ニッセン買収はセブンの失敗?

セブン&アイ・ホールディングス(3382)の2017年2月期決算が先日発表されました。連結営業利益は対前年度比+4%増の3,646億円となりましたので、好決算と言えるでしょう。

しかし、同社は多くの事業部門を抱える小売コングロマリットです。利益の牽引役はコンビニエンスストア事業ですが、その他の事業は必ずしも十分な利益を出していると言えないことはイトーヨーカ堂の苦戦でご存じの通りです。

実は事業セグメントを一つ一つ見ていくと、一つだけ赤字の事業があります。これがニッセンホールディングスを擁する通信販売事業です。同社は2013年12月にニッセンホールディングスと業務・資本提携を発表し、約133億円を投下して2014年2月期に連結子会社化しました。その後の損益の推移を同事業のセグメント利益で追うと次の通りです。

2015年2月期 ▲75億円(赤字)
2016年2月期 ▲85億円(赤字)
2017年2月期 ▲151億円(赤字)決算期変更に伴い14カ月連結

いかがでしょうか。買収当時、同社はニッセンをオムニチャネル戦略推進の上で必要な会社だと判断していたのだと思われます。しかし、結果は思うような収益を上げることはかないませんでした。シナジー効果が他事業で顕著に表れているという兆候もありません。

こうした経緯でニッセンは2016年10月に上場廃止となり、ニッセンの外部株主にはセブン&アイ・ホールディングスの株式が交換で割り当てられ、完全子会社化されました。ニッセンは同社のM&Aの失敗事例といって差し支えないでしょう。

脱・総合、まずは大きめの婦人服のECモール

ECが急速に台頭するなか、カタログ通販ビジネスがなかなか難しいのはご承知の通りです。2018年2月期の同社の計画を見ても、通信販売事業のセグメント利益は▲67億円の赤字とされています。

赤字額縮小のカギを握るのは「脱・総合カタログ通販」「サイズ事業戦略の強化」です。同社の2017年2月期決算説明資料によれば、女性向けラージサイズのファションECモールが重要な取り組みとして紹介されています。

少し詳しく見てみると、婦人服市場においてLLサイズ以上の人口構成比率と市場規模には大きな乖離があるうえ、ニッセンはこの市場で相対的に優位な立場にあるとのことです。

そこで、2017年4月6日にこのサイズ商品に特化したファッションECモールを開設し、国内39ブランドが集結したモールは“Alinoma”と名付けられました。キャッチフレーズは「ありのままの“自分”をもっと素敵に!」です。

ライバルのファミマはシェイプアップのライザップと提携

これだけ赤字が拡大してきたニッセンの戦略プロジェクトが、“ありのまま”に由来するサイト名になったのはなにか不思議な気がします。

しかし、この事業戦略は自然体で漠然と建てられたというよりも、しっかり優位に立てる市場にフォーカスするよく練られた内容となっています。大きめの服は単価も高めで、うま味のある商売になる可能性を秘めています。

本件で、もうひとつ興味深いのは、同社のライバルであるファミリーマートがシェイプアップで有名なライザップとのコラボ商品を強力にプッシュしていることです。

自然体でいくのか、節制してダイエットするのか。流通大手の力点が交錯していて、今後も目が離せません。

LIMO編集部