GWは秩父で決まり? 西武鉄道の鉄道成長戦略がおもしろい

駅前温泉から夜行列車まで。インバウンドも射程に収める事業戦略

行楽シーズン到来

今年も5月の行楽シーズンがやってきました。この時期は天候が安定しているのでご家族を連れて行楽に行きたくなる季節ですね。

筆者が住む東京近郊エリアでお花見ができる場所としては次のスポットに人気があります。

  • 昭和記念公園(東京都立川市):チューリップ
  • 国営ひたち海浜公園(茨城県ひたちなか市):一面ブルーのネモフィラで覆われた丘
  • 足利フラワーパーク(栃木県足利市):大きなフジ棚
  • 牛島の藤公園(埼玉県春日部市):大きなフジ棚
  • 館林つつじまつり(群馬県館林市):つつじが岡公園(近隣に芝桜が有名な東武トレジャーガーデンもあります)
  • 国営武蔵丘陵森林公園(埼玉県比企郡):ネモフィラ、アイランドポピー
  • 富士本栖湖リゾート(山梨県南都留郡):富士山を背景にした芝桜
  • 羊山公園(埼玉県秩父市):武甲山を背景にした芝桜

さて、今回注目したいのは、都心から羊山公園の最寄である西武池袋線の終点「西武秩父駅」をつなぐ西武鉄道です。

西武鉄道で羊山公園に出かけてみる

はじめに池袋からどう行くのかを説明しましょう。一番手っ取り早いのは西武池袋線の池袋駅から西武特急レッドアロー号(ちちぶ、むさし)に乗ることです。そのまま約1時間半前後で西武秩父に到着です。途中、所沢、入間市を経て、飯能から先は山岳路線に入ります。山を抜けると横瀬、西武秩父とあっという間です。

ちなみに土日休日は元町・中華街、みなとみらい、横浜、自由ヶ丘、澁谷から西武秩父までを結ぶ直通の特急S-TRAINの運行が今年から始まりました。横浜と秩父が一気通貫となりました。西武鉄道が秩父の観光資源になみなみならない力を入れていることがうかがえます。

西武鉄道は西武ホールディングスの中核企業

このところ関東私鉄の中で変化を感じるのは、この夏SLの運行を開始し日光を前面に押し出した戦略を進める東武鉄道と、今回ご紹介する西武鉄道だと思います。

西武鉄道は、西武ホールディングス(9024)においてプリンスホテルと並ぶ中核企業のひとつです。そこで西武ホールディングスの中期事業戦略を紐解きながら西武鉄道の戦略を見ていきましょう。

西武ホールディングスの中期事業計画とは

現在同社は2017年3月期から2019年3月期にかけての中期事業計画を進めています。ちょうど一年が終わるところになります。

その目標を簡単にまとめると次のようになります。

  • 営業利益を2016年3月期実績の659億円から2019年3月期の664億円に増やす。
  • この間、東京ガーデンテラスの開業等の費用などから利益が一時的に凹むが3年のうちにV字回復する。
  • 鉄道事業、ホテル・レジャー事業で基盤を固めつつ、不動産事業で利益を上乗せする。

このうち利益の牽引役となる不動産事業では2016年7月に全面営業を開始した東京ガーデンテラス紀尾井町をはじめ、池袋旧本社ビル建て替え(2019年3月竣工予定)、所沢駅東口駅ビル(2018年春第一期開業、2020年夏第二期開業)という大型案件が進んでおり、さらに高輪・品川エリア、芝公園エリアの再開発も検討されています。

鉄道事業は現金を生む役割

このように大型プロジェクトが目白押しですので、同社にとって鉄道事業(正確には都市交通・沿線事業)は安定的にしっかり現金を稼ぐ事業として、その重要性が高まっています。2016年3月期実績をみると、現金を稼ぐ指標であえる償却前営業利益は全社で1,067億円でしたが、このうち約半分弱の467億円を鉄道事業が生み出しています(2017年3月16日付会社説明会資料による)。

では鉄道事業の戦略をまとめてみましょう。

  • 中核都市「所沢」の大規模商業開発
  • 観光エリア「秩父」「川越」のバリューアップ
  • PRの強化やさまざまな企画の発信

週末の旅行需要も、インバウンドも狙う

沿線開発という意味では、先ほど所沢の商業開発、池袋のオフィス開発に触れました。これだけにとどまらず、インバウンドで人気の川越と秩父の観光資源強化を進めようとしています。

最近、テレビで土屋太鳳さんのCMをご覧になって気になった方も多いのではないでしょうか。2017年4月24日には、西武秩父駅前温泉 祭の湯を開業しました。これは秩父地方がハイキングコースとして大変人気のある地域にもかかわらず、手頃な日帰り温泉が少ないという事情を受けて開業したものと思われます。

所沢がクールジャパンの新たな発信地に。飯能にはムーミンバレーパークも

西武鉄道にとって援軍もあります。

一つ目はKADOKAWAが2020年4月に所沢に開業予定の「ところざわサクラタウン」です。これはKADOKAWAの製造・物流拠点に、図書館、美術館、博物館を融合した施設を作り、クールジャパンの総本山といえる文化コンプレックスを作るという目論見です。

二つ目は、飯能に北欧のライフスタイルを体験できる「メッツァビレッジ」が2018年秋に開業し、翌2019年春には「ムーミンバレーパーク」がオープンする予定になっていることです。

レストラン列車、夜行列車、新型特急も

列車面でも様々な手が打たれていきます。

S-TRAINに加えて、2016年4月から西武 旅するレストラン「52席の至福」が運行されています。これは池袋・西武新宿から西武秩父に向かうブランチコースと、西武秩父から池袋・西武新宿に向かうディナーコースがあり、土日を中心に計画されています。

また夜行列車を運行させ、バスで三峰神社から日の出と雲海を楽しむ「秩父絶景ツアー」も2015年8月以降、企画されています。2016年5月26日については元町・中華街、多摩川、練馬から乗車が可能となっています。私鉄の夜行列車と言えば、東武鉄道の尾瀬夜行23:55号が有名ですが、西武鉄道も対抗してきました。

さらに、2019年3月期には新型特急車両の導入も予定されています。

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いかがでしたか。羊山公園の芝桜を楽しんだり、長瀞の川下りを楽しまれた方は、ぜひ今後の西武鉄道の事業展開にも注目がいくのではないでしょうか。

素敵な休日をお過ごしください。

椎名 則夫

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椎名 則夫

早稲田大学政治経済学部を卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。証券運用と法人融資に携わる。
シカゴ大学MBA取得。フィデリティ投信に入社、中小型株全般、医薬品・ヘルスケア、保険、通信、インターネットの企業調査に従事。その後モルガンスタンレー証券にて株・クレジットのリスク管理業務を行う。
日本証券アナリスト協会検定会員、CFA。