いまさら聞けない! 投資信託のベンチマークは何のためにあるの?

ファンドの優劣をあぶり出すモノサシ

前回の記事『いまさら聞けない! 投資信託のベータとアルファって何?』で、投資信託(ファンド)のパフォーマンスを分析するツールであるベータ(β)とアルファ(α)について説明しました。今回は、そこでも軽く触れたベンチマークについて詳しく説明します。

ベンチマークはパフォーマンスの指標となるもので、多くの場合、日本株ならTOPIXや日経平均、米国株であればS&P 500種など、市場の構成銘柄のほとんどを含む指数を使います。ある市場に全額投資し、βのリスクを1取れば、その指数の騰落率にファンドのパフォーマンスが追随することになり、その意味で、運用者(ファンドマネージャー)が上手くもなく下手でもない中立的な結果とみなされるからです。

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ベンチマークの役割

A. パフォーマンスのうちα部分を抽出する

たとえばTOPIXをベンチマークに持つファンドにおいて、1年でTOPIXが10%上昇し、基準価額が15%上昇していれば、αは15%-10%=5%となり、逆に基準価額が8%上昇していればαはマイナス2%となります。

投資家にとっては、α部分を抽出することには次のようなメリットがあります。

  1. 同じベンチマークを持つ別のファンドと比べて、どちらがαが多く出る優秀なファンドか分析できる。
  2. 同じファンドの数期にわたるパフォーマンスを見る際に、αが安定して出ているか、上げ相場に出やすい、あるいは下げ相場に出やすい運用者、運用戦略かという傾向を分析できる。
  3. 信託報酬を払うに値するのかを分析できる(信託報酬以上のαが出ないと、ベンチマークを上回るパフォーマンスを目標とするアクティブファンドを買っても報酬倒れである)。

また、運用会社にとってはファンドマネージャーの社内評価に使えるという面もあります。αの他にも、リスクの取り方や、単なる勘ではなく手法に説明力があるかといった要素も重要ですが、αを大きく出せる、あるいはコンスタントに出せる優秀なファンドマネージャーは運用会社の収益に直結しますので、社内で評価される材料となります。

B. ファンドや運用戦略の特色を表わす

日本株のファンドであっても、全てがTOPIXや日経平均がベンチマークとは限りません。TOPIXバリュー指数をベンチマークとするファンドは割安株戦略、JPX日経中小型株指数であれば中小型株のみに投資する戦略等、ファンドの狙いはベンチマークに表されています。

逆に言えば、運用戦略や投資対象とベンチマークに整合性があるかに注意してファンドを選ぶべきだということです。

たとえば、ブラジル国債のファンドで、指数の構成銘柄が平均年限7年なのにベンチマークが翌日物の銀行間金利となっていたとします。

債券の金利は順イールドと呼ばれ、多くの場合、満期までの期間が短いと低く、長いほど金利が高い状態となりますので、仮に7年は利回り10%、翌日物は6%としたら、普通に7年の債券を買って持っていると4%の超過収益が出ます。

もし、平均7年の年限となるブラジル国債の指数があるにも関わらず、翌日物金利をベンチマークとしているファンドがあるなら理由をただすべきでしょう。

ベンチマークがない場合

ベンチマークはすべてのファンドにあるわけではありません。ない場合のファンドの優劣の見方は別の機会に譲りますが、ベンチマークがないケースは以下のような場合があります。

A. 単一資産でない場合

たとえば、今はやりのアロケーションファンドのように、世界の株式、債券、REIT等に固定比率でなくマネージャーの裁量で自由に配分するようなファンドがこれに当たります。このような戦略では特定のβに賭けるのでなく、βの乗り換えこそがパフォーマンスにとって命です。

B. 単一資産でも運用手法が指数を目指さない場合

1. たとえば、ヘッジファンド的な手法ですが、日本株でも米国株でも各々の資産の中でロングショートと言われる手法があります。株式市場が上昇すると思えばフルインベスト(=全額株式に投資)し、先行き不透明あるいは下がると思えば最大100%キャッシュにしたり、先物でヘッジしてβ値を下げる手法です。

これは、絶対収益的な狙いで下がる時は難を避ける手法です。が、常に株にフルインベストしているならベンチマーク(すなわちβ=1)との比較は適当なのですが、β値自体をコントロールする手法なのでベンチマークになじまないのです。

2. セクターローテーションと呼ばれる、景気上昇時にはβ値の高い景気敏感業種(例:ブランド品、建設等)、下降時にはβ値の低いディフェンシブ業種(例:ディスカウントストア、生活必需品等)を相場つきに応じて乗り換える戦略では、株式指数をベンチマークとする場合もありますが、そうする必然性は高くありません。

セクターローテーションのような場合、ベンチマークでなく、参考指標として「上回ることを目標とする」運用ではないが、ファンドのパフォーマンスを見る上で参考値としてTOPIX等と比較する意味はあります。

個人投資家の場合、特に指数を上回ることを求めていないが、相場つきに応じた乗換え等をプロに任せたいという付加価値はあるでしょうから、ベンチマークがないことが特にファンドとして欠陥ということもないのではないでしょうか。

3. テーマ型のように、たとえばインフラ投資株、業界トップ企業に集中投資する銘柄絞り込み型等もベンチマークを置かない場合が多いです。

まとめ

いかがでしたか。ベンチマークがどのように活用できるかをまとめると以下のようになります。

  1. ベンチマークはファンドの優劣や特徴を見るのに有効なツール
  2. ベンチマークが適切に設定されているか、しっかり確認することが大切
  3. ベンチマークがなくても、それ自体がファンド設計の問題ではないのでご安心を

林 俊宏

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林 俊宏

国内大手信託銀行を振り出しに、系列の投信運用会社、外資系運用会社、販売会社等で一貫して商品企画に携わる。
株、債券、リートにとどまらずバンクローン、デリバティブ、ヘッジファンド、プライベートエクイティも投資または組成経験あり。
証券アナリスト協会検定会員、ペンシルベニア大学・ウォートンスクールにてMBA取得