【日本郵政】巨額減損へ? 個人投資家が押さえておきたい3つのポイント

減配リスクには要注意

巨額減損発生か?

2017年4月20日、メディアの報道を受けて日本郵政(6178)がプレスリリースを発表しました。

それによると「(当社子会社)トール社に係るのれんの扱いについては、同社の業績が計画に達していないことから、減損の要否を含め、現在、検討中」とあり、減損リスクを否定していません。一部報道では数千億円にもなるとあります。まず、のれんの発生の経緯からおさらいしてみましょう。

豪トール社の買収で巨額のれんが発生

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日本郵政は2015年11月に上場しましたが、それに先立つ2015年5月に日本郵政の100%子会社である日本郵便が豪州物流企業であるトールホールディングスの株式を買収しました。それまで全くトール株を保有していなかったのですが、一気にその株式100%を買い付け、完全子会社化しました。

買収をするときには、買い手はどうしても買収を実現したいと考えますので、トール社のバランスシートの純資産に上乗せした金額で買収を進めてしまいます。買収時に上乗せして支払った金額を「のれん」といいますが、2016年3月末時点で約4,745億円となっていました。

こののれんは、トール社が当初の目論見通りにしっかり収益を出していれば、このケースでは20年間均等金額で費用を計上すればよいことになります。

巨額のれんが減損に?

しかし、買収後、トール社の業績は当初の目論見を外れて低調に推移しました。2016年4‐12月期の同社の営業利益(EBIT)8,300万豪ドルとなり、対前年同期比実質▲1億7,200万豪ドル、率にして▲67%減少しています(IFRSベース)。IR資料によれば、資源関連の景気回復の遅れなどが営業収益に響いているとされます。

同資料を見ると、買収直後から2期連続(4‐12月ベース)で減収減益基調にあり、買収当初の目論見は残念ながら外れたと言えそうです。そのため、現在のトール社に本当にのれんに見合う価値があるのかを見直す必要に迫られました。それがないとなれば、一度にまとめて「損出し」することが想定されます。

追加負担が必要か?

では、今後減損が発表される場合のポイントを考えましょう。3つあると思います。

第1は、減損によってどの程度財務が傷み、負担が発生するかです。

のれんを一括で減損するとなれば、巨額になるため損益には大きな影響が出ます。ちなみに、2017年3月期の親会社株主に帰属する当期純利益は同社の予想では3,200億円とされていますが、大きな下方修正は避けられないと思います。トール社の直接的な親会社である日本郵便の純資産は2016年12月末現在で約1.2兆円ですので、こちらにも少なからず影響が出そうです。

のれんの減損だけを考えておけばよいのかも気になります。今後追加でどんな資金負担があるのか、現地をしっかりコントロールし、建て直しをリードする人材を確保できるのかが重要になってくるでしょう。

日本郵政の成長戦略の再構築

第2は、日本郵政の中長期的戦略の練り直しです。

現在のグループの構造は、日本郵政のもとに日本郵便(トール社を抱える)、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険がぶら下がるかたちです。しかし、郵政民営化の枠組みに従うと、日本郵政がゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式を売却して資本関係を薄めていくことが求められています。

しかし、日本郵政の利益はゆうちょ銀行とかんぽ生命保険に依存しています。たとえば、2017年3月期経常利益の会社予想7,700億円のうち、日本郵便の寄与額は270億円とされ、その寄与率は約4%にすぎません。

しかも、日本郵便の収益は金融窓口事業といってゆうちょ銀行やかんぽ生命保険から得る手数料収入が主で、郵便・物流事業は儲かっていません。日本郵便がトール社を買収したのは、新しい利益源を確保するという強い思いが背景にあったと言えます。

トール社が思うような収益を上げられないとなると、日本郵便と日本郵政は事業戦略の抜本見直しを迫られることになります。2017年度も財務省が保有する日本郵政株を一般投資家に売却する第2次売出が予定されていますが、これを成功させるためにはトール社の現状を踏まえて納得性のある新しいストーリーが必要になるはずです。

上場時の売出価格1,400円を下回る株価。配当は大丈夫?

最後に、配当の行方です。

2017年4月20日の株価は前日比約3%下落の1,313円で終わりました。これは日本郵政が上場したときの売出価格1,400円を下回っています。日本郵政の上場に先立つ売出に応じた多くの個人株主は、含み損を抱えることになりました。

個人株主が頼りにしているのは3.8%の配当利回りでしょう。日本郵政は2017年3月期の一株当たり利益を約78円と想定し、それに対して年間配当を一株50円としていますので、配当性向は50÷78=64%となります。

しかし、今回ののれんの減損が行われれば配当性向が100%を超える事態も想定されます。仮に減配になったり、あるいは新年度以降減配になるのであれば個人株主には打撃になると思います。

財務省の売出も控えるため、さすがに減配は何が何でも避けると思いますが、それだけに万が一減配をするようであれば要注意です。配当の行方には大きな関心を払っておきたいと思います。

投信1編集部

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