ソニーの決算が好感された3つの理由

前回の過去最高益計上後は4年連続減益に、今回はそれを回避できるのか

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決算発表後に52週高値を更新したソニーの株価

2017年4月28日に決算を発表した翌週の5月1日のソニー(6758)の株価は前日比+3%高で引け、52週高値を更新しました。

2017年3月期決算は、2月時点の予想は上回ったものの、既に4月21日に上方修正が発表済であったことや、新年度の営業利益予想5,000億円は中期計画で発表していた計画値とインラインであったため、好材料出尽くしとなることも考えられましたが、市場はポジティブに反応しました。

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では、いったい、決算ではどの点が好感されたのでしょうか。そのことを考えるために、まずは実績を振り返りたいと思います。

2017年3月期決算が好感された3つの理由

まず第1に注目したいことは、2017年3月期決算は減収、減益ではあったものの、一過性の要因を除くと実は営業利益は大幅な増益となっていたことです。

営業利益は2,887億円でしたが、そこには、映画分野の営業権の減損1,121億円、カメラモジュールの長期性資産の減損239億円、熊本地震影響による保険収入相殺後の物的損失等154億円、熊本地震に関連する機会損失308億円や、保有株式(エムスリー)の売却益372億円が含まれていました。

これらを考慮すると、実質的な営業利益は4,300億円程度(前年比約46%増)にまで回復していたことになります。つまり、見かけよりも業績は悪くなかったということになり、そのことが好感された可能性が考えられます。

第2は、Q4(1-3月期)のエレクトロニクス6セグメント合計の営業利益が約33億円とわずかではあるものの黒字となっていたことです。かつてのソニーでは、Q1、Q2 の前半は順調であってもQ4に在庫評価損や未回収の販売費用の計上等によりQ4に多額の赤字が計上されることが恒常化しており、ソニーの現経営陣は、そのことを経営課題の一つとしてとらえ、改善に取り組んでいました。

今回、そうした成果が見事に顕在化し、実に1998年3月期Q4以来、19年ぶりに黒字化を達成したことも、決算が好感された一つの理由であると考えられます。

第3は、モバイル・コミニュケーション分野の通期での黒字化が達成されたことです。

ちなみに、同分野の営業損益は、2015年3月期は▲2,176億円の大幅赤字であり、2016年3月期も▲614億円と前年度よりも赤字幅は縮小していましたが、なお、赤字が残っていました。これが、2017年3月期には102億円の黒字に改善しています。

撤退や売却ではなく、自助努力で再生を果たしたことも素直に好感されたと考えられます。

今後の注目点

ソニーは例年、経営方針説明会やIRディを開催していますが、今年も5月23日に予定されています。そこでは、全体の経営方針だけではなく、各事業の詳細な戦略や取り組みが事業責任者から説明が行われます。

株式市場の関心は、今年度の業績に上振れ余地がどの程度あるかだけではなく、中期計画の最終年度である2018年3月期以降も、持続的な成長が可能かに向かいつつあります。

ちなみに、決算説明会において吉田憲一郎副社長は、「前回の最高益(1998年3月期)の後は4年連続の減益で、今回はそうしたことを避けるための施策(リカーリング型事業の強化など)に取り組みたい」といった趣旨のコメントをしていました。

5月23日には、そのための具体的が示されるか、大いに注目していきたいと思います。

ソニーの過去10年間の株価推移

和泉 美治

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和泉 美治

同志社大学文学部卒業後、エルコインターナショナル (現:京セラエルコ) に入社。英国バーミンガム大学にてMBA取得。
その後UBSフィリップスアンドドリュー証券 (現:UBS証券) に入社し、調査部にてエレクトロニクスセクターを担当。2002年より2013年までJ.P.モルガンにて産業用エレクトロニクス及び民生エレクトロニクスセクターを担当。
日本証券アナリスト協会検定会員。