ビジネスリュックでも注目、地域ブランドで窮地を脱した豊岡かばん

地域活性化を超え、豊岡鞄や今治タオルなどが世界のブランド目指す

写真はイメージです

国内のかばん製造品出荷額の約7割のシェアを誇る豊岡市

20代、30代の男性を中心に、ビジネス用にリュックを使う人が増えています。カジュアル化が進んでいることも要因の一つでしょう。自転車で通勤するにもリュックなら便利です。ネクタイ姿にリュックという人も珍しくありません。

以前はスポーツ用のものをビジネスに流用したり、ブリーフ型のバッグにリュックストラップが付いたものを使ったりしている人が多かったようですが、最近では、最初からビジネス用リュックとして作られている商品が数多く登場しています。

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中には、ノートパソコンを収納するために、クッションを備えた商品もありますが、主流は薄型のようです。企業でのペーパーレス化が進んでいることに加え、自宅に大量の書類を持ち帰るような働き方は、はやらないということでしょうか。ビジネスバッグも時代の流れを反映していますね。

ところで、国内でバッグ(かばん)の生産が盛んなところはどこか知っていますか。兵庫県の豊岡市です。市内には180社以上のかばん関連の企業が存在し、国内の製造品出荷額の約7割のシェアを誇ります。上述のビジネスリュックの需要も伸びているそうで、地元では対応を強化する方向です。

「豊岡鞄」のブランドを訴求し、課題解決に取り組む

兵庫県鞄工業組合によれば、豊岡かばんはもともと、湿地帯に生えていたコリヤナギを使った柳細工で作られたカゴがルーツだそうです。その歴史は古く、「古事記」にもその表記があるほどです。

大正以降はその伝統技術と流通経路を基盤に、新素材への挑戦とミシン縫製技術の導入により、国内トップのかばんの生産地となりました。

いわば2000年以上の歴史がある豊岡かばんですが、高度経済成長時代の終焉、円高による輸入品の増大などにともない、窮地に追い込まれます。最盛期には300を越えるかばん関連企業が集まり、全国生産の80%のシェアを占めるまでに発展しましたが、2000年代初めには、兵庫県鞄工業組合の組合員数、生産高は、3分の1近くまで激減してしまいます。

これらの課題を解決するために、兵庫県鞄工業組合を中心として取り組んだのが「豊岡鞄」ブランドの訴求です。2006年に特許庁は「地域団体商標制度」を創設しました。地域の特産品を商標として使える制度です。「豊岡鞄」は同年、日本で最初にかばん部門の地域団体商標として商標登録されています。

拠点施設やECサイトの開発、さらには人材育成まで取り組む

「豊岡鞄」のブランド力を高めることにより、一時は3分の1近くまで減少した生産高は再び7割までシェアを復活しました。

もちろん、単に「豊岡」の名前を付ければいいというわけではありません。「豊岡鞄」を名乗るためには、企業審査と製品審査の2段階の審査を受けなければならず、さらにブランドコンセプトを守るためのマニフェストに署名して内容を順守することが求められます。

「豊岡鞄」には保証書が入っており、そのかばんを製造した企業名・認定製品番号などが記載されています。これらの取り組みが消費者の信頼につながり、「豊岡鞄」がかばんのトップブランドの一角に育ったのでしょう。

2014年には官民が連携し、市内でかばん店が多く集まる宵田商店街(愛称:カバンストリート)に、複合施設「トヨオカ・カバン・アルチザン・アベニュー」を立ち上げました。豊岡かばんの情報発信拠点として海外の旅行客に人気の観光スポットになっています。

ECサイトやSNSでの情報発信も活発に行っています。特筆すべきは、同施設には、かばん職人を養成する1年制の専門校「トヨオカ・カバン・アルチザン・スクール」までがあることです。これまで3期、20人以上の卒業生を輩出し、そのほとんどが豊岡市内のかばん企業に就職しているそうです。

豊岡市の取り組みは、「産地」を売って地域を活性化する好例と言えるでしょう。同様の取り組みは、「今治タオル」の愛媛県今治市、金物・洋食器の「燕三条」の新潟県三条市・燕市などでも行われています。これらの地域ではいずれも、国内はもとより、世界市場を視野に入れたブランド構築を進めています。さらなる成長に期待がかかります。

下原 一晃

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下原 一晃

マーケティング会社、リクルートなどを経て、PRプランナー・ライターとして独立。
株式投資、投資信託をはじめとする資産形成や、年金、相続などに関する情報提供を行っている。あわせて、個人投資家がテクニカル理論を身に付けるためのヒントや知識の紹介にも取り組んでいる。
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA)。