トランプ政権100日、GDP成長鈍化で金融政策の方針転換は?

米国では利上げ見送りのハードルが低下、雇用統計にも注目

1-3月期の米GDP成長率は+0.7%と、もともと低かった事前予想を下回り、かろうじてプラス成長を維持するにとどまりました。トランプ政権の発足100日は政策運営での不手際が目立ちましたが、政治のみならず経済も停滞していることが明らかとなりました。

今週は5月2日、3日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、5月5日に米雇用統計と注目イベントが続きます。そこで今回は、先週末に発表された米GDPのポイントと、GDPの結果を踏まえたFOMCと米雇用統計の注目点を整理してみました。

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GDPの失速、1-3月期が低いのはいつものこと?

1-3月期の米GDP成長率は前期比年率+0.7%と2014年1-3月期の-1.2%以来、3年ぶりの低水準となりました。予想外の結果に対しては季節調整問題や天候要因などが指摘されており、楽観視する見方もあります。ただ、いずれも的を得ているとは言い難く、鵜呑みにするのは危険かもしれません。

1-3月期のGDP成長率が他の四半期と比べて著しく低いことから、季節調整問題が以前から指摘されています。たとえば、2010年から2016年までの四半期ごとのGDP成長率を平均すると、1-3月期が+1.0%なのに対し、4-6月期と7-9月期がそれそれ+2.5%、10-12月期は+2.4%となり、1-3月期だけが圧倒的に低いことがわかります。

したがって、1-3月期の+1.0%は他の四半期であれば+2.5%程度に相当すると考え、今回の+0.7%も気にすることはないとなるわけです。

個人消費が急減速、季節要因では済まされない可能性も

ただ、今回の低成長は個人消費の減速が大きく影響しており、その個人消費は比較的季節調整のゆがみが少ないと考えられています。先ほどと同様に、個人消費の2010年から2016年までの平均を四半期別に見ると、1-3月期の+2.1%に対し、4-6月期と7-9月期はそれぞれ+2.4%、10-12月期は+2.9%となっています。

1-3月期はやや低い数字となってはいますが、GDPに比べると大幅に差が縮まっており、むしろ10-12月期が高すぎることのほうが問題となりそうです。こと個人消費に関しては、10-12月期がゆがんでいる可能性を警戒したほうがよいのかもしれません。

昨年の10-12月期は堅調な個人消費(+3.5%)にけん引されて、GDP成長率も+2.1%とまずまずの数字となっていますが、個人消費は数字ほどには堅調ではなかった恐れもありそうです。

1-3月期の個人消費は、前期比年率+0.3%と2010年以降では最低の伸びとなりました。2010年以降の平均値は+2.4%で、個人消費に関しては1-3月期に季節調整に大きなゆがみが確認できないことを踏まえると、数字はそのまま現実と受け止めたほうが妥当なのかもしれません。

3月に米北東部を襲った大雪の影響も指摘されていますが、こちらも怪しいと言わざるを得ません。個人消費の低迷は3月に限った話ではなく、年初の1月から低迷しています。1月、2月が好調で3月に落ち込んだのなら天候要因とも考えられますが、今年の2月は例年より暖かったことも踏まえると、天候要因で消費が落ち込んだと考えるのには無理がありそうです。

1-3月期に低い数字となるのは金融政策のタイミングの影響?

季節調整の問題については、米連邦準備制度理事会(FRB)も統計にゆがみが生じた確証はないとの立場ですが、実際に低い数字が出ているのは事実です。ということは、季節性とは関係ない特別な要因が働いている可能性があり、たとえば金融政策の影響が考えられます。

FRBの金融政策正常化の動きを振り返ると、マイナス要因の決定が12月に集中していることが分かります。たとえば、2013年12月のFOMCでは量的緩和の縮小(資産購入の減額)を決定したほか、2015年12月には10年ぶりの利上げを決定し、2016年12月に1年ぶりの追加緩和を決定しているといった具合です。また、量的緩和を終了したのは2014年の10月末です。

このように、引き締め的な金融政策を決定したタイミングが1-3月期の成長を抑制してきた可能性もありそうです。

FOMC、予定通りの正常化は困難か

今週のFOMCでは金融政策の現状維持が見込まれていますが、FRBが予定している金融政策正常化の動きは、弱いGDP統計を受けて実施が難しくなりそうです。

FRBは年内にあと2回の利上げを実施した上で、バランスシートの縮小を始める予定です。イエレン議長は、バランスシートの縮小は2回分の利上げに相当すると述べていますので、予定通りであれば、2017年は実質的に5回の利上げを実施することになります。

しかし、GDP成長率が大きく鈍化したことに加え、インフレ懸念も高まっていないことから、利上げの必要性は大きく後退している模様です。

インフレの指標となる1-3月期のPCE(個人消費支出)物価指数は、前年同期比2.0%上昇とインフレ目標となる2.0%に到達しましたが、原油価格の上昇の影響が大きく、食品とエネルギーを除くコア指数は1.7%上昇と2四半期連続で横ばいとなり、基調的なインフレ率の上昇は確認できていません。

また、イエレン議長を再任しないと公約していたトランプ大統領が、前言を撤回して再任をほのめかしています。同大統領が“低金利政策”が望ましいと述べていることもあり、利上げ見送りのハードルは低くなっている模様です。

米雇用統計、10万人程度の雇用増なら利上げ見送りには好都合か

3月の米雇用統計では、雇用者数が9.8万人増加と18.0万人程度が見込まれていた事前予想を大きく下回りました。

ただ、イエレン議長は人口の増加を吸収するのに必要な雇用数の増加は7.5万人から12.5万人と推計しており、10万人程度の増加は景気の過熱を未然に防ぐという観点からはむしろ好ましいと言えそうです。

低調だった3月の反動もあり、4月は19万人程度の増加が予想されています。予想通りの数字となった場合、景気回復への期待が強まり、FRBが利上げを継続する可能性が高まることになりそうです。

一方、3月同様、10万人程度の増加となれば、冴えないGDPの動きとも整合的となり、利上げを急ぐ必要性も薄れることから、FRBにはむしろ対処しやすい数字となるのかもしれません。

投信1編集部

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