世界経済の中心はアジアへ。着実に成長するアジア諸国の今

アジアの成長を資産運用に取り入れよう

アジア地域の経済成長見通しは世界経済の成長率予測を上回る

国際通貨基金(IMF)は4月18日に世界経済見通し、5月9日にアジア地域経済見通しを発表しました。まず、これを参考にアジア経済の見通しを見ていきたいと思います(以下成長率の数字はIMFデータおよび予測)。

2016年は、前半にもたついた印象もあった世界経済の動向でしたが、年半ばからは米国経済の堅調さに支えられて、全体としては3.1%の成長を遂げました。IMFは、世界経済の見通しを、2017年は3.5%、2018年には3.6%の成長と予想しています。

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一方、アジア地域の経済成長見通しは、世界経済の成長率予測値を上回ります。具体的には、2016年の5.3%成長に対し、2017年は5.5%の成長が予想されています(図1参照)。

昨年6月の英国の欧州連合離脱に関する国民投票後は市場調整の影響を受け、アジアの資本市場も資本流出懸念から値を下げましたが、その影響も短期的なものにとどまり、7月以降は順調に回復、株式市場も上昇傾向を取り戻しました。

11月のトランプ当選後も、規制緩和期待や景気刺激策期待が拡大したことを背景に、資金の流入は拡大傾向が続き、2017年に入っても、アジア地域への資本の流入は継続しています。加えて、アジアの多く国が、世界的な低金利や金融緩和策、財政刺激策により恩恵を受けるという点も要因としては大きいものがあります。

2017 年は世界の成長が緩やかではありますが、全体として回復することが予想される中で、アジア各国は、輸出でも恩恵を受けることも支援材料となるでしょう。

図1 アジア地域のが世界経済のけん引役に(出所:IMF 世界経済見通し、2017年4月)

中期的にもアジアシフトが続く見込み

中期的にも、アジア経済の成長は世界経済のけん引役になるでしょう。米国経済も低成長ではありますが、着実に成長を続けるものの、成長率でいけば、アジア経済の貢献度はより大きくなると予想しています。

アジア経済は2030年までに先進7カ国グループ(G7)を上回る可能性があり、20カ国グループ(G20)の経済規模の約半分の規模に達するとの予測もあります。これは、世界経済の中心が、西洋から東洋(アジア)へとシフトしていることを示しています。このシフトに従って、アジア地域には引き続き投資資金が流入するでしょう。

日本の投資資金は、相変わらず腰が重く、動きが鈍いですが、アジアの成長を自らのポートフォリオに取り込むことは、やはり中期的に重要な課題です。ぜひ、真剣に取り組んでいただきたいと思います。

アジア経済のリスクとは?

一方、アジア経済が、いまだに米国や欧州圏の最終需要への依存度が高く、それゆえに経済が脆弱であるとの指摘があります。

これに対しては、アジア域内相互の貿易取引量が着実に成長していることで、特にリーマンショック以降は域内消費の増大により、経済のリバランスは着実に進んでいることを見過ごしてはなりません。

また、金融面で、先進国の資金に対する依存度が高いことをリスクであるとする指摘もあります。

確かに、アジア各国に本拠を置く銀行は、資金量から見て欧米の銀行比で小さく、何かのイベントにより欧州の銀行がレバレッジ解消に動いた場合に、アジアの国々の与信や資産価格に与える影響は大きくなる可能性があります。貿易金融の分野でも、アジアにおいて欧米の銀行は重要な資金の提供者であり、アジアの銀行が、その代替となることは、すぐには困難だと思われるからです。

現在、先進国間の金融政策にはかい離があることや、世界経済の緩やかな成長に従って、中央銀行が継続している量的な金融緩和の出口戦略により、欧米の銀行の資金供給量が減少した場合、東南アジア諸国の金融市場のボラティリティーにつながる可能性が危惧されるのもこうした理由からです。

これは、アジア通貨危機やリーマンショック後のアジア市場の混乱の連想が強く働いているものと思われます。

ただ、当時と比べて、アジア諸国の外貨準備高の絶対的な水準が大きく改善していることや、債務満期の延長や信用枠の確保、国家間の通貨スワップ拡大など、セーフティネットを構築・整備してきたことは、評価すべきと筆者は考えています。

アジア地域の外的要因に対する脆弱性は、一定程度対策が採られ、軽減されていると思われます。従って、中期的にアジアシフトを進めていくというストラテジーは不変であり、ポートフォリオに占めるアジアのウエイトを徐々に増やしていくことを推奨します。

さて、今年、加えて備えておかなければならないことは、東アジアの地政学的緊張の高まりかもしれません。地政学的なリスクは、貿易と資本の流れを阻害しかねず、繰り返しになりますが、世界貿易と資本の循環が成長の鍵であるアジア経済にとっては、看過できないリスクと言えるでしょう。

Nippon Wealth Limited 長谷川 建一

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長谷川 建一
  • 長谷川 建一
  • ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク
  • 取締役兼CIO (Chief Investment Officer)

京都大学卒、MBA(神戸大学)。 シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、2000年にシティバンク日本のリテール部門で商品開発や市場営業部門のヘッドに就任。2002年にシティグループ・プライベートバンクのマーケティング部門ヘッドに就任。
2004年末、東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に移り、リテール部門マーケティング責任者として活躍。2009年からは国際部門でアジア・リテール戦略を担い、2010年は香港にてBTMUウエルスマネージメント事業の立ち上げに従事。
2013年よりNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク)にてCOOに就き、2017年3月よりCIOを務める。