続前年割れ、自動車版サブプライム問題への懸念が強まる

3月の米新車販売台数は季節調整後の年率換算で1,660万台と、事前予想の1,720万台を大きく下回りました。

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米新車販売は景気の回復を背景に2016年まで7年連続で増加してきましたが、3月まで3カ月連続で前年割れとなっており、2017年は減少に転じる可能性が高まっています。

米自動車業界は、金利の上昇、自動車ローン遅延率の上昇、在庫の増加の3重苦となっていますが、なかでも注目されているのがローン遅延率の上昇です。自動車版サブプライム問題はこの2、3年の間しばしば警鐘が鳴らされてきたテーマではありますが、いよいよ問題が表面化している模様です。

ニューヨーク連銀の家計調査によると、自動車ローンの90日以上の遅延比率は10-12月期が3.8%と、7-9月期から0.2%ポイント上昇し、悪化が続いてます。

米国では、2013年以降、サブプライム自動車ローンの証券化が急増していることが懸念されています。10-12月期には1,420億ドルの自動車ローンが証券化されており、2016年は過去最大の発行額となりました。

モルガン・スタンレーによると、証券化されたサブプライムローンのうち、さらに信用力の低いディープサブプライムローンの比率が32.5%と2010年の5.1%から大きく上昇しており、この点も気がかりです。

S&Pによると、サブプライム自動車ローンの1月の貸倒率は9.1%と、前月の8.5%から上昇し、前年同月の7.9%も大きく上回っています。債権の回収率が悪化しており、デフォルトした借り手からローン業者が回収した自動車の再販価格が低下していることも状況をさらに悪化させている模様です。なお、サブプライム自動車ローンの回収率は34.8%と、2011年以降で最悪の数字となっています。

米雇用の急減速、天候要因を考慮しても減速には変わらず

3月の米雇用者数は9.8万人増と事前予想の18万人増を大きく下回り、急減速となりました。ただ、2月が暖冬となった一方で3月の雇用統計調査週に米北東部が大雪に見舞われたことから、今回の数字は天候要因が大きく影響している可能性が指摘されています。3カ月平均では17.8万人増となることから、トレンドは堅調との見方も多い状況です。

とはいえ、平均時給の伸びは2.7%と前月の2.8%から低下しており、賃金の伸びは上昇・下降どちらのトレンドもうかがえず、横ばいの動きを継続中です。また、3月の労働市場情勢指数は+0.4と雇用情勢の改善・悪化の分岐点となるゼロ近辺にありますので、可もなく不可もなくといった状況と言えそうです。

以上を踏まえると、天候要因で片付けるのはやや危険であり、労働市場は急減速とは言えないまでも改善の勢いが減速している可能性は排除できない模様です。

個人消費低迷ならGDPの伸びも大きく鈍化の公算

米自動車業界では、インセンティブ(販売奨励金)を高めているにもかかわらず、販売が減り、在庫が増えている状況ですので、企業利益が圧迫されることへの懸念が強まっています。また、遅延率や貸倒率の上昇で自動車ローンの審査が厳格化し、販売が抑制される恐れもありそうです。

新車販売は個人消費の先行指標とされており、販売の減少が続くようだと個人消費の低迷も長期化する恐れがあります。米実質個人消費は年初から2カ月連続でマイナスとなっており、4月7日現在のGDPナウは1-3月期の米GDP成長率を年率0.6%と予想しています。

個人消費の実質マイナスとは、たとえば、1個100円のりんごを10個買っていたところ、120円に値上がりしたので9個に減らしたということです。名目での消費額は1,000円から1,080円に増えていますが、生活は貧しくなっています。

金融正常化の動きにも警戒、雇用の減速はむしろ好都合?

3月の米雇用統計は予想からは大きく下振れましたが、減速トレンドへの回帰と考えれば悲観的になる必要はないのかもしれません。ただ、労働市場の改善も力強さを失いつつあるなかで個人消費が失速しているにもかかわらず、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融正常化への動きを進めていることは警戒すべきでしょう。

イエレンFRB議長は3月の講演で人口の増加を吸収するのに必要な雇用者数の増加は月7.5万人から12.5万人だと述べており、3月の数字は見事なまでにど真ん中となりました。

また、10日の講演でFRBの政策目標が景気の回復から現状維持へとシフトしていることも指摘しています。景気は十分に回復しており、巡航速度を維持することが息の長い回復につながるとして金融政策の正常化を肯定している模様です。

これらの発言を踏まえると、3月の雇用統計の数字はFRBにとっては理想的な数字だったのかもしれません。

投信1編集部

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投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。