“家賃収入=自分の収入”ではない!

不動産投資の魅力はなんといっても安定した家賃収入です。ただし、家賃収入がそのまま全部自分のものになる、なんてことはありませんよね。

実際には、家賃収入から管理費や設備費などの経費、借入金の返済などを差し引いた金額が手残り金額(税引き前キャッシュフロー)になります。さらにそこから税金が引かれ、税引き後キャッシュフローがあなたの収入になるわけです。

そこで税金を払ってお金が残っていればいいのですが、場合によっては課税所得に税率をかけた納税額が手残り金額(税引き前キャッシュフロー)より多くなってしまうこともあります。いわゆるデットクロスです。

気になる方はこちらの記事『不動産投資の落とし穴、「デットクロス」に陥らないためには?』をお読みください。

デットクロスが発生する原因はいくつかありますが、そのうちの一つが『元金返済』です。

なぜ元金返済がデットクロスの要因になるのか、なぜ投資のスタート時点では気が付けないのか。今回はそのあたりを解説します。

支出になるのに経費にならない元金返済とは?

前回の記事、『不動産投資の命運を分ける減価償却のインパクト!』の中で、収支計算と損益計算の違いの一つとして減価償却についてお伝えしました。

減価償却は、「支出がないのに経費になる」という、投資家にはありがたい存在でしたね。

元金返済は、減価償却の反対で「支出があるのに経費にならない」というもの。一見すると理不尽です。

経費にできないということは、たくさん元金返済をしても税金の計算に考慮されないということです。仮に現金がなくなっても、税金はしっかりと取られてしまいます。

不動産投資をされる方のほとんどは銀行から融資を受けますが、実は融資条件で投資プランの大部分が決まってしまいます。

銀行融資の返済を「毎月いくら」と、ひとまとめにされている方もいると思います。キャッシュフローの計算をする際はそれでもいいのですが、税金の計算をする場合は返済額の内訳が利息部分と元金部分に別れていることを理解する必要があります。

銀行融資の返済方法には、元金均等返済と元利均等返済があります。元金均等も元利均等も元金と利息を銀行へ支払いますが、毎月の返済の割合が異なります。

下図のように、元金均等の場合、毎月の「元金返済」は一定になります。一方、元利均等の場合、毎月の「返済総額」が一定ですが「元金返済」は毎月増えていきます。

いずれの返済方法も、返済初期には返済総額に占める利息の割合が高く、徐々に元金の割合が増えていくのが面白いところであり、気を付ける必要がある点でもありますね。

お金は払っているのになぜ経費にならない?

さて、元金返済が経費にならないのは、ちゃんとした理由があります。

バランスシートはご存じですよね。企業や事業で資産残高を把握する帳簿で、貸借対照表とも言います。大まかな構成は、資産=負債+純資産 となっています。

銀行から融資を受けて物件を購入する場合、その借入金はバランスシート上「負債」に当てはまります。

その後借入金の返済をすると、元金返済分は「負債」を減少させるだけで、税金を算出するための損益には関係しません。簡単に言えば、ただ単に借りたものを返しているだけなので、収入にはつながらない(=経費とみなされない)のです。

逆に言えば、銀行から融資を受けたときに借り入れた金額がそのまま収入にはならず、課税されないのは当たり前ですよね。

というわけで、課税所得を計算するP/L(損益計算書)には、元金返済は一切登場しません。売却して初めて元金返済分が手持ち現金に変わるのです。

物件売却して初めてわかる元金返済の成果!

不動産投資家が元金返済のメリットを享受するのは売却時です。当然のことなのですが、売却するときに残債が減っていればいるほど手残りの金額が多くなります。

毎月少しずつ元金返済をして残債が減っているということは、説明していた通り税金の計算には関係がありません。しかし、キャッシュフロー上は売却時のための「含み益」を貯めている状態と言えます。

物件をフルローンで購入した場合、購入価格=銀行融資額(残債)という状況ですが、返済が順調に進んでいくと、売却可能額>銀行融資の残高(残債)となり、売ればお金が残ります。式にすると下記のようになります。

売却手残り(税引き前)=売却価格-残債-諸費用(仲介手数料など)

ただし、あくまでも残債以上で売却できる相場であることが前提になりますので、ご注意ください。

また、譲渡税も忘れてはいけません。現金の出入りと違う計算式で税金が算出されるからです。譲渡税には要注意ということを覚えておいてください!

利益を予測できるのが不動産経営の良いところ

本日は色々な話がありましたので、改めてポイントをまとめます。

・元金返済は負債の減少なので経費にならない
・返済が進むと「含み益」ができる
・ただし譲渡税は別計算なので要注意

不動産投資は、物件の購入条件と融資条件で、出口までの投資プランがほとんど決まってしまいます。

ですが、経費や見込みの収入額、元金返済や利息の推移などの仕組みを理解していれば、自分で損益の計算を行い税引き後のキャッシュフローを予測することが可能です。

税引き後のキャッシュフローがわかると自分で不動産投資の事業計画を立てることができます。自分で事業計画を立てシミュレーションし、行動することが不動産投資で儲ける第一歩となるのです!

次回は借入金返済につきものの、利息についてより詳しくお話します。

以上、株式会社コン・パスでした。